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DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)

作者:あちゃ
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第二十一話:正義の味方は必要無い

 
前書き
久しぶりのウルポン。 

 
(マイエラ地方・マイエラ修道院)
リュリュSIDE

「ちょっと退いて! 急がなきゃ院長が殺されちゃうでしょ!」
「そんな事は関係ない。リュリュさん……貴女を今あの場へ行かせるわけにはいかない」
こ、このガキ……何を言ってるのよ!

「今行けば、多分ドルマゲスと遭遇するだろう」
「分かってるわよ! だから院長を助ける為に、急がなきゃならないんでしょ!」
奴の後ろで修道院が燃え上がっている為、顔が陰に覆われて表情を覗えない。

「一度はククールの依頼を受け院長を守りに行った……が、その結果が投獄だ。もうこれ以上、俺等に院長を守ってやる義理は無い」
「な、何を言ってるの!? 命の危機にさらされてる人を助けるのは当然でしょ!」

「それは個人の考え方だ。だから俺はアハト君等が助けに向かっても止めはしない。仮にラングが助けに向かっても止めはしない」
「あ、アタシだから……邪魔するの!?」

「そうだ。ドルマゲスを直接見て分かった……アイツは強い! 今戦ったとして、全員無傷で勝てるとは思えない」
「じゃ……じゃぁ尚更アハト君等を助けに行かなきゃ!!」

「彼等は自分の意思で危険に向かっていった。それを俺に止める権利は無い」
「私だって自分の意思で向かうのよ! アンタに止める権利は無いわ!」
私を何だと思ってるんだ!

「アンタは自分の立場を解っていない……」
「わ、私の立場? ま、まさか……姫君だからって言うんじゃ無いでしょうね?」
ふざけるなよ……私は自分を姫様だと思った事は無いし、身分を鼻に掛ける趣味も無い!

「『姫』? 俺はアンタを姫だとは認めてない。我が国にトラブルを起こす厄介な女としか思ってない(笑)」
「じゃぁ何だって言うのよ!? 何だって私の行動を邪魔するのよ!」

「本当に貴女は自分の立場を解っていない。貴女はリュカさんの娘なんですよ……正妻との間に生まれてないとは言え、貴女は紛れもなくリュカさんの娘なんです!」
「そ、そんな事は解ってるわ!」

「解ってる? では余計問題だ。貴女は自分の立場を解っているが、父親の事を何一つ理解してない……理解しようともしてない!」
「わ、私が……お父さんの事を……理解してない……?」

「そうだ。貴女が戦い、傷付いたら……リュカさんは凄く落ち込む。例えアンタでも可愛い娘に違いはない……そのアンタが戦いで傷付けば悲しむだろう。万が一にも死ねばリュカさんは嘆き悲しみ自らを許さないだろう。俺は、この世界が如何なろうと知った事じゃないし、アンタ個人が傷付き死のうが構わない。だがリュカさんの心を傷付けるのは見逃せない! 俺の持てる力を全て使って、それを阻む」

ウルポンはそこまで言い切ると剣を抜き私を見据えた。
……矛盾してない?
先刻(さっき)私が傷付く事がお父さんの心を傷付けるって戦わせない様に邪魔するのに、私を倒してでも自分の意思を押し通すって……矛盾してない??

「何考えてんの!? アンタが私を攻撃したら、私が傷付いてお父さんが悲しむんでしょ! 矛盾じゃん!」
言ってやったわ。
流石のウルポンも反論出来ないわ。

「俺が貴女を攻撃?」
ウルポンは不思議そうに呟くと、抜いた剣を横に投げ刺し両手を広げ私に近寄る。
そして背中を向けると……

「俺は攻撃などしない……如何してもドルマゲスの所へ行きたいのなら、俺を殺せ。魔法も使わない……反撃もしない……勿論、避けもしない。俺の事が嫌いで、院長を助けたく、リュカさんの気持ちを理解するつもりがないのなら、俺を殺して行くが良い」

え、何? 殺せ!?
な、何だと思ってんの私の事!
殺すわけないじゃん! そりゃぁ大嫌いだけど、殺すとか違うし!

