| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第158話:Last Battle

シグマパレスの玉座の間では似通った配色を持った2人の少年が荒い息を吐いて膝を着いていた。

「はあっ!はあっ!」

「っ…まさか、我々新世代型にこのような弱点があるとは…思いませんでしたよ…我々、新世代型共通の反省点ですね…」

高性能であるが故の慢心が己の敗北を招いたことにルミネは苦笑した。

「あんた…そうやって反省することが出来るのに…どうしてイレギュラーになったのさ…」

「イレギュラー…ですか、アクセル…曲がりなりにも新世代型のあなたなら既に気付いているのではありませんか?私が…いえ、今まであなたが戦ってきた新世代型レプリロイド達は決してイレギュラー化などしていないことを。」

「自分の意思でしたってこと?」

「そう、既にシグマから聞いているかもしれませんが…私達、新世代型レプリロイドのコピーチップは数多くの旧世代型レプリロイドのデータを解析して造られました…その中には当然、あの最強のイレギュラーであるシグマも含まれています。あらゆるレプリロイドを解析し、そのデータをコピーチップに刻んだことでその優れた能力を継承したのです。」

ルミネの説明にアクセルはバレットを握り締める手に力を込めた。

「コピーチップにシグマのデータが…?だったら僕もシグマみたいに狂っちゃうってこと?」

プロトタイプであるとは言えそのようなことを聞かされては平常ではいられないアクセルはルミネに尋ねるが、尋ねられたルミネは首を横に振った。

「いいえ、残念ですが…プロトタイプであるためにあなたのコピーチップにはシグマのデータは刻まれていないでしょう。例え刻まれていたとしてもプロトタイプであるあなたにそこまでの能力があったかどうか…あなたのコピーチップにシグマウィルスが残っていれば可能性はあったかもしれませんが…そしてアクセル、シグマは決して狂っていた訳ではないのですよ」

「?」

ルミネのその言葉にアクセルは疑問符を浮かべるしかなかった。

あれが狂っていないのだとしたら、一体何なのだと。

「確かに始祖ウィルスなどの様々な外的要因があったことは否めませんが、シグマは自らの意思であなた方の世界に反逆していました…。そしてそのデータを受け継いだ我々、新しい世代のレプリロイドは、何時でもシグマのようになれるのです…私達は自分の意思であなた方、旧世界に戦いを挑むことが出来る…」

ゆっくりと立ち上がり、地球を見遣る。

「見なさい、あの星を…宇宙から見れば美しいあの星も…中身は荒廃し、滅びを待つだけの物となっている。今までは愚かな存在の愚かな選択が星を、世界を傷付けて来たのです。今この時…私達、新世代の力を以て世界は変わるのです!!」

「変わるだって…?」

「そうです。生命が、より進化した生命に取って代わられるのは古の時代から続いてきた自然の摂理です!!」

ルミネは、遥か彼方に小さく見える地球に向けて手を翳し、そしてルミネが翳した手は地球を掌握するように閉じられた。

「このまま人類と旧世代型レプリロイドが月に移住したところで古き考えに固執する者達がいては地球同様に月にも未来はありません。いずれ月さえも地球同様に滅ぼしてしまう。その前に旧世代の存在は滅ぼさなければなりません。アクセル、あなたに私達が撃てますか?古き考えに固執し、地球を荒廃させ、己の首を絞め続けてきた旧世代の仲間であるあなたに?」

アクセルは無言でルミネにバレットを向けた。

確かにルミネの言う通り、地球の荒廃に関して自分達は無関係ではない。

それどころか人類の月への移住計画であるヤコブ計画が本格的に始まるきっかけとなったのは自分の仲間であったレッドアラートによる争乱だったからだ。

「確かに地球の荒廃に関して、あんたの言ってることは正しいのかもね。地球の荒廃やヤコブ計画に関しても僕は無関係とは言えない。でも、僕はレッドアラートのメンバーだった頃から、僕なりに守るために…信念のために戦ってきたんだ。僕を拾ってくれたレッドやハンターの…ルナやみんなのために今更ここで躊躇うわけにはいかないんだ!!」

