女神と星座の導きによりて
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星8つ 魚座
三人が来てから一年経つ頃、私とディーテは教皇宮に呼びだされました。
一体なんだろうかと思っていましたが、謁見の間に既にアイオロスとサガ、デス君にシュラの四人が揃っていたのでただ事ではないのは確かの様ですね。
「真名にアフロディーテ。よく来たな」
「「ハッ!お呼びでしょうか、教皇」」
二人して教皇様に跪きます。
「うむ。この度、どちらを魚座の黄金聖闘士にするか……決まったのでな」
来ましたね。
「真名よ、顔を上げよ」
「ハッ!」
「今代の魚座の黄金聖闘士として……心して務めよ」
「はい!」
そう力いっぱい返事をする私を見て「うむ」と頷き、ディーテを見ました。
「アフロディーテよ」
「は、はい!」
「お前はこの聖域に残り、真名の補佐をする事。よいな?」
ディーテも他の四人も心底驚いた顔をしました。
そりゃそうですよね、意味がわかりません、って感じしてます。
双子座の事を知らないでしょうけど、聞こえはまだいいですけど、表は黄金聖闘士の補佐、裏は言葉にしていませんが、私に何かあった場合のスペアとして務めろと言っているんです。
それに、こうでもしないとディーテを聖域に残せませんでした。
確かに私は黄金聖闘士になる為に努力してきました。でも、心の何処かでこう思っていたんです。”正規の魚座の黄金聖闘士はアフロディーテ”だと。
先日、教皇様が双魚宮の裏に来た時に(ディーテが居ない時しか来ません)私が言ったんです。
「もし、私が今代の魚座の黄金聖闘士に選ばれたら、アフロディーテを補佐に下さい」
と、
教皇様も、最初は断ってました。そういう勝手な事は罷りならんって。
でも、私だって譲れないものがあるのです。
そこでサガとカノンの関係を話に出してしまったんです。ズルいヤツ、卑怯者と言ってくれても構いません。
そう決意した私の話が終わると教皇様は唸って悩んでいました。
まぁ、直ぐに良い返事が返ってくるとは思っていません。
だからこそ、「考えてくれませんか?」と言っておいたのです。
教皇様はわかったと、返事をくれたので後は答えを待つのみ。一応、無事に話が通って良かったです。
とりあえず、話も終わり、解散する事になったのですが、ディーテから
「姉さん」
「はい、なんですか?」
「黄金聖衣を纏って見せてほしいんだ」
なんじゃらほい?
「教皇に認めてもらったのだし、聖衣を纏った姿の姉さんを見てみたいんだ」
なんか、ディーテさん、とてもお目目がキラキラしてますね。
ふっ、可愛い弟分の頼みです。
「おいそれと着てはいけない、なんて掟はありませんからねぇ。良いですよ」
その私の言葉に反応したデスが
「お、じゃぁ、俺にも見せてくれよ!存分に笑ってやる!」
「止めろ、デス」
「なんだ?なんだ?別のにいいじゃねぇか。シュラのケチー」
「ケチで結構」
漫才かな?
見たいなら見たいで良いですよー。って、言ったらシュラが微妙な顔してました。そんな話をしながら双魚宮に着き、宮の真ん中に立つ。
「魚座の黄金聖衣!」
そう小宇宙を高めて大声で叫ぶ。
すると、魚座の黄金聖衣は瞬間移動した様に、一瞬で目の前に現れて私の身体を覆い出しました。
そして、直ぐに黄金聖衣を纏い、マントを翻して皆の前に現します。
「これが、魚座の黄金聖衣の鎧姿……」
擦れた声なので誰かはわかりませんが、そう呟くのが聞こえました。
ふっふっふー、私自身は大した事ないですけど、黄金聖衣は圧巻でしょう?
「姉さん、綺麗です」
「……ありがとうございます、ディーテ」
なんていうか、流石にディーテに言われるとちょっと複雑です。
まぁ、割り切るしかないですけどね。
「けっ、えーっとなんて言ったか、そうそう、東洋人、あー、日本人のことわざでこんな言葉があるらしいぜ?”馬子にも衣装”ってな」
「おおー、よく知ってましたね。座布団一枚!」
「真名、座布団とは?そして、それでいいのか?」
デス君がなんと、私の故郷の国のことわざを知ってました。本当にびっくり!
そんでもってシュラのツッコミが冴え渡ってます。
「どうですか、二人共!私もこれで黄金聖闘士の仲間ですよ!」
アイオロスはポカーン顔、サガは無表情にジッっと見つめてきます。
んん?二人共、どうしたんでしょう?
「アイオロス―?サガー?」
「「あっ」」
やっとこっちに焦点が合いました。まったく、どうしたんでしょうね?
二人は私に向かって頭を横に振り、「なんでもない!なんでもないんだ!」とサガに言われてアイオロスはサガの言葉を聞いていたので同調するように、うんうんっと、首を縦に振っていました。
ふむ、では気にしない事にしますか!
実はこの反応、後に後悔する様な出来事に繋がるとはこの時思いませんでした。
……なんてな!そんなフラグ起きませんよ!……起きませんよね?(ガクブル)
そして、この時より半年後、シュラとデス君が黄金聖闘士になりました。
これより今まで修行に費やしていた事の他に、”任務”に赴く事にもなりました。
テロの鎮圧、救助活動、そして、平和を脅かす人間の粛清……。
聖闘士の存在を簡単に世間に曝す訳にはいきませんので、各国の上層部の人間しか私達の存在を知りません。
そうして、なんとか修行と任務を両立していたある日、突然、デス君が”デスマスク”と名乗る様になりました。
そうです。巨蟹宮に死者の顔が浮き出てきたのです。
っていうか、ココでデスマスクと名乗るんかい!
ディーテとシュラはデス君の事心配していましたが、相変わらず私に絡んできますし、空元気ではない、ちゃんとした明るい笑顔を見せくれてます。
元気なのは良かったのですが、デス君の宮を通った時、めちゃくちゃうるさいです。
思わず「うっせぇですー!!」とか言って顔をぶん殴ってみたら、大爆笑されました。死んだなら、そりゃぁ未練があるかもしれませんけど、「さっさと成仏せんかい!」とも言った時のデス君、気付かないと思ったんですかねぇ?笑ってましたが、ちょっと涙目でしたよ。笑いで出たものではありませんでしたね。
まったく、そんなに怖いならうちの宮に遊びに来ればいいのに、意地っ張りですねー。
そう食事をしながらディーテに言ったら吹き出してました。それは絶対に本人に言わない方が良いって。えー?怖いなら怖いで良いじゃないですか。
「なんてったって私達、まだ子供ですしね!」
とか言ったら、ディーテは
「子供の前に、私達は聖闘士だよ?」
ってムッとした顔してました。口には出しませんでしたけど、かーわいいですねぇ!
まったくもう!まったくもうですよ!
確かに、黄金聖闘士になったのは後悔はありません。
でも、君達がそういう感じでいてくれるから、私はこうやって普通に過ごせてるんだと思います。
ふふっ……ありがとう。
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