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子供の言うこと

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第六章

「全く違うな」
「まあ子供の頃のことは」
「あまり覚えていませんけれど」
「変わったと言われますと」
「実感がありますわ」
「そうだな、じゃあ今の柔道着が駄目になったらな」
 岳は二人から柔道着を受け取った、しっかりと上下ありしかも帯まであった。有段者の黒帯である。
「その時はな」
「この柔道着を着ますのね」
「そうされますのね」
「そうさせてもらう、そしてだ」
 岳は柔道着を手にさらに言った。
「後はだ」
「後は?」
「後はといいますと」
「お前等もな」
 岳は二人に笑って話した。
「将来相手見付けろよ」
「旦那様ですか」
「わたくし達の」
「そうしろよ」
 こう二人に言うのだった。
「いいな」
「今は交際している方もおられないので」
「想像も出来ませんが」
「何時かは、ですか」
「わたくし達もですか」
「そうしろよ、俺もな」
 岳は二人に自分のことも話した。
「結婚したんだからな」
「わたくし達もというのですね」
「やがては」
「そうしろよ、しかしな」
 ここでだ、岳は十年前の二人の言葉を口にしかけた、だが。
 やっぱり言わないでおこうと止めてまた二人に言った。
「何でもないよ」
「そうですの」
「何もありませんの」
「ああ、じゃあ二人が結婚する時を楽しみにしてるな」
 この言葉と共にまたビールを飲んだ、そのビールの味は実に気持ちよくそれでまた一口飲んだ。結婚と十年前のことを肴にして。


子供の言うこと   完


                  2019・12・27 
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