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DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)

作者:あちゃ
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第二十二話:嘘は吐かなくても、本当の事は言わない

 
前書き
この場に居ないリュカのお陰で保たれている三者の絆。
崩壊しない事を祈る! 

 
(マイエラ地方・マイエラ修道院)
ラングストンSIDE

私にまで言動を非難されリュリュさんは落ち込んでしまっている。
ウルフ殿から離れた場所にある土手の斜面に腰を下ろし、膝を抱える様にして俯いている。
本人は気付いてない様子ですが、短いスカートでその座り方をすると下着がしっかり見えてしまいますよ。

私も男でリュリュさんが好きですから、思わす見てしまいますが……ガン見する訳にもいかずチラチラ視線を動かすだけ。
川の手前で対岸の火事(修道院)を見ていたウルフ殿が、私の行動に気が付き「ラング……ちょっと来い」と呼び寄せました。そして……

「お前はもっと紳士だと思っていたが?」
「な、何のことですか……?」
リュリュさんとかなり離れているため、普段の声で会話しても聞こえないのですが、チラ見してた事を咎められる様な口調に動揺を隠せませんでした。

「リュリュさんはアレでも姫君だ。本人も多くの一般人・下級兵士等も認識してないが、我が国の姫君なんだ。見えてても見るな……」
「も、申し訳ありませんでした……」
くっ……本当はヘタレのくせに、こういう時は格好いい事言いやがりますね。

「ところで……先程の私の発言は、アレで宜しかったですか?」
気まずさから話題を先程の“リュリュさん批判”に変更。
私はウルフ殿の一歩斜め後方に居るのですが、燃えさかる修道院に照らされた顔をこちらに向ける事無く、ただ黙って頷きました。

「しかし……私にリュリュさんを批判させたのですから、その本心を聞かせて頂きたいですな。いや……リュカ様の事を気遣ってってのも本心でしょうが、その奥の語れない本心の方を」
まるで悪しき大臣と、それに迎合する兵士の様な会話。

「お前も解ってるだろ?」
「さて……下っ端の身ゆえ、宰相閣下のお考えには到達できません」
これでは本当に三文芝居の大臣と兵士だ。

「……お前も言ったとおり、さっきの発言に嘘偽りは無い。彼女の身を案じてアハト君等の助けには行かせられなかった」
「ええ……あの道化師は強敵そうでしたからね。しかし一番の理由とは思えませんが?」

「ふぅ……そうだよ。一番の本心は、リュリュさんを戦わせて修行させない事だ。俺が実感してきた事だが、実践ほど有効な修行はないからな」
「やはり……」

「俺が生まれ故郷のアリアハン……ヒゲメガネが納めてる国じゃない方だが、そこを決意と共に旅立った時は、本当に弱かったからな。スライム一匹にも手こずる始末……だが、今や魔法も剣術も使い分け、悪辣な策謀までも張り巡らせる天才宰相だ。リュカさんと旅し、潜り抜けてきた実践の賜だよ」

「ウルフ殿が旅立ったのって、我が母国……ロマリアに訪れる数ヶ月前ですよね? そして更に数ヶ月後には、中間管理職ではあるが魔王バラモスを討伐する事に成功してた……傍にリュカ様やティミー殿下が付いていたとは言え凄い成長だ。リュリュさんに戦闘をさせたくない訳ですね」

「リュリュさんは真面目だし飲み込みも早い。何よりリュカさんの血を引いている訳だし、強い敵と戦えばアッという間に強くなっちまう。リュカさんと俺の計画が大きく狂っちゃうんだよ! こんな永住しない世界の平和より、重要だと思わないかねラングストン君?」

「リュリュさんの事が好きとは言え、私も親リュカ派! その優先順位は熟知しております。しかし……アハト殿に恨まれそうで、嫌ではありますなぁ」
未だに燃えさかっている修道院を眺めながら、この冒険中のウルフ殿への協力体制を誓う。

先刻(さっき)も言ったが、そんな事知るかよ! 俺はグランバニアを発展させる事で手一杯なんだ。他国の……それどころか他世界の事にまで構ってられない」
もっともな意見だとは思うが、言い切られると嫌悪感が生まれる。

「それにアハト君等が生きて戻るかは判らない。今頃ドルマゲスに殺されてるかもしれないぞ。そうなると不慣れな世界で冒険する面倒な事態になるが、言いくるめる手間は無くなる。不慣れな土地での冒険と、面倒臭い連中の説得と、どっちが手間かなぁ?」

本気で言ってるのか、冗談めかしているのか理解に苦しむが、性格の悪さを遺憾なく発揮している。
彼が私の恋のライバルにならない事は熟知しているが、それでもこの人とだけはリュリュさんが結ばれない事を切に願ってしまう。

「まぁ……邪悪な気配も消えて、消火活動を手伝ってるアハト君等が見えるし、無事だったんだろうと思う」
言われて視線を凝らすと、確かに消火活動を手伝うアハト殿等が見える。
正直生きていた事にホッと胸を撫で下ろした。