迷いなき真っ直ぐな瞳をルミネに向けながらバレットを構えながら立ち上がった。

「それがあなたの答えですか…良いでしょう。あなた方、旧世代が勝つか…それとも私達、新世代が勝つか…最後の戦いと行きましょう。私の全力を以てあなたを迎え撃ちます」

不敵な笑みを浮かべたルミネの全身を光が包みこみ、その光はまるで地上から見る月の光のようだった。

空間が変わり、宇宙では有り得ない夜明けの太陽の光を背に現れた天使の姿となったルミネ。

「それがあんたの真の力ってわけ?」

「その通り、他者の力を使って勝てないのなら私自身の…私のみの力であなたを下します。覚悟はよろしいですねアクセル?」

「出来てないって言っても待つ気ない癖にさっ!!」

直ぐにバレットをレイガンに変化させるとレーザーを連射するアクセルだが、ルミネは手を前に翳す。

「オラトリオ!!」

聖譚曲の名を持つバリアがレーザーをいとも容易く防いでしまう。

「スパイラルマグナム!!」

即座に貫通力が高いスパイラルマグナムでのバリア破壊を試みるが、バリアに弾かれてしまう。

「無駄です、その程度の攻撃ではオラトリオは破れませんよ。今度は此方から行きますよ!!」

天から光の矢が降り注ぐ。

最初はダッシュやローリングで回避出来たが、徐々に難しくなっていく。

「ステルス!!」

即座にステルスの力場で矢を無力化するが、直後にルミネは翼を羽ばたかせ、アクセルに強烈な体当たりを喰らわせる。

「うあっ!?」

「確かにその光学迷彩の有用性は認めますが、流石に直接攻撃は防げないようですね。そしてその技のもう1つの弱点は、継続して発動するのにかなりの集中力を要することです」

ダメージを受けたことでステルスは解除されてしまい、アクセルは無防備の状態となる。

その隙にルミネはアクセルに向けてレーザーを放った。

「うわああああっ!!」

レーザーを何度も受けては吹き飛ばされるアクセルに対してルミネは余裕の表情など一切見せていない。

「あなたに言われたことは永遠に胸に刻んでおきましょう。性能の過信は敗北を招くと言うことを身を以て思い知らされましたからね…故に今の私に慢心はありません!一切の油断もせずにあなたを滅ぼします!!」