「リュリュさん……私もウルフ殿に賛成です。貴女は行ってはいけない! ましてやウルフ殿を殺すなど……」
「はぁ……ラン君?」
えぇ!? 私、ラン君にまでウルポンを殺すと思われてるの?

ちょっと待て!
私ってそんなに無法者だと思われてるの!?
ショック……凄くショック。

「わ、私は「聞いてくださいリュリュさん! 今、ご自身の感情にまかせてウルフ殿を殺害し、アハト殿等の救援に向かっても、リュカ様は心から喜ばれませんぞ。お優しいリュカ様ですから、貴女の事を責めたりはしないでしょうが、大切な家族の一員であるウルフ殿を失った悲しみは壮大なモノとなるでしょう」

言葉遮られるし……
何か一方的に悪者にされてるし……
私……もっと皆に好かれてると思ってた。

「ラング、退け。リュリュさんが如何してもアハト君等を助けたいと言うのなら、俺には止める事が出来ない……そうなればリュリュさんの身を守るなんて俺には無理だ。そうなれば俺はリュカさんに会わす顔が無い……リュリュさんの感情を優先させて、ここは一思いに殺された方が良いんだ」

こ、殺さねーって!
私とウルポンの間に立ち塞がるラン君を押し退け、死ぬ決意を見せるクソガキ。
どうしても私を極悪人に仕立てたいのか?

「殺さないわよ! 勝手に私を人殺しにしないでよ!!」
川の対岸で燃え上がってる修道院をバックに、殺される殺されないで問答するウルポンとラン君に大声で言い放つ。

「え……本当に?」
「ほ、本心ですか?」
コ、コイツ等……マジで私が人殺しをすると思ってたんだわ。

「私だってウルポンを殺したらお父さんが悲しむのは判ってるわよ! だがら今までだって殺そうとか失脚させようとか考えもしなかったんでしょ!」
「考えもしなかったんじゃなくて、考えも付かない程バカだったんじゃないの?」

「そ、そんなに馬鹿じゃないわよ!」
「そうかなぁ……リュカさんが嫌がってるのに、近親相姦を望んで諦めないじゃんか」
「そうですよリュリュさん。相手の意に沿おうとしたら、リュカ様の性癖を受け入れるべきでしょ?」

「そ、それとこれとは別なのぉ!」
「別じゃねーよ。お前どんだけ親不孝な事してるのか解ってんのか?」
お、親不孝って……そんな大袈裟な。

「と、兎も角……私はウルポンを殺しません!」
「……良いだろう、その言葉を信じよう。であれば、アハト君等への救援は諦めてもらう」
何でそうなるかなぁ……?

「ウルポンは私がドルマゲスに勝てないと思い込んでない? そうとは限らないでしょ! アハト君等も居るんだし、協力し合えば倒せるかもしれないじゃない!」
そうよ、協力よ。一人一人は非力でも、協力すれば勝てるわよ!

「ドルマゲスの姿を見て、その力量を感じ取れないのでは無理だな。リュカさんか、百歩譲ってティミーさんが居れば、俺も恐れる事はないだろうけど、アレは魔王クラスだ。冒険初心者連中と平和ボケ女のパーティーじゃ勝ち目が無い」
平和ボケ女って……

「ウルポンが居るじゃない。天才宰相で、超ベテラン冒険者のウルフ・アレフガルド様がいらっしゃりやがるじゃないですかぁ!」
私に殺されるくらいの覚悟があるのだから、魔王クラスに特攻する覚悟くらい持ちなさいよ。

「確かに……天才でイケメンで超ベテラン冒険者なグランバニア王国宰相兼国務大臣の俺だけど、貧弱な冒険初心者と勘違い平和ボケ女連合パーティーを守りながら戦うのは無理だね。俺一人で戦ったって勝ち目は無いのに、足手纏いを引き連れて戦闘したって惨敗しか見えてこない」

「段々と私達を表す言葉が酷くなっていく……」
「リュリュさん等を表す言葉がアレなのは私も気になりますが、一瞬でもドルマゲスを見て『協力すれば勝てる』と言うくらいの実力では、間違っても勝利する事は出来ません。ウルフ殿へ対する反発心は捨てて下さい」

う゛~~~……
何時もは味方してくれるラン君が、この件に関して反対してくる。
そんなにドルマゲスは強いの?