「あの連中……俺の旅立ちの時ほどでは無いけど、相当弱いからな。ドルマゲスも興味が向かなかったんだろう。下手に俺等が行っていたら、今のうちに滅ぼしておこうと思われ、余計に面倒な事態になってたかもしれないな(笑)」
笑い事では無いだろうに……

「リュカ様かティミー殿下がいらっしゃれば……」
「全くだ。どちらかが居れば俺もこの世界の平和に協力的になるんだがな」
あの二人の強さは桁が違いすぎる。ティミー殿下は天空の勇者である事で理解できるが、リュカ様の強さは理解不能だ。

「あの二人……どちらの方が強いんですかね? ウルフ殿は如何(どう)思われます?」
「本人は認めないがリュカさんだろう。ティミーさんは天空の武具のお陰でリュカさんと対等に戦えてるが、それなくしては……」

即答だった。
骨の髄までリュカ派って事だろうか?
私も同意見ではあるが、他者に問われたらもう少し考えてから答えを述べるだろうな。

フッと思い出してリュリュさんに視線を向ける。
リュカ様の強さを話してたので、変態的リュカ派の彼女が気になったからだ。
勿論わざわざこの話題を振るつもりは無かったが、未だに下着が見える様な座り方をしていた。

先程のウルフ殿の言葉を思い出し、慌てて視線を修道院に戻す。
その動作に目聡く気付いたウルフ殿が、身体事リュリュさんへ向くと……
「リュリュさん……いい加減、その座り方がパンツ丸見えなのに気が付いてくれ! 俺はアンタの汚いパンツに興味ないが、ラングには目の毒だ」と。

余計な言葉を2つ3つ付属して注意を促す。
以前ティミー殿下が『本当に嫌なヤツだ! 本当に嫌なヤツだ!! 大切な事だから2回言う!』と騒いでいたが、激しく同意する……本当に嫌なヤツだ。本当に嫌なヤツだ!!

「み、見るな馬鹿野郎!」
「こっちの台詞だ。見せるな馬鹿女!」
マリーさんは兎も角、リューノちゃんはこの男の何所に惚れたのだろう?

私は見てない体を装うため、直立不動で修道院を見続ける。
背後ではリュリュさんが座り直す気配を感じる。
リュリュさんに如何(どう)思われてるのかは気になるが、暫くは彼女の方を見る事が出来ない。

「ラングも気付いた時点で注意してやるのが優しさだぞ。黙って見続けてるのは、ただのムッツリスケベだからな」
よ、余計なお世話だヘタレ野郎! わざわざ見てて何も言わなかった事を強調するな!

あ~腹立つ。
リュカ様が居る時は、彼もリュカ様の策略に振り回されて溜飲が下がるのだが……
この世界の平和は別にしても、リュカ様が居てもらわないと私の心の平和が保てない。
これは早めにグランバニアへ戻らないと、私もリュリュさんも胃が溶けて無くなってしまうだろう。




暫くの間、居たたまれない沈黙が続いた。
その原因を作ったのはリュリュさんで、それを放置し大きくしたのは私だが、威力を何倍にもして爆発させたのはウルフ殿だ。

三者共に責任があるのに、何故だかウルフ殿だけは余裕でいる。
納得がいかん。
何らかの報復を敢行してやりたいが、何倍にもしてやり替えされるのは目に見えているから我慢するしか無い。

柄にも無く苛ついていると、何時の間にか修道院の火事も鎮火しており、視界の隅からアハト殿等がこちらに近付いてきた。
遠目には判らなかったが、顔や衣服に煤が付いている。

ククール殿は見当たらないが、皆の表情は沈んでいる。
これは問うまでも無くオディロ委員長の死を意味してるのだろう。
少ししか対面した事無いが、間違いなく良い人であっただろう。

先頭のアハト殿は落ち込んだ表情をしながらも、何かを言いたげに我々の方へと向かってきた。
彼らの存在はウルフ殿にも見えていたであろうに、今しがた気が付いた様な素振りをして、とんでもない事を言い出した。

「おうアハト君。ドルマゲスを倒し、委員長を無事に助けられたか?」
あの火事……彼らの身形……そして落ち込んだ表情を見れば、リュリュさんでも理解するだろうに、わざとらしく明るい口調で問う精神が信じられない。

「何でウルフさん達は来てくれなかったんですか!?」
あぁアハト殿……
気持ちは痛いくらい察するが、その男を怒鳴ってはいけない。

その男は万物においてのマホカンタを纏っており、怒りをぶつけると何倍にもなって返ってくるんだ。
苦しいが我慢するのが一番自分を傷つけない。
ほら……ウルフ殿の眉間にシワが出来た。

ラングストンSIDE END



 
 

 
後書き
パンツの色は白。
言うほど汚くない。 
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