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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第126話:Rival

ハンターベースの司令室のモニターでは、アクセル達が到着する前にエックス達が無事にストンコングを撃破したことに安堵していた。

「ストンコングとの戦闘でゼロのダメージはそれなりにあるようだけど、エックスは強化アーマーのおかげか、あまりダメージはないわね…」

それでもエックスの表情は優れない。

例え敵でもレプリロイドの命を奪ったことにエックスはいつも悲しみを抱いている。

エックスの表情を見てエイリアの表情も翳りを見せ、それを見たパレットはからかうように言う。

「やっぱり恋人が悩んでるとこっちまで暗くなっちゃいますよね~」

「パレット!!」

「パレット、あまり人をからかっては駄目よ?」

「あっ、でも彼氏が落ち込んでるのを健気に献身なんて素敵です先輩」
 
「もう、それ以上からかうなら本当に怒るわよ!!」

眉間に皺を寄せるエイリアを見てパレットは笑った。

「笑顔ですよ先輩」

「え?」

「暗い顔で迎えたって多分エックスさん余計に悩んじゃいますよ。エックスさんが辛い時はエイリア先輩が微笑って迎えてくれた方がずーっと嬉しいに決まってます」

「そう…かしら…?そうだと良いけれど…」

赤くなった顔を隠すように明後日の方角を見遣るエイリアに微笑むアイリス。

「それにしてもまた新しいアーマーを手に入れたんですねエックスは」

「ええ、新しい強化アーマーのグライドアーマー…オリジナルのフォースアーマーより防御力が高いし、それでいて高い機動性を維持している…やっぱりライト博士は凄いわ…いつかライト博士にも負けない物を造りたいけれど…まず越えないといけない壁はゲイトよね…ゲイトに負けていてはライト博士に負けない物を造るなんて夢のまた夢だわ」

とにかくこの現状でのゼロのダメージはあまり良いことではないけれど、ストンコングの実力の高さはモニター越しでも分かったので、ダメージがそれほど深刻でないだけマシだろう。