「わ、分かったわ……今は戦いに行く事を我慢する」
「今は? 今と言うか、アハト君等がもっと戦える様になって、貴女を守れる……守りやすくなってからだ! せめてアハト君一人で何時ぞやのアホイカに圧勝できるようになる……そんな時まで、彼等の為にも戦闘に参加しないで下さい」

むぅ~……
あのイカさんだって結構強そうだったのに、それ以上って何時になるのよ!?
ラン君までもウルポンの言葉に“ウンウン”って頷いてる。

「わ、分かりましたぁ!」
結局コイツはお父さんの事が重要なのね。
私もコイツに拘わらず“姫君”として扱われたいと思った事ないけど、度を超して失礼なクセに私の身を案じてるのは、私がリュケイロム(お父さん)の娘だからなのね。

不愉快だけど納得しましょう。
ドルマゲスは強いみたいだし、下手に反発して大怪我(ウルポンも含む)をしてお父さんを悲しませたくないし……

……でも、アハト君達は大丈夫かしら?
そんなに強い敵を相手に、未だ未だ未熟な冒険者達だけで戦いを挑みに行っちゃって。
彼等が強くなるまで共闘は待てって言うけど、今回で死んじゃったら共闘も何も無いのに。

「ねぇウルポン。私達が戦闘に参加する事を別にしても、アハト君等が今日……って言うか今まさに殺されちゃうんじゃないの?」
ドルマゲスを倒すのなら、彼等が強くなるのを待たなきゃならないのに。

「先程も言いましたが、彼等が自らの落ち度で死しても、それは我々には関係の無い事。共にこの世界を旅するとしても、運命まで共有する必要は有りません。何故なら、俺等と彼等では目指す終着点が違います」
「終着点~?」

「そうですよ。俺等がこの世界を旅するのは、元の世界……グランバニアに戻る為です。ですがアハト君等はドルマゲスを倒す事を目的としている。ドルマゲスを倒せば俺等もグランバニアに帰れるというのなら、全力で彼等をサポートしますが、現状ではラーミアを探す事が帰る為の最短コース。ドルマゲス討伐は俺等にとって序手ででしかない……そんな事に全力を注ぐわけにはいかない。アハト君等がこの戦いで死ぬのであれば、俺等は手探りでこの世界を旅するだけ。運良く生き残れば、また一緒に旅をし、俺等の目的を果たせば良い」

言いたい事は解った……
でも胸糞悪い事を平気で言う男ね!
だから嫌いなのよ……唯一評価出来るのは、お父さんを絶対と崇めている事だけ。

もう話を聞きたくないわ。
私は腰から剣を外し、近くの牧草の束に腰掛ける。
そんな私を見て、もう突っ走らないと解ったのか、ウルポンも剣を拾い腰の鞘に戻すと身体ごと視線を燃えている修道院(院長の部屋)へ移す。

今頃アハト君達はドルマゲスと戦っているのだろうか?
勝てないまでも皆無事だと良いな。
折角仲良くなれたんだし、これからも一緒に冒険したいよ。

ラン君が私とウルポンとの中間に居て、こちらをチラチラ見て気遣ってる。
何か……今はそれが鬱陶しく感じる。
何でだろ? 私の意見に反対したからかな?

……早く、お父さんの下に帰りたい。

リュリュSIDE END



 
 

 
後書き
舞台はDQ8なのに、
グランバニア勢しか出てこない。 
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