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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第149話:Troia Base

ルインとアクセルはトロイアベースにダイブしていた。

このトロイアベースは新世代型レプリロイドを訓練するために造られた最新のトレーニング施設である。

能力の関係上、最も効率良くトレーニングのバーチャルプログラムをクリア出来る組み合わせが、ルインとアクセルのチームだったので再出撃した。

多くの新世代型レプリロイドがここで研修を受けて、能力を使いこなせるようになってからヤコブ計画のために月面へと旅立って行く。

人類が生き延びるために掲げたヤコブ計画の成功のために造られたトレーニング施設が、今では敵の巣窟の1つと化していた。

「新世代型の為に用意されたと聞いていたからどんな物なのかなと思ったら、意外と簡単なトレーニングだね」

「いやあ、これを簡単にクリア出来るのはあんまり多くないんじゃないの?」

仮想空間は暗い色調に光が輝き、幻想的な雰囲気を作っており、幾何学的な模様が空中に浮かび、時の移ろいに合わせて明滅している。

引き込まれてしまいそうな、不思議な光景で光に惑わされずに訓練を行うのも、立派な訓練と思えてしまう。

ルインは第一のバーチャルプログラムを簡単に攻略し、通路を駆け抜けながら呟いたが、隣のアクセルが呆れたように呟いた。

『うわあ、一応これ特A級ですら苦労するトレーニングプログラムなんですよ…正直、ナビの必要無いですよねこれ…。流石、ハンター試験を特A級に一発合格したルインさんですね…』

「そうかなあ?パレット達もやれば出来るって」

「『絶対に無理だよ(です)』」

ルインみたいにサクサクトレーニングをクリアするのはアクセルとパレットの装備の関係上、無理がある。

少なくてもルインみたいに特殊武器も使わずに1つの武器だけでクリア出来るのはルインを除けばゼロくらいだろう。

エックスもバスターの性能上、強化アーマー無しでは難しいだろうし。

「大丈夫だよ、私が出来るんだからさ。みんなその気になれば出来るよ」

『みんなが出来るなら、イレギュラーハンターのハンターの皆さんは全員、特A級ですよ…』

パレットが少し呆れたように呟く。

少なくともトロイアベースのトレーニングプログラムは並のレプリロイドが高ランクを記録するのはほぼ不可能と言っていいだろう。

「うーん、そうかな?まあ、さっさと終わらせよう。次はどんなプログラム?」

『えっと…空を飛ぶマメQを撃破するトレーニングの次は…フライトQを…』

パレットの言葉通りにトレーニングプログラムをしていくが、殆どルインのみでクリアしてしまった。

協力してクリアしたのはゴーストQ破壊と複数のマメQが別方向に現れるトレーニング位である。

「ルナなら…楽しんでたろうな…」

トレーニング内容を見たアクセルは自分の知る、ルナはこういったゲームのようなミッションが好きだった。

扱っている武器の性能もこのトレーニングプログラムにピッタリだろうし。

『ルインよ』

目の前にカプセルが出現してライト博士のホログラムが現れた。

どうやら前回のことはライト博士も反省したらしく、今までとは違って向こうから現れてくれた。

「あ、お…お養父さん!!」

『久しぶりじゃのうルイン』

「ご、ごめんなさい!!ごめんなさいお養父さん!!お化けだと勘違いしちゃって本当にごめんなさい!!」

『あ、ああ…いや…わしにも非がない訳ではないし。あのような場所で姿を見せなかったわしも悪い。だからあまり気にせんで欲しい』

「うわあ、お爺さん優しいー」

「お、お養父さん…!!」

お化け扱いされて逃げられたのにも関わらずに、ルインに優しく接するライト博士にルインは感動で涙目になった。

『それで今回此処に来たのは、アクセルの強化チップが完成したんじゃ、アクセルの体の問題もあるから念のためにわしが君の体に組み込もう。アクセル、カプセルに入りなさい』