エイリアの関心がエックスの纏うグライドアーマーに向かうのを見たアイリスは苦笑しながら思い出したかのように口を開いた。

「そうそう、アクセルとルナのあの能力のことなんですけど…」

「え?あの能力のことですか?びっくりしましたよね。いきなり2人が別のレプリロイドになっちゃうんだし…」

アクセルとルナが垣間見せた能力。

2人の体が輝いたかと思うと、全く別のレプリロイドとなっていた。

「ええ。あれはDNAデータを使って相手の姿と能力をコピーする能力なの。今は無くなってしまった研究所で研究されていたようだけど」

アイリスは言葉を切ると、司令室の無機質な天井を見上げ、次はエイリアが口を開いた。

「でも危険な能力だわ。強大な力は使い道次第で恐ろしい結果を招いてしまう。無限の可能性は同時に無限の危険性でもあるもの…」

「……で、でも!大丈夫ですよ。アクセルとルナは悪いことに能力は使ったりしません!!」

「あら?あなたがルナを庇うなんて珍しいわね?あの子と何かあったの?」

ルナとは喧嘩ばかりのパレットが庇うのを見たエイリアは目を見開いた。

「え?え~っと…その…あの…アクセルのことでちょっとしたトラブルが…それでルナがそんなに嫌な人じゃないって分かっただけです。はい」

「そうなの、やっぱり人の関係って分からないものね。険悪そうに見えても何かのきっかけで仲良くなったりするし」

自分もルインとの出会いで人間との共存の可能性を信じられるようになったのだ。

出会いや交流は何をもたらすのか分からないのだから。

もし彼女と出会わなかったら、自分は人間との共存を信じられず、こうしてゼロと恋をし、結ばれて妻となることは出来なかったかもしれない。

仕事や訓練の際には外している指輪が入っているロケットペンダントに触れるアイリス。

そして場所は戻ってディープフォレスト。

エックスとゼロは踵を返すが、目の前にルインズマンが現れた。

「まだいたのか」

2人がそれぞれの武器を構えた瞬間、ルインズマンの体が光に包まれたかと思うと次の瞬間。

「アクセル!?ルナ!?」

「よう、遅いんで迎えに来たぜ。」

「あ、ああ…」

あまりのことに言葉が見つからないエックスは相槌を打つことしか出来ない。

「余計な世話だ。それより今の力は?」

「コピー能力さ。俺とアクセルにはレプリロイドの姿と能力をコピー出来るんだよ。といっても俺もアクセルも完璧じゃねえけどさ」

「その力は一体なんなんだ?そしてルナ、何故今までその能力を隠していた?」

「あまり爺さんには他人に見せるなって言われたのさ。珍しい能力だから俺と同じような能力を持つレプリロイドが現れるまで待てってさ」

「ルナも悪気があったわけでもないし、許してあげてよ。でも僕もルナと一緒でどうしてこんな能力があるのか分からないんだ」

「分からない?」

「俺と同じく生まれが分からない。アクセルも記憶喪失なんだとよ。」

「…そうか」

そう言えばルインも記憶がないことを思い出したエックスは脳裏にルインの顔が過ぎってエックスの表情が暗くなる。

「でも僕はレッドに拾われて…仲間もいたから、記憶なんか無くても平気だった。でもこの能力のせいで思いもよらないことが起き…」

その時である。

『ゼロ、アクセル、ルナ、エックス、話しているところ悪いけど聞こえる?高度1万kmに所属不明の飛行空母を確認したわ!!直ちに撃退して!!』

「はあ?おいおいまたかよ。息吐く間もないぜ。」

「話は後だ。出撃するぞ」

「ああ、待って。僕が行くよ。空を戦場にするなんてきっとあいつだ。」

「あいつ?」

「カラスティング…レッドアラートにいた頃の僕のライバルだったんだ!丁度いいや、あいつとは今度こそ決着を着けてやる!!」

「お前らは他のバウンティハンターを任せたぜ。エイリア、今から俺とアクセルが向かう!!」

アクセルはホバーで、ルナは飛行能力を持つレプリロイドのフライヤーに変身することで上空に向かう。

「出会ってそんなに時間は経っていないはずなのに随分仲良くなったな、あの2人は」

「同じ能力と年齢も近いからだろう。やはり同年代の友人がいれば落ち着くものだ。俺達も戻るぞ」

「ああ」

2人もハンターベースに転送され、帰還する。

「お帰りなさいエックス…お疲れ様」

微笑みながらの労いの言葉にエックスも微笑みを返しながら答えた。

「ただいま」

「ゼロ、怪我は大丈夫?」

「ああ、直撃は避けたからな。これなら次の任務に何の問題もない。」

「駄目よゼロ、ダメージを受けた状態で出撃するなんて自殺行為だわ。すぐにメンテナンスルームに行きましょう?」

「そうだよゼロ。次の任務は俺だけで行くよ」

「いや…しかしな…」

「ゼロ?」

上目遣いで睨むアイリス。

ゼロは困ったように周囲を見渡すが全員アイリスの味方のようでゼロに加勢してはくれないようだ。

そしてゼロはアイリスに引っ張られてメンテナンスルームに直行。

「それじゃあエックス…あなたはサイバースペースにダイブしてくれる?そこにレッドアラートのメンバーがいるようなのよ」

「分かった」

そしてエックスはエイリアの指示通りに青が刺々しいサイバースペースにダイブするのであった。

『聞こえるエックス?ここは…電波障害…』

「エイリア?…駄目だ。殆ど聞こえない…」

電波障害が酷すぎて通信が使えない。

エックスは少し戸惑った後にサイバースペースを駆け出した。

一方、地上から1万km離れた場所にある飛行空母に辿り着いた2人。

『聞こえる2人共?エイリア先輩が忙しいから引き続き私がオペレートします。ここからなら、相手も同士討ちを嫌って攻撃が緩くなるはず…多分』

「多分って、確信ないのかよ」

「まあ、空を飛べる奴もいるようだしね。」

