ある晴れた日に
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36部分:噂はそよ風の様にその十三
噂はそよ風の様にその十三
「わかったさ。それじゃあ後でな」
「行きましょう」
「この二人は大丈夫みたいだな」
「そうね」
坂上の言葉に静華が頷く。
「真面目に仕事してるしな」
「未晴がいるからね。大丈夫よ」
「未晴なの、やっぱり」
話が行くのはやはりそこだった。明日夢がそこを言う。
「本当にあんた達って未晴が軸になってるのね」
「っていうか竹林以外全員まともじゃねえよな」
「そうだよな」
野茂と坂上が言い合う。
「この五人な。何なんだよ」
「竹林以外はなあ。何かな」
「随分言うね、本当に」
凛はこのことがかなり残念そうだった。
「っていうか私達言われ過ぎじゃない?」
「これじゃああれじゃない」
奈々瀬も凛と同じく残念そうである。
「野本や音橋と変わらないわよね」
「だから凛」
また未晴が友達を気遣う。
「そういうことは」
「考えない方がいいってこと?」
「ええ」
小さな声と仕草でこくりと頷くのだった。
「あまり」
「わかったわ」
何故か未晴の言葉には素直に頷く凛だった。
「それならね」
「そうよ。それで御願いね」
「ええ、わかったわ」
やはり六人の中心は未晴だった。その優しい気質で他のメンバーをまとめているのだった。それが終わってから正道と未晴は。学校の校庭を二人並んで歩いていた。
「それですみれだよな」
「うん」
未晴はここでも静かに正道の言葉に頷くのだった。
「そう、すみれよ」
「そうか、すみれか」
「ええ、それだけれど」
またそのことを言う未晴だった。
「まだ四月だけれどね」
「早いっていえば早いよな」
「それでも早いうちにしておきたいのよ」
これが未晴の考えだった。放課後の校庭ではラグビー部が練習している。校庭で派手に身体を動かしている。その彼等のボールがここにまで飛んできた。
「あっ」
「おっと」
未晴に当たりそうになるが正道が彼女の横に来てそのボールを受け止めたのだった。意外と素早い動きをここで見せてきたのだった。
「危なかったな」
「あっ、うん」
未晴はまだ少し驚いたものが残っているがその彼に対して言った。
「有り難う」
「いいさ、いいさ」
笑顔でこう未晴に返すのだった。
「こんなことはな」
「悪い悪い」
ラグビー部の方から謝る言葉が聞こえてきた。
「大丈夫か?」
「はい、まあ」
入学したばかりなので相手が先輩だと認識しているので正道も敬語だった。
「大丈夫です」
「そうか、本当に悪かったな」
「いえ、どうぞ」
ラグビーボールを蹴り返して応える。それで話は終わりだった。その正道に対して未晴が静かに声をかけるのだった。
「運動神経、いいのね」
「そうか?」
「さっきボールを受け止めたのも今のキックも」
「こういうのは得意なんだよ」
笑いながら未晴に対して言う。
「球技とか陸上競技はな」
「そうなの」
「ああ。だから別にな」
「何かそういうのって羨ましいわ」
未晴はそんな彼を見て彼の顔を見上げている。
「運動神経いいのって」
「そうか?」
「私、そういうのはあまり」
ここで俯く未晴だった。
「だから春華とか静華とか凛が羨ましいのよ」
「そうだったのか」
「うん」
正道の問いに静かにこくりと頷く。
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