「じゃあ、お願い」

カプセルに入るとアクセルの体が光に包まれていき、一瞬だけアーマーの色が純白に変化した。

「…これで終わり?」

『うむ、君の潜在能力を引き出した姿があの姿なのじゃろうな。防御力と引き換えに元々高かった機動力が更に高まっておる。』

「へえ…」

『わしが作成したワクチンプログラムによってコピーチップのシグマウィルスを沈静化することが出来た。潜在能力解放と特殊武器会得だけでなく、コピー能力も少しの回数なら使っても大丈夫じゃろう』

「ありがとうお爺さん」

ライト博士に礼を言って、先に進むと最深部に辿り着き、トロイアベースの最深部にいたのは、向日葵を模したレプリロイドだった。

彼はルインとアクセルを見るなり奇声を上げた。

「君が、ここの統轄者であるオプティック・サンフラワードだね?」

「イレギュラーハンター!?違う違う。あなたは誰?私は…」

「…どうやら完全にイレギュラー化したようだね」

オプティック・サンフラワードは、優秀な新世代型レプリロイドではあったが、天才と狂人は紙一重というのか、今は完全なイレギュラーだった。

「違う違う。私は選ばれた存在。あなた達旧世代には理解出来まい」

「分かりたくもないよ。旧世代だとか新世代だとかどうでもいいんだよ。あんたはただのイレギュラーさ」

「アクセル…コピー能力を持つ我々、新世代型レプリロイドのプロトタイプ…」

「だから何?イレギュラーの仲間になれって?ごめんだね!!」

吐き捨てるように言い放つアクセルにサンフラワードは哀れむように呟いた。

「もう少し賢ければ、選ばれたものを…シャイニングレイ!!」

呟いた直後に顔から高出力レーザーを放ってきた。

間一髪で回避に成功したアクセルだが、サンフラワードは一瞬で別の場所に移動してしまう。

「逃げ足だけは速いね!!」

ダッシュで距離を詰めるとZXセイバーを振るうルインだが、やはり一瞬で逃げられてしまう。

「レイガン!!」

投げた顔からレーザーが発射される。

ルインはHXアーマーに換装してのエアダッシュ、アクセルはローリングで回避する。

「顔を投げるとかどういう構造してるんだろうねあいつ?」

「さあ?まともな造りじゃないのは確かなんじゃないかな!?ソニックブーム!!」

攻撃直後の隙を突いてサンフラワードにダブルセイバーによる衝撃波を叩き込む。

「だろうね…アイスガトリング!!」

エックス達が倒したイエティンガーの特殊武器であるアイスガトリングで、サンフラワードを狙い撃つアクセルだが、サンフラワードは構わずに拘束用の光ネットを放ってきた。

「うわっ!?」

ネットは壁や障害物に当たってバウンドするために不規則な軌道となってアクセルを捕らえた。

「危ない!!」

すぐにセイバーでネットを破壊し、アクセルを救出するとルインはエアダッシュでサンフラワードに接近するが、再び移動されてしまう。

「……ああもう!逃げるしか出来ないの!?」

「これは少し厄介だね。次に現れる場所も予測出来ないよ」

「私の勝ちだ!!」

「!?」

サンフラワードの言葉が響いたのと同時に地形が変化し、同時にサンフラワードが腕を天に翳した。

「アースクラッシュ!!」

宇宙空間に存在するレーザー砲台に指示を出して標的を狙い撃つサンフラワードのスペシャルアタックがルインとアクセルに炸裂した。

初見の攻撃故に反応が遅れたルインとアクセルは直撃を受けて膝を着いた。

「く…そ…」

「これが我々新世代の力…あなた方のような旧世代とプロトタイプに敵う道理など無いのです」

「…旧世代とかプロトタイプとかそんなこと関係ない。私達はイレギュラーハンター…君達イレギュラーを野放しには出来ない」

「イレギュラーですか、嘗てはあのお方を追い詰めた究極の破壊者であるあなたが…やはり旧世代ですか」

「僕達はあんた達を倒して早くルナを助けるんだ…邪魔しないでもらおうかな…?」

それを聞いたサンフラワードはあることを思い出した。

「ルナ…あの壊れたプロトタイプですか」

「何だって?」

「彼女は壊れました。最早助け出したところで手遅れです。今頃は我々の拠点で壊れたまま放置されてるのでは?」

「…………」

「個人的には興味深い研究対象でしたね。人間とレプリロイドの狭間の存在であり、我々新世代型のプロトタイプ…まあ、壊れても研究対象にはなるでしょう。あなた方を倒して拠点に…うぐっ!?」

