ある晴れた日に
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40部分:妙なる調和その一
妙なる調和その一
妙なる調和
四月が終わろうとしていた時期にこの学校ではキャンプが行われる。バスでキャンプ場まで行ってそこで皆で二泊するのだ。一年G組もまた同じだった。
「ちっ、阪神負けたぜ」
野本がスポーツ新聞を読みながら舌打ちしていた。
「よりによってロッテによ」
「そんなにロッテに負けるのが嫌なの?」
「日本シリーズを思い出すからな」
忌々しげに茜に言葉を返す。彼等は今はそれぞれの席に座っている。
「あの忌々しいシリーズをよ」
「ああ、あれね」
茜はそのシリーズが何時のことかすぐにわかった。
「あれは確かに壮絶だったわね」
「何だよあれ」
野本の忌々しげな言葉が続く。
「あそこまで見事に負けまくりやがってよ。四連敗だぜ」
「あれよこれよという間だったものね」
「それ思い出すからなんだよ」
挙句には新聞を両手で潰しだした。
「今年のシリーズ見てろよ、復讐戦だ」
「何言ってるのよ」
ここで明日夢が話に入って来た。
「今年優勝するのは横浜よ。決まってるじゃない」
「いや、それはねえだろ」
「なあ」
野本だけではなく坪本まで明日夢に突っ込みを入れる。
「どう考えてもな。横浜だけはな」
「頼むから巨人には勝ってくれよ」
結構自分勝手な主張も入れたのは佐々だった。
「阪神に負けた分巨人には勝ってくれよ」
「どっちにも勝つわよ」
自分ではこう言う明日夢だった。
「今年の横浜は違うからね」
「確かになあ」
「今年特に凄いわよね」
春華と奈々瀬は少しうんざりとした顔で明日夢に言う。
「巨人にどれだけ負けてるんだよ」
「横浜大洋銀行復活?全く」
「今だけよ」
明日夢の反論は苦しい。
「九七年みたいに終盤追い上げるから」
「それでうちに大一番でノーヒットノーランくらって負けると」
「駄目じゃない」
「くっ・・・・・・」
やはり敗れた明日夢だった。そもそも勝てる筈がなかった。今の横浜の弱さは最早かつての阪神をも凌駕するものだったからだ。
「大ちゃんが監督の時も凄かったけれどな」
「ああ、あの時はな」
野茂と坂上は少し前の話をしだした。
「村田、古木、鈴木の守備が壮絶だったな」
「呆れたよ、あれは」
「全く。パワプロでやったらな」
「特に古木だったな」
ここである男の名前が出て来た。
「左ピッチャー打てなくてチャンスに弱くてな」
「あの守備。かえって驚いたよ」
「古木は素質があったのよ」
明日夢は残念そうにコメントした。
「けれど。もうトレードに出されて」
「守備って大事だからね」
桐生もまた古木の守備について言及する。
「やっぱりね。それは」
「けれど凄い選手だったのよ」
明日夢も諦めない。
「長打力はね」
「他は?」
速攻で凛の突込みが入った。
「他はどうなの?」
「足だって結構。肩も」
「守備は?打率は?左投手には?チャンスには?」
「誰だって得手不得手があるわよ」
明日夢の返答は実に苦しかった。
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