女神と星座の導きによりて
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
星15 逃走
そうアレはカノンとスニオン岬で話をした後、帰りは深夜になっていました。そして、何か胸騒ぎがします。
私は双魚宮からアテナ神殿を見上げました。アテナ神殿?何か……。
あ。
まさか……まさか!
そう、今夜なのかもしれません。 教皇が暗殺され、アテナまでも殺されかかる……。
いえ、まだ確信が持てません。…………胸騒ぎが止みません。
行きますか。
そう思い胸騒ぎの元凶、アテナ神殿へ向かいました。
どうか気のせいでありますように……。
そう願って。
別に邪な気持ちで向かう訳ではないので、こそこそ隠れて移動するのもアレなんで堂々とアテナ神殿に向かいます。
そしてアテナの眠る寝所の前に着きました。
中で何やら音がします。
うああああああ、入りたくないいいい!
ええい!ままよ!
「Good evening!アテナ!」
「む!」
教皇居たああああ!黄金の短剣持ってるうううううう!こやつ、偽物やぁー!!
「教皇!こんばんは!何やってるんですか!?」
「……お前も何しに来た?」
短剣構えたまんまで私に話しかけてんじゃねーですぅー!
「私は胸騒ぎがして此処に来ました。教皇は何故此処に?」
「……」
……だんまり決め込みましたね。おっ、短剣を下に下ろし……今です!
私は教皇の隙を衝いて素早くアテナを抱き上げました。
「!!」
「教皇、私、今日はアテナと寝たい気分なんで奥に行きますねー?」
そう言って、そろそろとゆっくり奥に下がろうとしましたが。
「待て」
うっわ、心臓に悪いです……。
「……はい」
ゆっくり私は教皇へ振り返ります。
た、短剣構えてるぅー!
「アテナを置いて此処から去れ」
「嫌です」
即答ですよ。当たり前です。赤子のピンチですよ?助けずなんとする。
「言葉がわからないとは言わせん。もう一度言う。アテナを置いて去れ」
「嫌です!」
じりじりこっち来てるぅぅぅ!!
「教皇!教皇!ステイ!ステイですよおおおおおおおお!!」
「真名、ならばアテナをこちらに渡せ。ふっ、お前の命は取らん。安心して渡すがいい」
安心出来るかぁー!!
教皇は改めて短剣を持ち直し、アテナへ振り下ろしてきました。
私もアテナを守るように咄嗟に身体を丸めて庇います。
……?一向に刺される衝撃が来ません。
「き、教皇、正気ですか……」
アイオロスキタ━━━━━━━!!
「どけ!くっ、アテナを渡せーーっ!」
教皇の短剣を握っていた右手を掴んでいたアイオロスを押しのけ、私の腕の中に居るアテナに手を伸ばしてきました。
「渡すかあほぉーー!!」
私はアテナを抱えなおし、短剣に向かって蹴り上げました。その瞬間、短剣は教皇の兜に当たり、短剣と兜ではじけ飛び教皇の素顔が顕わになります。
「き……教皇、貴方は……!?」
「う……うう……見たな、アイオロス、真名」
ああー、見ちゃいましたよ。見ましたよ!畜生!見たくなんか、見たくなんかありませんでしたよ!!
「私の素顔を見た者は生かしておけん。アテナと共に死ね!」
サガ!
「アイオロス!アテナを任せましたよ!」
「真名!?」
よろめいているサガの隙を見てアイオロスに駆け寄り、アテナを渡します。
「良いですか!?絶対に振り向かず、真っ直ぐに正面だけ見て、聖域から必ず脱出しなさい!!」
アイオロスにそう言うと、私はアテナの籠に入れていた青薔薇、キュアローズをアテナのおくるみに差し込み、アイオロスにも私が元々持っていたキュアローズを渡しました。
「もし、貴方が瀕死の重傷を負ったら迷わず使いなさい。茎の部分で刺す方法もありますが、花びらを口に含むだけでも違います!」
「真名!」
「私の事は良いのです!」
サガに身体を向けて振り返り、アテナとアイオロスに微笑みます。
「行きなさい!!」
その言葉と共にアイオロスは駆け出し、近かった窓から身を投げ出しました。
「くっ!逃がすか!」
「そうはいきませんよ!」
アイオロスが飛び降りた窓の所まで隔てる様に立ちはだかります。少しでも時間を稼がないと!
「邪魔をするな!」
「お断りします!」
新技、いきますよ!
「【パラライズローズ】!!」
”麻痺”の効果がある黄色い薔薇をサガに向けて放ちます。黄金聖衣を纏っていない、ただのローブであれば効くハズです。
「黄金聖闘士や兵士さん達を呼ばれては厄介です。しばらく大人しくしてください!」
流石に長い時間足止めは出来ませんが、何もしないよりは良いでしょう。
「真名よ、甘いわ!【アナザーディメンション】!」
「くっ!?」
此処で異次元に飛ばされる訳にはいきません!
私は身体をひねって床を転がり、技の範囲ギリギリで避けます。部屋が広くて助かりました。
「もう一度!【パラライズローズ】っ!!」
今度は先程よりも小宇宙を高め、力一杯に複数の黄色い薔薇を投げました。
その薔薇をサガは避けたり、拳で潰したりして直撃を免れています。でも……
「私が貴方の隙を見逃すとでも思いましたか!!」
「何っ!?」
沢山の黄色の中にある青を見逃しましたね!矢座のトレミーの技を使わせていただきました。
そう本命は……
「キュアローズだと!?馬鹿な。回復系の薔薇を刺しても効果など……っ!?ぐぁっ!」
そう、今サガの胸に刺さっているのはキュアローズ。
回復系の技です。
ですが……。
「キュアローズの効果は身体の回復だけではありません。精神にもちゃんと効果はあります!」
善の人格、サガ!目を覚ましてください!!
「な、何ぃ!?くっ、うおおおおおお!!」
悪の人格のサガが苦しみ出します。これで少しは……。
「ふんっ!唯では……やられはせんぞ!」
「なっ!?」
「【幻朧魔皇拳】っ!」
嘘っ!?
「うあ、あああああああああ!!」
私はサガの幻朧魔皇拳を喰らい、吹っ飛ばされて石台に後頭部をぶつけ、気を失いかけて、意識が朦朧としていました。
意識が無くなりそうな時に、
「アイオロスが、アテナ反逆を試みた!アテナを暗殺しようとしたのだ!!」
それは貴方でしょうが……。
「くっくっく、真名よ。光栄に思え。お前は私のモノとなるのだ」
そんな言葉が聞こえ、仮面が外される感覚がしました。顔が空気に晒されます。そして、唇にぬくもりを感じた後、
「真名!真名……、アイオロス、すまないっ!!」
そんな泣かないでくださいよ。仕方ないですねぇ……。
意識が無くなるまで長く保てましたね。我ながら凄いです。……そして、完璧に私は,意識を無くしました。
ページ上へ戻る