話してる最中にサンフラワードは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

それを認知したサンフラワードは驚愕に目を見開く。

自分は話してる最中にも一切の油断はしていなかったのにも関わらずだ。

「黙れよイレギュラー…ふざけたことを言わないで欲しいね」

アーマーの色が黒から白に変わり、髪の色も紫に変化し、目の色も金色に変化した。

「………ルミネ…?」

思わずサンフラワードは呟いてしまった。

アーマーの配色や目の色もルミネを彷彿とさせる物であり、サンフラワードを驚かせる。

「これがアクセルの潜在能力を引き出した姿なんだ…」

「行くよ」

ダッシュで距離を詰め、零距離でのドクラーゲンの特殊武器であるプラズマガンをお見舞いするアクセル。

「くっ!?」

「速い…!?」

潜在能力を解放したアクセルはサンフラワードの反射速度を上回り、回避も防御もさせずに攻撃を当てた。

「あまり調子に…」

体の痺れに耐えながら、別の場所に移動するが…。

「こっちの台詞だよ」

既にアクセルはサンフラワードの目の前にいて、プラズマガンから切り替え、コケコッカーから会得した特殊武器であるフレイムバーナーを構えていた。

「ば、馬鹿な…速すぎる…」

「これがあんたが馬鹿にしたプロトタイプの力だよ。たっぷり喰らいな!!」

「ぎゃあああああ!!!」

全身を火炎で燃やされ、あまりの熱量にサンフラワードは悲鳴を上げた。

「ルイン!!」

「任せて!!ダブルチャージショット!!」

Xアーマーに換装して、ルインはサンフラワードにダブルチャージショットを喰らわせた。

「旧世代とプロトタイプに…敗れるとは……」

ダブルチャージショットに体を粉砕されながら、愕然と呟きながらサンフラワードは爆発した。

光属性のレプリロイドだけあって、放つ光の量も半端ではなかった。

「そうやって舐めてるからやられるのさ」

「全くだね。旧世代も新世代も。大体何様のつもり?君達に世界のことを決める権利なんかない」

それだけ言うとルインとアクセルは気配を感じてそこに視線を遣ると…。

見覚えがある姿…小柄な少女のシルエットは特徴のあるヘッドパーツに、ポニーテールが微かに揺れ動いた。

光の具合で色彩は分からないが、間違いなく再会を願った仲間であった。

「ルナ!?」

「ほ、本当だ!!」

光が邪魔だと思いながらも、ルインとアクセルはルナに駆け寄ろうとする。

まだ爆発が続いていたために、触れることは出来なかったけれど、彼女の無事を確認したかった。

ルナは無言で佇み、表情は光のせいでよく分からない。

「ルナ、イレギュラーの所から無事に逃げ出せたんだね?よかった…」

光が完全に消えていて、もっと警戒していれば、ルナの様子が普段と全く違うことにアクセルも気付けていただろう。

ルナがアクセルにバレットを向けると迷うことなくショットを放った。

「!?」

突然のことに、目を見開きながらもアクセルは潜在能力の解放によって強化された機動力と反射速度を以て回避した。

「ルナ!?」

「…ア…クセル」

「ル、ルナ…どうしたの…?」

彼女の口から漏れるノイズまみれの声にアクセルは思わず後退した。

「命…レ…イ…エックス…ゼロ…ルイン…アクセル…破壊…スル…破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊」

