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王への慰め

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第二章

「お前達もアッラーの恩恵が与えられるんだよ」
「だから信仰も大事なんだね」
「知恵も」
「そういうことだよ」
 こう孫達に話すのだった、それで孫達も祖母の言葉に素直に頷いた。
 ルクマーンはこの時ダーヴド王に仕えて彼に何かあると知恵を授けていた、だがそんな中でだった。
 王はある時玉座からルクマーンに対してこんなことを言った。
「そなたが羨ましい」
「と、いいますと」
 ルクマーンは溜息混じりに言う王に真面目な声で問い返した。
「何か思われることがありますか」
「そなたはアッラーから知恵を与えられたな」
「はい」
 事実をだ、ルクマーンは答えた。
「有り難いことに」
「そうだな、だが余は王だ」
 この立場にあることを言うのだった。
「王は国を治めているな」
「それが王であります」
「この国の大権をアッラーから授かっている」
 このことを言うのだった。
「これは非常に重い、しかもだ」
「さらにですね」
「これは誰でもだがアッラーの試練がある」
 これのこともというのだ。
「王の大権にな」
「アッラーの試練はまさにです」
「人なら誰でもだがな」
「王であられることと共に」
「重荷だ、一つならいいが」
「重荷も二つとなりますと」
「辛い、だが余にはそなたの知恵がない」
 これがというのだ。
「いつもそなたに聞いている、余自身にはこの二つの重荷に勝つことは出来ていない。しかも重荷はもう一つある」
「三つというのですね」
「臣下は中々従わない、乱を起こす者が絶たぬ」
 このことについても言うのだった、嘆く顔で。
「この三つの重荷が常にあるのにそなたの知恵がないのだからな」
「だからですか」
「今そなたを羨ましく思った、羨ましく思っても仕方ないが」
 そのことはわかっているがというのだ。
「思ってしまったのだ」
「左様ですか」
「どうにもな」
「王よ、お言葉ですが」
 ルクマーンは王の言葉を聞いてからだった、こう王に言った。
「一つ申し上げて宜しいでしょうか」
「何だ」
「私から見れば王が羨ましいです」
「余が王であるからか」
「いえ、これは王だけでなく他の人達もです」
「誰もがか」
「長生きでないので」
 だからだというのだ。
「私程には」
「長生きはいいではないか」
 俗に言われることでだ、王はルクマーンに答えた。
「それは」
「早く死ぬよりはですか」
「それだけ人生を楽しめ知恵も蓄えられるのだからな」
 ルクマーンの名声の源と言っていいそれもというのだ。
「だからな」
「長生きはいいですか」
「ましてやハゲタカの七倍となるとな」
 それだけならというのだ。
「尚更な」
「そうですか、ですが私は部族も失い」
 例えそれが神罰でもというのだ。
「そしてこれまで生きてきて多くの人と出会い」
「そうか、出会いがあればな」
 それならばとだ、王もわかって頷いた。 
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