ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第157話:LUMINE
シグマが爆散し、飛び散ったシグマウィルスが留まることなくすぐに消滅したのを確認した。
次の瞬間、アクセルの額にノアズパークでの戦いから常に感じていた異物感が消えたことに気付く。
どうやら今度こそシグマは完全に死んだようだ。
それによってアクセルのコピーチップに食い込んでいたシグマウィルスも消滅したのだろう。
「…シグマウィルスが消滅したからこの姿は維持出来ないと思ってたけど…消滅しても普通にこのままでいられるのか。まあ、潜在能力だから当たり前か……はあ」
体に走る痛みと蓄積した疲労によりアクセルは膝をついて、終いには座り込んでしまう。
「痛っ…やっぱり認めたくないけどシグマは強かったな…お爺さんに力を引き出して貰わなかったら勝てなかったかも」
少し休んで痛みが引いたらコピー能力の応用で自己修復した後にエックス達と合流しようと考える。
星空の下で松明が揺らめき、限りなく黒に近い空に星々が瞬いて月の宮殿を照らしている。
爆炎が消えてそちらを見遣ると神秘的な光の中、シグマの屍が無粋に横たわっており、粉々の破片からは生命がないことは明らかである。
此方に近付いてくる足音に気付いて振り返ると、そこには純白と紫を基調としたボディのレプリロイド…軌道エレベーター・ヤコブ管理官のルミネが佇んでいた。
彼の女性と見間違うような美貌は地球を見つめて微かに笑っていた。
「あんた…」
「美しいものですね。地上でルナと共に見た夕日もまた美しかったですが、宇宙からこうして見つめる地球の姿は更に美しい。地上はあそこまで荒れ果てていると言うのに…そのようなことなど関係ないかのような美しさを放っている。」
宇宙から見る地球の美しさに目を細めると、ゆっくりとした動作で座り込んでいるアクセルを見遣るルミネ。
「初めまして、アクセル。あなたのことはルナから聞いていましたよ。プロトタイプ故の不完全な力で良くシグマを倒せましたね。流石は私達、進化した存在である新世代型レプリロイドのプロトタイプと言ったところでしょうか?我々の計画も最終段階に入りましたし…私自ら、あなたを歓迎しますよ。新世代型レプリロイドの代表としてね」
「っ…あんた、シグマに連れ去られて利用されたんじゃないの?」
体に走る痛みに耐えながら起き上がるアクセル。
それを見たルミネは微笑みを浮かべた。
卑しくも同じ純白のアーマーで金色の瞳を持ち、髪の色まで似通っているので何も知らない者からすれば2人は兄弟にしか見えないだろう。
「利用…?違いますね…シグマは…彼は役目を果たしただけですよ。私達…新世代型レプリロイドを目覚めさせると言う役目をね」
近くに落ちているシグマの頭部らしき破片にゆっくりとした動作で右足を乗せ、徐々に力を込めていくと軋んだ音が音量を増す。
そして右足に力を込めて破片を一気に踏み潰すとルミネの目に冷たい狂気の光が宿ったのを見て、アクセルは悟った。
「なるほどね…あんたもイレギュラー化したんだ…」
「イレギュラー?そのような物で進化した我々を測ることなど不可能です」
ルミネの両腕が円を描くように振られ、彼の周りには八色の光…DNAデータが取り巻いていた。
その光は美しく、中心にいる少年の容貌によく似ていて天使を思わせる顔と肢体だが、ルミネの纏うオーラはどこか禍々しい。
「まるで神様にでもなったつもりな顔だね」
ルミネはアクセルの言葉に神の如き傲慢な笑みを浮かべながらアクセルと真正面から相対した。
「なったつもりではありません。私は神に等しい存在なのです。ここまで来れたことに敬意を表して、あなたを破壊した後も…特別にDNAデータは残して差し上げますよ……どうもあなたは他人のように思えませんからね」
「嬉しくないね…くっ…体が…」
VAVAとシグマとの連戦でアクセルの身体は悲鳴を上げており、痛みに顔を歪めた。