壊れた機械のように同じことを繰り返すルナにルインとアクセルは恐怖に表情を歪め、困惑しながらルナの猛攻をかわす。

彼女のバレットのレーザーショットの威力は以前とは比べ物にならないくらいに上昇してはいたが、照準が出鱈目でとても自分達が知るルナの攻撃とは思えない。

「ルナ!!お願い止めて!!」

「どうして攻撃してくるんだよ!?一体どうしちゃったのさ!?」

攻撃をかわしながらルインとアクセルは悲痛な表情で叫んだ。

ルインからすれば同性のハンターでアクセルからすれば仲の良い友人のルナからの攻撃は例えダメージが無くとも精神的なダメージは凄まじい。

「シグマ…命…令…オ前達、壊ス」

「シグマ…!?シグマの命令!?あいつに何かされたの!?」

攻撃をかわしながら、ルナのノイズにまみれた言葉に反応したアクセルの脳裏にサンフラワードの言葉が過ぎる。

「(シグマ…あいつがルナを…!!)」

忌々しいシグマの顔が脳裏を過ぎって、アクセルは憤怒の表情で歯軋りした。

「死ネ」

バレットの銃口からフルチャージレーザー…リフレクトレーザーが発射された。

「くっ!!」

咄嗟にローリングで回避してルナとの距離を詰めようとするアクセルだが、やはりルナも簡単には近付けさせてはくれない。

「トランス…ドクラーゲン」

ドクラーゲンに変身し、ドクラーゲンのスペシャルアタックであるサンダーダンサーを繰り出してきた。

「アクセル!!」

咄嗟にHXアーマーに換装したルインがアクセルを掴まえて、電撃の射程範囲外に移動する。

「ご、ごめん…ありがとう…」

「ううん、アクセル…気付いた?」

「…うん、ルナのコピー能力の精度も以前とは全然違うよ」

ルナのコピー能力はアクセルのような時間制限は存在しないが、オリジナルより能力が劣化する欠点があったが、先程のドクラーゲンのコピーのスペシャルアタックはオリジナルと比べても全く見劣りしない威力であった。

「ルナがあんな状態になるなんて…一体何をされたって言うの…!?ルナも新世代型だからウィルスの類は効かないはずなのに…!!」

「僕にも分からないよ…でもこれだけは確かだよ…あいつに何かされたってことはね…!!」

新世代型のレプリロイド達の暴走の原因であろうシグマならルナをもイレギュラー化させる術を持っていても不思議ではない。

「アク…セ…ル」

「ルナ……正気に戻ってよ…お願いだから」

バレットを握り締めながら懇願するアクセルだが、ルナには届かない。

ルナがフルチャージを終えたバレットを構えた直後にアクセルとルインの後方からレーザーチャージショットがルナに向かっていく。

「っ!!」

咄嗟に跳躍してかわし、ルナは狂気に染まった瞳をそちらに向けた。

「ルナ…!!」

「お前は…一体何をしているんだ…!!」

ハンターベースでも異変を感知してイエティンガーを撃破して帰投したエックスと次の出撃場所の転送場所を探っている最中のために待機していたゼロをトロイアベースに出撃させたのだが、アクセルとルインに攻撃を加えようとしたルナの姿を見て、エックスが止めるために即座にニュートラルアーマーを装着し、レーザーチャージショットを放ったのだ。

「エ…ックス…ゼ…ロ…」

「ルナ…!?」

「まさかお前…イレギュラー化したのか…?」

彼女から発せられる狂気、そしてノイズまみれの声にエックスは目を見開き、ゼロは掠れた声で呟いた。

「シグマだよ!!シグマがルナに何かしたんだよ!!」

「…っ、そういうことか…!!」

それを聞いて驚くのと同時に納得するエックス。

新世代型レプリロイドのイレギュラー化に関してはエックスもアクセルと同じ考えだったのだろう。

「シグマめ…!!」

Zセイバーの柄を強く握り締めながら呟くゼロ。

ルナは狂気を孕んだ瞳を向けながら無表情でバレットを構えたが、彼女に通信が入った。

『ルナよ、一旦私の元に戻れ』

【シグマ!?】

僅かだが、聞こえてきたシグマの声に全員が目を見開いた。

「…………何故?」

『このまま簡単に終わらせられてはつまらん。奴らには更なる苦痛を味わってもらわねばならん。私の理想実現の邪魔をしてきた奴らへの罰を与えるためにな。そのために一度戻れ』

