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ドリトル先生の林檎園

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第九幕その二

「そのことは自分でわかっているしね」
「だからなのね」
「先生は誰にも林檎を贈らない」
「勿論月が奇麗ですねとも言わない」
「そうなのね」
「ロマンは好きでも僕にロマンは無縁だよ」
 先生ご自身にはというのです。
「何かとね」
「人は外見じゃないって先生言ってるじゃない」
 ガブガブがこのことを指摘しました。
「いつもね」
「そうそう、心だってね」
「いつも言ってるじゃない」
 チープサイドの家族もガブガブに続きます。
「一番大事なのは」
「何よりもね」
「それならだよ」
 チーチーも言うことでした。
「先生だってね」
「というか先生みたいないい人いないよ」
 トートーもよくわかっていることです。
「素晴らしい紳士だしね」
「温厚で親切で公平だし」 
 こう言ったのはジップです。
「それならだよ」
「女の人も見てるわよ」
 ダブダブはこのことをわかっています、皆と同じで。
「ちゃんとね」
「そう、しっかりした女の人はね」
 ホワイティも先生に言います。
「わかってくれてるから」
「それじゃあだよ」
 老馬も先生に言います。
「少し周りを見たらどうかな」
「絶対に素敵な恋愛がはじまるから」
「先生にとってもね」
 オシツオサレツは二つの頭で先生にお話します。
「だからね」
「どうかな」
「ははは、皆そう言ってくれてるけれどね」
 先生だけはわかっていないので皆の言葉をただの行為と思ってそれで、です。こう言ったのでした。
「僕は恋愛だけはだよ」
「まあ先生はこうした人だし」
 王子もやれやれといった感じです。
「春はまだ遠いかな」
「確かに僕達は先生といつも一緒にいますし先生が大好きですけれど」
 トミーも先生の背中を押そうとします。
「ロマンスもいいと思いますよ」
「だから僕はそれだけはだよ」
「恋愛だけはですか」
「そう、無縁のものだよ」
「そう思っていると」
「何も動かないのは学問と一緒だけれどね」
 トミーも王子もやれやれです、本当に先生は恋愛のことについては相変わらずの調子です。そうして林檎を食べていますと。
 そこに優花里さんが来て先生達に言ってきました。
「今日もお願いしますね」
「うん、じゃあね」
「色々と案内させてもらいます」
「それではね」
「あと今日はよかったら」
 優花里さんは先生にあらためてお話しました。
「あたしのアップルパイとか食べてくれますか?」
「色々な林檎を使って造ってみているだね」
「うちの林檎園の林檎の」
「では是非ね」
「それと今日のお昼は」
 優花里さんは先生にさらにお話しました。
「お蕎麦ですけれど」
「あっ、長野の名物の」
「はい、それです」
「いいね、僕は長野県に来てからね」
「お蕎麦食べてますよね」
「やっぱり本場は違うね」
 名物だけあってというのです。 
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