「おや?どうやらダメージが蓄積し過ぎて満足に動けないようですね。ふむ…このまま倒しても良いのですが……あなたはVAVAやシグマだけでなくここに来るまでの道中に何体ものシグマボディをコピーした新世代型レプリロイドと戦って疲弊している。あまりにもフェアではありませんね。新世代型レプリロイドの代表である私が実力で旧世代を打ち破ってこそ、この戦いに意味があるのですから」
細く白い腕をアクセルに向けて伸ばすと掌からエネルギーを放った。
エネルギーはアクセルに当たるがダメージを受けるどころか回復している。
「これは…体が…?」
手を握ったり開いたりを繰り返して見るが、体が万全の状態にまで回復している。
「ほんのサービスですよ。それでは始めるとしましょうか?愚かな旧世界が滅び、これから始まる素晴らしき新世界のための戦いを」
似通った配色を持った2人の少年の戦いが始まった。
ルミネが腕を天に翳したのと同時に地面から光が漏れ、紫がかった透明な水晶壁が出現する。
「これはトリロビッチのスペシャルアタック!?」
「その通り、私は新世代型レプリロイドの最高傑作。コピー能力で変身せずともその能力の行使が可能なのです。あなたのバレットにコピー能力を応用させたそれのような物です。変身せずとも対象の能力を扱える…強弱の差はあれど、同じ力を扱える者同士…益々親近感が湧いてきましたね…さあ、行きなさい。ウェーブウォール!!」
大量の水晶壁がアクセルに向かって迫り来る。
データでしか知らないが、オリジナルのトリロビッチの物と比べても全く劣らない。
「くっ…僕を回復させたことを後悔するなよ!!」
データによってウェーブウォールの対処方法は頭に入っている。
迅速に壁蹴りで水晶壁を駆け登り、それを飛び越えて行くことを続けていくのがこの技の対処方法。
そしてこの技は新たな水晶壁を出すのに時間が掛かるために反撃のチャンスは出てくる。
「流石ですね、トリロビッチのウェーブウォールを容易く飛び越えるとは」
「仲間がその技を使う奴と戦ったからね!!そして今のあんたはこいつが弱点なんじゃないの!?スパイラルマグナム!!」
スパイラルマグナムのマグナム弾を発射し、ルミネの左肩に空間すら歪ませる弾が掠る。
「お見事です。即座にこの能力の弱点を見抜くとは。流石は我々、新世代型のプロトタイプ」
肩の傷を押さえながらもルミネは不敵に微笑んだ。
対象の能力をコピーしている間は自分自身の弱点が対象の物と同じになると言う欠点を見抜かれたにも関わらず、余裕の表情を崩さない。
「…………」
「ああ、そう言えばあなたはヤコブでルナとも戦ったのでしたね。彼女の不完全なコピー能力は強化されていましたし…それで私の対処方法が分かったんですね?戦いは残念な結果でしたが」
「ルナを壊したあんたらが良くそんなこと言えるね?」
不快そうに言うアクセルに対してルミネも心外そうに表情を顰めた。
「あれは私も知りませんでした。私は当時、覚醒するまで別室に囚われていたので…もしシグマがあのような愚行をするなら止めていましたよ。私個人としては彼女の人柄を好ましく思っていましたからね。そうでなければ彼女をわざわざ軌道エレベーター管理施設へのスカウトなどしませんよ。」
「………」
それを聞いて思わず納得してしまう。
今までの新世代型レプリロイドはシグマに忠誠を誓っていたのにも関わらず、ルミネにはシグマに対する忠誠心が全く感じられない。
「…さて、会話はこれくらいにしましょうか。今となっては彼女は過去の存在となってしまった。今は新たな新世界のための戦いに集中しましょう!!キューブフォールズ!!これがかわせますか!!?」
「っ!?」
アクセルの真上にアントニオンのスペシャルアタックで巨大な重力球を発生させ、周囲の破片を集めて製錬したキューブをアクセル目掛けて大量に落下させていく。
咄嗟にローリングで回避し、次々と落下してくるキューブをアクセルは必死に避ける。
回避に精一杯でルミネに攻撃をすることが出来ず、ルミネの次の攻撃を許してしまう。
「キューブフォールズを避けますか…ならば次はこれです。」