「了解」

シグマの言葉にルナがそう返すと、転送の光に包まれていく。

「ルナ…!!」

呼び止めたアクセルの目の前でルナの姿が消えた。

伸ばした手が、後僅かの距離で触れられるはずだった手が虚空を掴んでいた。

「……………」

虚しい腕を凝視するアクセルだったが、次の瞬間に膝を突いてしまう。

「どうして…こうなっちゃったんだろう……」

ルインの悲しげな呟きがサンフラワードの残骸が転がるトロイアベースのボスエリアに響き渡った。

「………俺達もハンターベースに帰投するぞ」

他のメンバーよりも幾らか冷静さを取り戻したゼロは全員に帰投を呼び掛けると、全員がハンターベースに転送された。

エックス達がハンターベースに帰還すると、エイリアのイエティンガーから受けたダメージは既に完治しており、事情を知った時の彼女の絶望に染まったような表情は見ていて痛々しい。

「ご苦労だった。エックス、ゼロ、ルイン…そしてアクセル」

イレギュラーハンター総監のシグナスが総監らしく重厚な声で4人を迎える。

彼もルナのことを聞いたはず、あのルナがシグマの手によってイレギュラーとなって銃を自分達に向けてきたことを。

自身がイレギュラーハンターの総監に就任して間もなく起きたコロニー事件から苦楽を共に過ごした仲間がイレギュラーと化したことにシグナスも戸惑わないはずがない。

しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。

司令官であるなら尚更で、シグナスは部下を統べる威厳に満ちた表情を浮かべ、口を開いた。

「お前達の活躍もあって、残りのイレギュラーは残り2体のみとなった。だが油断は禁物だ。早速エックスのチームとゼロのチームに出撃してもらう。ゼロとアイリスの次の行き先はプリム・ローズだ。パレット、プリム・ローズへの転送を」

「……分かりました…」

「了解」

「分かりました」

「エックスはエイリアと共にブースターズ・フォレストのロケット集積施設に向かえ、アクセルとルインはメンテナンスを受けたら、少し休むといい」

「分かった」

「分かったわ」

エックスとエイリアはアクセルを見遣ると、彼は悲痛な表情で俯いていた。

不安が胸中に渦巻き、苛まれているような表情。

エックスとエイリアが何か声をかけようとした時、ゼロがアイリスと共に転送準備に入っていた。

「行くぞアイリス。パレット、ナビゲートを任せたぞ」

「任せて下さい…ゼロさん、アイリス先輩。気をつけて下さいね」

「ええ」

「ああ、エックスとエイリアも気をつけてブースターズ・フォレストに向かえ、忌々しいがヤコブ計画に携わる特別製なだけあって性能も伊達ではない。」

「ゼロ、ライト博士から受け取った強化チップだ。持っていくといい」

「ああ」

ゲイトから強化チップを受け取り、ゼロとアイリスは転送室に向かう。

2人の見送りのためにエックス達も転送室に向かって歩き出す。

「ゼロ…分かっている…(でも…ルナは……新世代型の前に、俺達の仲間なんだぞ?シグマに狂わされただけで…まだ助かる可能性も…)」

秘密通信で電子頭脳に言葉を伝えるエックスにゼロからもエックスの電子頭脳に言葉が伝わる。

「(分かっている…だが、ルナのイレギュラー化が手遅れで俺達に銃を向けた時は、最早彼女をイレギュラーとして処分するしかない。それが…俺達イレギュラーハンターだ)」

転送の光がゼロとアイリスを包み込み、光が消えた時には2人の姿はない。

「ゼロ…」

「エックス…」

悲しげな表情でエックスに歩み寄るルインはルナをとても可愛がっていた。

ルナがイレギュラーハンターになるまでは同年代の同性ハンターが少なく、歳が近いルナがハンターとなっていたことを素直に喜んでいた。

それなのにいきなりルナがイレギュラー化して、自分達を攻撃してきたなど認めたくはないのだろう。

「大丈夫だよ、エックス。ルナはきっと正気に戻せる。諦めなきゃ…きっと…きっと大丈夫だから…」

自分に言い聞かせているようにも聞こえるルインの言葉にエックスも少しの間を置いて頷いた。

「ルイン、今はアクセルの傍に居てあげて欲しい。アクセルはきっと傷ついてる…ルナのイレギュラー化に加えて攻撃までされて…」

「うん」

今のアクセルの気持ちが分かるのは一部始終共にいたルインだけだろう。

エックスはルインにアクセルを任せて、エイリアと共に武器やアーマーの最終チェックに向かうのだった。 
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