戦国異伝供書
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第六十七話 元康初陣その五
「その様にな」
「では」
「その様に戦いましょう」
「そしてそのうえで」
「我等はですな」
「勝とうぞ、くれぐれも深追いはすべきではない」
断じてという言葉だった。
「よいな」
「はい、それはですな」
「くれぐれもですな」
「せずに」
「そうして」
「戦うのじゃ」
こう言ってだった、そのうえで。
元康はまずは本多が率いる軍勢を動かさせてそうして突っ込ませた、本多が率いる軍勢は最初の一撃でだった。
織田軍の陣を抜けた、それを見てだった。
元康は右の酒井左の榊原に動けと命じ自身も中央の軍勢を率いて動いた、そうして織田家の軍勢を鶴翼の陣でだった。
包んで攻めにかかった、そこで本多は軍を反転させてだった。
また攻めだした、元康はその状況を見て傍にいる大久保彦左衛門に言った。
「上手くいったな」
「はい、これでですな」
大久保は槍を手に元康にしかとした声で応えた。
「我等の勝ちですな」
「敵は囲まれようとしておる」
「ですがこのまま囲まれるか」
「それはない」
断じてと言うのだった。
「その前にじゃ」
「逃げますな」
「そうする、しかしな」
「その逃げるところをですな」
「我等は追う、そしてな」
「敵を叩きますな」
「二度とこの三河に入りたくないと思わせるまでな」
そこまでというのだ。
「叩く、そしてな」
「敵が三河から出れば」
「それでよい」
こう大久保に話した。
「先に行った通りにな」
「深追いして敵の領地に入れば」
「わかるな」
「はい、思わぬ反撃を受けることも考えられます」
「今は地の利は我等にあるが」
「尾張は敵の領地でありますので」
「それが変わる」
地の利、それがというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「尾張には入らぬ、今はな」
「わかり申した、しかし殿ご自身が戦の場に立たれていますが」
ここで大久保は己が持つ槍を強く握った、そのうえでこうも言ったのだ。
「お傍を離れませぬ故」
「わしを護ってくれるか」
「殿には指一本触れさせませぬ」
「頼むぞ」
「はい、ですが尾張の兵は弱いと聞いていても」
それでもとだ、大久保はこうも言った。
「この度は」
「うむ、どうも津々木殿は戦は不得手であるな」
「左様ですな、ですが機を見るに敏な様で」
それでというのだ。
「退きはじめましたな」
「左様じゃな、囲まれだしたと見て」
するとだったのだ。、津々木が率いていると見られる織田家の軍勢は。
「退きはじめた」
「左様ですな」
「ではな」
「はい、尾張まで」
「攻めるぞ」
追撃を仕掛けてだ、そうしてと言ってだ。
元康は退きだした織田家の軍勢を追いはじめた、だが織田家の軍勢は元康が思っていたよりずっと逃げ足が速く。
まるで全員馬に乗っているかの様に逃げ去ってしまった。姿が見えなくなったのもあっという間であった。元康は姿が見えなくなった彼等について述べた。
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