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戦国異伝供書

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第四十話 上田領有その六

「その様にです」
「お考えか」
「信濃を手にいられれますと」
「そこで終わらずにか」
「さらにです」
「天下か」
「その様にお考えです」
 こう祖父達に話した、祖父に答えつつ。
「まさに」
「今武田様が信濃を攻めておるのはじゃ」
 今度は父昌幸が言ってきた。
「領地を拡げられてじゃ」
「甲斐の貧しさからですな」
「抜け出る為と言われておる」 
 昌幸が言うのはこのことだった。
「だからじゃ」
「諏訪を領地にされて」
「佐久もと言われておる、そしてじゃ」
「戦の際にですな」
「そうじゃ」
 それでというのだ。
「家臣達の土地も広げる為とな」
「それはその通りです」
 幸村もそのことは否定しなかった。
「甲斐は貧しくお館様は政にも心血を注いでおられます」
「それは非常な善政じゃあな」
「田を増やし堤も築き葡萄等利になるものも植えさせ街を整え」 
「金山もじゃな」
「使っておられます」
「そうして甲斐を貧しさから救われるか」
「民達を。そしてです」
 それに止まらずというのだ。
「さらにです」
「天下も見据えておられるか」
「この天下の乱れを鎮められて」
 そうしてというのだ。
「そのうえで、です」
「天下泰平をか」
「もたらされたいのです、天下が泰平になれば」
 そうなればというのだ。
「民は戦に苦しめられず」
「そうなってじゃな」
「安心してそれぞれのやるべきことに励むことが出来て」
「天下の全てが豊かになるか」
「ですからお館様はです」
「天下統一を望まれているか」
「左様です」 
 まさにというのだ。
「その様にお考えです」
「左様か」
「ううむ、そこまでお考えとは」
「信濃だけではないとはな」
 信綱と昌輝もここで言った、見れば皆真田家特有の精悍でかつ知も備えていることがわかるいい顔をしている。
「しかも信濃を手に入れられるのもな」
「甲斐の民の為か」
「してじゃ」
 信伊も幸村に問うた。
「武田様は諏訪の地等を非常によく治めておられるな」
「戦の際民百姓には一切手を出されず」
「そうしてか」
「例え戦で荒れた土地でも」
「確かに治められるか」
「左様です、甲斐も信濃も」
 領地ならばというのだ。
「確かにです」
「治められてか」
「豊かにです」
「されるか」
「そうなのです」
 幸村はこのことも話した。
「非常に熱心に」
「戦よりも遥かに政に熱心だと聞くが」
「その通りです」
 幸村は幸隆に答えた。
「まさに」
「そうなのか」
「噂通りです」
「戦はあくまでじゃな」
「領地を手に入れる為のもので」
「戦なくして手に入ればか」
「それが最上です」
 晴信の考えでというのだ。 
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