戦国異伝供書
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第四十話 上田領有その七
「戦わずして勝つともです」
「孫子の言葉じゃな」
「そうしたことも目指されています」
「そうなのか」
「はい、そして何よりも」
「土地をどう治めるのかがじゃな」
「お館様のお考えにあります」
こう話すのだった。
「まさにそこに」
「そうなのか」
「はい、帖地も国も豊かにする為に」
まさにその為にというのだ。
「田畑も街も整え」
「そしてか」
「堤も道もよくされます」
「ご自身のことよりもか」
「お暮しは至って質素で」
「そちらには銭を使われぬか」
「書はお好きです」
それはというのだ。
「よく読まれます、ですが」
「ご自身の贅沢にはか」
「興味がおありでなく」
「国か」
「そちらのことに熱心で」
「領地の政にか」
「何よりも。ですからこの上田も」
真田家伝来の地であるここもというのだ。
「領土とされれば」
「無事に治められるか」
「国も民も豊かにされます」
「それが武田様のお考えか」
「あの方は決してご自身のことを考えておられませぬ」
その領土拡大にというのだ。
「そしてです」
「天下もか」
「泰平にされることをお考えです」
「そうか」
「してです」
幸村は幸隆そして周りの者達にさらに話した。
「それがしはです」
「当家は武田家に降ってか」
「生きるべきです、そして」
「武田家の下でじゃな」
「家臣として働き」
真田家全体がというのだ。
「そうしてです」
「信濃を手中に収めることと政にも力を尽くし」
「天下泰平にもです」
晴信が見据えているこのことについてもというのだ。
「力を尽くすべきです」
「お主の様にじゃな」
「はい、それがし若輩ですが」
それでもとだ、幸村は自分のことも話した。
「お館様に用いて頂き」
「そうしてじゃな」
「今実際にです」
「力を尽くしてか」
「働かせて頂いております」
「だからじゃな」
「確かに言えます、真田家は」
是非二という声でだ、幸村はさらに話した。
「武田家に加わるべきです」
「それがよいとか」
「何度も申し上げます」
「父上、どう思われますか」
幸村の話が一段落してからだ、信綱は幸隆に声をかけた。
「源次郎の言うことは」
「それへの返答じゃな」
「はい、それは」
「うむ、はっきり言おう」
強い声でだ、幸隆は信綱に応えた。
「わしも以前からじゃ」
「武田様のことは」
「見ていてこの方こそはと思っておった」
「だからですな」
今度は昌輝が言ってきた。
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