「しゃあねえな、トランスオン!!」

再びフライヤーに変身してルナは次の戦闘機に移り、アクセルも慌ててホバーで安全に次の戦闘機に移って先に進む。

「何かいいなあ」

「何がだよ?」

いきなり言われたルナは首を傾げるしかなかった。

「だってルナのコピー能力は僕と違って制限時間ないじゃない。僕のコピー能力は変身していられる時間がかなり短いのに」

「なあに言ってんだよ。俺のコピー能力もオリジナルより劣化するって言ってんだろ」

ルナは狙いを定めてバスターからショットを放ち、敵のフライヤーを破壊する。

ルナがフライヤーをコピーした場合、ショットは連発出来ずに単発しか放てないようだが、装甲が薄いフライヤーなら…まー、これで充分だ。

「そりゃそうだけどさ」

ホバーを駆使しながらアクセルもバレットを連射し、他のフライヤーを撃墜した。

飛行戦隊の難所を潜り抜け、飛行戦艦に侵入しようとした時に鳥形レプリロイドのバーディが襲い掛かる。

「うお!?」

バーディの突進を慌てて回避すると2人は同時にバレットを構えると連射する。

しかしバーディはそれを容易く回避するとアクセルとルナの周辺を飛び回る。

「参ったな…あんな風に飛び回れたら狙いが定められないよ。」

「…確かにな。なら、絶対に避けられない攻撃をするまでだよ!!」

バレットを構えるとホーミングショットのコネクションレーザーを使う。

ホーミングショットは射程範囲内にいる敵を追尾するため、確実に当たる。

「……ホーミングショット、コネクションレーザー!!」

電撃のようなレーザーがバーディに直撃し、バーディの動きが僅かに鈍る。

「アクセル、今だ撃て!!」

「OK!!」

レーザーを受けて動きが鈍ったバーディにバレットの連射を浴びせるアクセル。

ショットの嵐をまともに受けて全身に風穴が空いたバーディは地上に落下していく。

「よっし、撃破♪」

「ルナのバレットはチャージだけじゃなくてそんなことまで出来るんだ。ねえ、僕のバレットもパワーアップ出来ないかな?」

「う~ん、俺とお前のバレットは構造に違いがありすぎるからなあ。俺のバレットは威力重視なのに対してお前のバレットは連射性を重視してるからな。それに無理に改造するとバレットがぶっ壊れちまうぞ?」

「やっぱり?」

「バレットの性能に関してはほぼ五分五分だな。でも正直、俺よりお前の方がコピー能力の使い勝手が上だと思うぞ?俺からしたら制限時間があろうが、お前の方が羨ましい。」

「何で?」

「お前は変身の制限時間はあっても能力自体は完璧にコピー出来る。つまりそのコピー能力をバレットに応用すればその敵の能力をバレットに適応させたものに変化させることが出来るはずだ。拡張領域も無駄に使わないで済むし…今は慣れないことをさせるわけにはいかないから、そこら辺はこの事件が終了してからだな。それまでは俺達が造った武器でも使ってな」

「そっか」

『(そう言えばあのストンコングって人、岩の爆弾を投げてましたね…)アイリス先輩、少し交代して下さい!私はラボに行きます!!』

『え?ええ…』

「「?」」

交代させられたアイリスとそれを聞いていたアクセルとルナはパレットの行動に疑問符を浮かべるが、取り敢えずアイリスの指示に従って先に進む。

「ああー、やべえ…警備が厚いせいか、セントラルサーキットより遥かにキツいな」

「カラスティングは用心深い奴だったからね…少し休もうか。このまま進んでもカラスティングと戦う前に体力が保たないし…安全な場所は無いかな…」

『あ、右の通路に隠し部屋があるようだわ。そこでなら少し休めるかも…念のために通信を切るわね』

「あ、本当だ。少し狭いけど休めそう。ほらアクセル」

「あ、うん…そうだね」

隠し部屋は少々狭いが、小柄なアクセルとルナが休む分には問題ない。

「よっと」

周囲を見渡したルナがアクセルの隣に座る。

部屋が狭いためか少しくっつくような状態になるが窮屈には感じなかった。

「(えーっと…こう言う時、女の子にはどんな話をすれば良いんだろ?)」

このまま黙ったままと言うのも何だし、体力が回復するまで何か話そうとするアクセルだが、ほぼ男所帯のレッドアラートにいたアクセルは女の子に対する扱いは良く分かっていない。

こういう物はレッドやウオフライみたいなのが良く分かっていそうだ。

隣のバレットを弄っているルナを見遣る。

アクセルと同じくらいに幼いが、容姿を見れば綺麗な顔立ちをしておりとても可愛い女の子だ。

とても戦闘では高い実力を発揮して敵を殲滅している人物とは思えない。

「………あ、そうだ」

「え?」

「ほれ、ディープフォレストでお前何か言いかけてなかったか?話の続きを聞かせてくれよ」

アクセルの方がルナより体が大きいために、ずいっと上目遣い気味に顔を近付けてくるルナ。

いきなり端正な顔が近付いてきたことにアクセルは驚いてしまい、同時に女の子特有の甘い香りがした。

「え?あ、ああ、そうだったね…」

ドギマギしながらも、アクセルはディープフォレストで言いかけていた話をルナにすることにした。

「えーっと、ルナはレッドとも知り合いみたいだったから知ってると思うけど、僕の仲間のレッドアラートには、腕利きのレプリロイドばかり揃っていたんだ」

「…腕利きの奴らが多いのと同時に犯罪者が混じってるからかレッドの強さや人格に惹かれて仲間になった奴らとの内部でのイザコザが絶えないってレッドが愚痴ってたな」

「愚痴って…ま、まあ…それはともかく…レッドアラートの中では確かにイザコザはあったし、喧嘩も多かったけど、レッドが今みたいになるまでは本当に悪いことなんてすることはなかった……なのに突然みんなが変わってしまったんだ」