今度は光の帯がアクセルに向けて放たれる。

アクセルは激痛に苛まれる体を必死に動かしてダッシュで回避するのと同時にバレットを構えてショットを連射する。

「甘い!!」

縦横無尽に動き回ることでアクセルのショット連射をかわすルミネ。

「くっ!!」

動き回るルミネに何とか食らい付こうとアクセルはホバーで対抗するが、完全な飛行能力を持つルミネには遠く及ばない。

「墜ちなさい!!」

天から降り注ぐ光がアクセルに直撃して床に叩き付けられる。

それだけでなく、光が地面から突き出てアクセルに第二撃を与える。

「ごふっ!?」

「とどめです!!」

だめ押しとばかりにレーザーを発射するルミネだが、間に入った影がアクセルを守る。

「あ、ルイン…」

「ごめんごめん…遅くなっちゃった。と言うか凄い威力だね」

PXアーマーのバリアもあまり長く保たないために急いでアクセルを抱えて脱出し、後から来たエックス達の元に向かう。

「なるほど、エックス達も来ましたか…四天王の自爆に巻き込まれて多少のダメージを受けていると思っていましたが…」

「咄嗟にエックスがスクイーズボムで防いでくれたんだよ。自爆前の彼らは悪く言えば爆弾みたいな物だからね」

「あれはルミネか…?まさか彼までイレギュラー化しているなんて…」

「随分と苦戦していたようだなアクセル」

「ちょっと…遅れといてそりゃあないんじゃないのゼロ…?」

口を尖らせながらゆっくりと立ち上がるアクセル。

それを見たルミネは口を開く。

「旧世代の英雄が揃いましたか…これでようやく決まりますね。あなた方、旧世代が生き残るのか…それとも我々が生き残るのか…」

翼を羽ばたかせ、ルミネはエックス達に体当たりを仕掛けてきたが、エックス達はダッシュでかわすと、即座にルミネら天から光の矢を降り注がせる。

「かわして!!」

「くっ!!」

エックス達はダッシュを繰り返して回避するが、エックス達は初見故に何発か掠ってしまう。

「ダブルチャージショット!!」

OXアーマーに換装するとダブルチャージショットを放つものの、ルミネのバリアに弾かれてしまう。

「効かないだと?」

「無駄です、その程度の攻撃ではオラトリオのバリアは破れません」

「なら、これならどうだ!?プラズマチャージショット!!」

プラズマチャージショットを放つが、先程のようにバリアに防がれてしまう。

「むっ!?」

ここでルミネは驚愕で目を見開く。

着弾点にプラズマが発生し、バリアに罅を入れたのだ。

「たあっ!!」

「受けなさい!!」

そこにアイリスがサーベルをTブレイカーに変形させ、ハンマーをバリアに叩き付けるとバリアが砕け散り、エイリアのチャージショットがルミネに直撃する。

「ぐあっ!?」

ダメージを受けたルミネが仰け反り、そこにゼロが追撃を仕掛けた。

「雷光閃!!」

神速の斬撃がルミネに繰り出されたが、ルミネは咄嗟に体を捻って回避する。

しかしかわしきれずに右の翼を両断された。

「くっ、流石は旧世代の英雄。私でもそう簡単には行きませんか」

片方の翼を失い、多少バランスは悪くなったが戦闘続行に問題はない。

「行きなさい!!」

光の帯を放ち、更に時間差で天から光を落としていく。

「あの攻撃は落ちた場所から戻ってくるから気をつけて!!」

「了解!!」

「ここは私達に任せて」

「安全な場所を割り出します」

エイリアとアイリスが周囲を見渡して分析を開始し、少し離れた場所に光が降り注いでいない場所を発見。

「みんな、あそこに!!」

「分かった!!」

全員がそこに移動して光を凌ぐと、エックスは再びバスターを構えた。

「プラズマチャージショット!!」

「くっ…」

即座にバリアを展開するが、プラズマチャージショットによってバリアに亀裂が入る。

つくづくこの攻撃とは相性が悪い。

「羅刹旋!!」

即座にゼロが追撃を仕掛けてバリアを破壊する。

「今だ!!」

跳躍してルミネを蹴りつけて体勢を崩すとホーミングショットを浴びせる。

「くっ…!!アクセル…」

「あんたの負けだよ。正直僕1人じゃあ、今のあんたには勝てなかった」

「っ…まだです、まだ私は負けるわけにはいかない…理想郷の創造のためにも負けられないのです!!闇に呑まれなさい!パラダイスロスト!!」

ルミネの体が光り輝いたかと思えば周囲が闇に染まり、その闇がエックス達に迫る。

「何?この技…」

「分からんが、このままでは不味いのは確かだ。早くルミネを倒すしかないが、奴め…どこに隠れている…?」

「エネルギー感知も出来ないわ…」

徐々に迫る闇に誰もが焦りを隠せない。

しかしシャイニングレイや天照覇でもこの闇を照らすことが出来ない。

このまま終わるのかと諦めかけた時、アクセルは何か閃いたのかブラストランチャーを構えて周囲に向かって手榴弾を乱射する。

「(何を考えている…?)」

闇雲に攻撃したところで自分には当たらないことなど分かっているはずだ。

それなのに何故このような攻撃をするのかルミネには理解出来ない。

しかしこの胸騒ぎは何だと言うのか?

不意にアクセルと目が合った気がしてまさかと思うが、アクセルの表情は不敵に笑った。

「っ!!」

悪寒を感じたルミネ。

アクセルがルミネのいる方向を指差す。

「エックス、ゼロ、あそこだよ!!」

「…っ!!」

「見つけたぞ…!!」

指差した方向は手榴弾の爆煙が妙に逸れている場所。

普通ではあり得ない逸れ方にエックスとゼロは確かにルミネがいる可能性が高いと思った。

「(しまった…!!)」

そしてルミネもまた自分のミスを理解する。

いくら闇に身を潜ませても実体自体はあるのだ。

そして、エックスとゼロは逃げられる前に駆け出した。

「多分こいつはシグマの武器なんだろうが…使わせてもらう!!」

シグマの愛剣・Σブレードを拾う。

忌々しいが、見ただけでも自身の持つ武器より遥かに高性能なのは確かだ。

所有者がシグマからゼロとなったことで光刃の色が禍々しい緑ではなく、煌びやかな金色に変わっていた。

「くっ!!」

ルミネは咄嗟にバリアを張りつつ、防御体勢を取るものの、ゼロはブラックゼロを発動するとルミネに向けて全力でブレードを振り下ろした。

「はあっ!!」

「ぐあっ!?」

ブレードのあまりの威力にバリアがクラッキングされ、防御体勢を崩されてしまう。

「エックス!!」

「ノヴァストライク!!」

全身にエネルギーを纏って突進するアルティメットアーマーの必殺技であるノヴァストライクがルミネに炸裂した。

「ぐああああああっ!!!!?」

ノヴァストライクをまともに受けたルミネはあまりの破壊力に耐えきれずに体から徐々に爆発を起こし、最後には大爆発を起こしたのであった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