指先を開いた状態…貫手の状態で構えるルミネの腕に凄まじい衝撃波が纏われる。
「っ!!」
「受けなさい…葉断突!!」
パンデモニウムのスペシャルアタックである葉断突はシンプルな突き攻撃である。
しかし、シンプル故にその威力は凄まじい上にルミネは貫手で繰り出しているために点に於ける破壊力においてはオリジナルのパンデモニウムを超えるかもしれない。
当然それをホワイトアクセルの状態で受ければ死は免れないために跳躍してかわし、真上からフレイムバーナーによる火炎放射を浴びせる。
「やはりあなたのスピードは厄介ですね。あなたのスピードを多少削がせてもらいますよ!!はあああ…スノーアイゼン!!」
腕を天に翳して凄まじい冷気を手から放つと、幾つもの雪の結晶を降らせる。
イエティンガーのスペシャルアタックであるスノーアイゼンは確かに相手の動きを削ぐのに適した技だろう。
「これくらい!全部撃ち落としてやる!!」
「残念ですが、私の攻撃はまだ終わってはいません。全てを焼き尽くす業火を受けなさい。フレイムトルネード!!」
ブラックアローで全ての雪の結晶を撃ち落とそうとするが、ルミネは次の攻撃体勢に移行していた。
コケコッカーのスペシャルアタックであるフレイムトルネードで足場ともなる柱を炎で包み込む。
この2つの技は使い手が命を失うか、それを維持する力が無くなるまで消えることは決してない。
「これは…!!」
真上からの雪の結晶、そして全ての柱を包み込む炎。
アクセルの武器の1つとも言えるスピードが大分殺がれてしまった。
「これであなたのスピードは大分削がれたはずです。アースクラッシュ!!」
「うわっ!?」
サンフラワードのスペシャルアタックであるアースクラッシュをまともに受けるアクセル。
これはルナもやった戦法だ。
相手の機動力を殺ぎながらのアースクラッシュ。
本来なら余裕でかわせる一撃であったが、動きを制限されたことで直撃を受けてしまう。
しかも防御力が低いホワイトアクセル状態で受けたために一瞬意識が飛んだ。
「消え去りなさい」
もう一発レーザーをアクセルに落とそうとするが、アクセルはすぐにブラストランチャーを構えてダッシュで距離を詰めると手榴弾を当てる。
「何度もやられるか…!!」
「っ…やりますね…今のは流石の私も怒りを覚えましたよ。これで斬り裂いて差し上げます…受けなさい、デスイメージ!!」
宙に浮かぶと手刀を構え、手刀にエネルギーを纏わせて巨大な光刃を作り出す。
カマキールのスペシャルアタック・デスイメージ。
これまた先程の葉断突同様にシンプルな技だが、直撃だけは避けねばならない。
ローリングで光刃を回避しつつ、レイガンで反撃を試みようとするが、既にルミネは次の攻撃に移ろうとしていた。
「終わりです。サンダーダンサー!!」
「うわああああっ!!?」
ドクラーゲンのスペシャルアタックのサンダーダンサーをまともに受けたアクセル。
しかも電撃だけあってアクセルの体が麻痺してしまい、全ての電撃を受けてしまう。
「これで終わりです。エックス達も後であなたの後を追わせて差し上げますから寂しがる必要は…」
「やっぱり…あんたにもあるんだね。その弱点…」
「!?」
胸部に走った衝撃に思わず仰け反るルミネ。
アクセルはギリギリのところでステルスを発動して電撃を凌いでいたのだ。
「シグマのデータの影響かな?あんた達、新世代型は自分の性能を過信し過ぎて…決着しないうちに、つい勝利を確信してしまう…だからこういうことに対する対応が出来ない。」
ルミネの体に次々と叩き込まれていくホーミングショットのレーザー。
「まっ、悔しいけどあんたにそう言う弱点がなかったら勝てなかったことは認めるよ!!」
「うぐっ…うあっ!!」
「とどめのバウンドブラスターだ!!」
レーザーを撃ち終えた後、アクセルは今のルミネの弱点であるバウンドブラスターのエネルギー弾を直撃させ、ルミネを床に落下させたのであった。
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