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巨大な化け猫

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第六章

「そうなんだぜ」
「そんな化け猫なんだね、君は」
「おう、あと別に俺が化け猫ってことは隠してねえけれどな」
「じゃあ誰にも言っていいんだ」
「おかしな奴の記憶は魔法で俺のところだけ消すしな」
 そうもするというのだ。
「別に誰にも言っていいぜ」
「そうなんだね」
「おう、しかしな」
「しかし?」
「面白いだろ」
 猫は大西に笑って言ってきた。
「普通に妖怪がいるとかな」
「人間と一緒にだね」
「ああ、そうだろ」
「それはね」 
 どうかとだ、大西は自分に笑って話す猫に応えた。
「言われてみるとね」
「そうだろ、世の中っていうのは実はな」
「人間の世界でもだね」
「そこに他の生きものがいてな」
 そしてというのだ。
「妖怪だって一緒にいるんだよ」
「人間だけじゃないんだね」
「そうさ、よく見れば妖怪だってな」
「一緒にいてだね」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「楽しくやってるんだよ」
「楽しくなんだ」
「そうさ、俺みたいにな」 
 猫は大西に笑って話した。
「そこんとこ宜しくな」
「それじゃあな」
「ああ、後な」
「後?」
「兄貴の外見については何も言わないんだな」
 ここで猫はテレパシーで大西に尋ねてきた、当人が丁度そこにいるので口での会話で聞こえない様にしたのだ。
「それは」
「あえて言わない様にしていたんだ」
「そうか、処世術ってやつだな」
「まあね、人の外見やファッションについては言わない」
「そういうことだな」
「それが一番角が立たないからね」
「外見はああでも中身は女子力激高の乙女だからな」
「そうなんだね」
 主人のその髭だらけで尚且つ背は一九〇ある長身を見て言った。
「心はだね」
「ああ、だから下手なことは言うなよ」
「言わないよ、というか流石に言うにはかなりの勇気がいるし」
 さながらランディ=バース阪神タイガースを日本一にさせた偉大な野球選手の様な髭にミニスカートの相手に言うことはというのだ。
「言う人これまでいなかったね」
「一人もな」
「それも道理だよ」
「そういうことだな」
「うん、だから君のお兄さんの外見にはこれからも言えないよ」
「言えないか」
「言うんじゃなくてね」 
 そちらだというのだ。
「そういうことでね」
「わかったぜ、じゃあ気が向いたらまた会いに来いよ」
「そうさせてもらうよ」
 大西は猫に自分が注文したコーヒーを飲みつつ応えた、そのコーヒーの味は実に美味いものであった。そうしつつこの店にまた来てこの猫と会おうと決意した。


巨大な化け猫   完


                 2019・12・29 
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