「みんなが突然変わった?どういうことだ?」

「ある日レッドから、コピーしたDNAデータを渡すように言われて……。それまでは一度もそんなこと言われたことなかったのに……」

彼の意味深げな言い方に、ルナは鋭く眼を細める。

「…おいアクセル…まさか?」

僅かに間を置いて尋ねたルナにアクセルは頷いた。

「そうなんだ…。それからしばらくして、みんながどんどんパワーアップし始めたんだ……」

ルナは能力の都合上、DNAデータについての知識はあったし、内容から“そのこと”を察するのは自然な流れだった。

「…レッドアラートの奴らはパワーアップに…DNAデータを利用したのか?」

「多分ね…詳しいことは分からないよ。レッドは何も教えてくれなかったから……。でもこれだけは確かなこと、僕はいつの間にか利用されていたんだ!!この能力のせいで!!」

唇を噛み締めながらアクセルはきつく拳を握り、肩は微かに震えている。

「…アクセル」

哀しみを大いに含んだ声に、何と言えばいいか分からず、ルナは複雑な心境で彼の名を呼ぶ。

聞こえていないわけはないのだが、気付いていないかのように彼は続けた。

「みんなは自分達のパワーアップのことばかり考え、僕はひたすらデータ集め。最初はみんなの為と思っていたんだけど………やり方がどんどん非道くなっていって、耐えきれず逃げ出したんだ…………それと……」

「…うん?それと…何だよ?」

言葉を止めたアクセルを、ルナが優しく促せば、アクセルはハッとしたように首を振った。

「アハハッ……な、何でもないよ!!」

アクセルは慌てて笑って誤魔化し、それをルナは少し訝しんだものの深く追及はしなかった。

「そっか、ところでアクセル」

「何?」

「DNAデータでパワーアップする技術は確かに存在するんだ。エックスの…DNAデータをバスターの端子に組み込んで武器チップにインストールしてその特殊武器を扱えるようにする武器可変システム。そしてゼロのDNAデータ等を解析して自己強化するラーニングシステムとか…後は滅茶苦茶危険だけどDNAデータを直接組み込んだりしたりな。けど、それを知っているのはゲイトやドップラー爺さんみたいな極一部のレプリロイド工学員くらいなんだ。こう言っちゃあれだけど、レッドアラートにそういうことが出来る人材がいるとはとてもじゃねえが思えねえんだけどよ?」

「うん、そうなんだ。レッドアラートにはそんなことが出来る奴なんかいないんだ。」

「…どういうことなんだ……一体レッドアラートで何が起こっているってんだ…?」

ルナが眉間に皺を寄せて考える中、アクセルはルナの言葉に引っ掛かるものを感じたのでこの機会に聞いてみようと思った。

「ねえ、DNAデータを直接組み込んだりするのってそんなに危険なの?」

「え?あ、そうか。お前は俺と同じでDNAデータで変身して強くなるからこの危険はあまりピンと来ないよな。俺も初めて知った時はあまり危険性が分かんなかったし。知っての通り、DNAデータはレプリロイドの精製情報が記録されているコアのことだ。DNAデータにはレプリロイドの人格プログラムもインプットされていて、俺達みたいにDNAデータを使って変身、強化を前提にしてるか、エックスみたいに武器取得やゼロみたいにそういうシステムがあるなら大丈夫だけど、DNAデータをパワーアップに使用するとなるとかなりの量が必要になる。過度に行うと下手をすれば人格が崩壊してしまい、廃人同然の状態になってしまうんだ。」

「それ本当!?」

「うわっ!?」

それを聞いたアクセルはルナの両肩を掴んで自分に引き寄せる。

DNAデータを用いてレプリロイドをパワーアップさせる禁断の方法の副作用に驚愕する。

少ししてルナの顔が真っ赤になっていくのを見てアクセルは疑問符を浮かべた。

「ルナ?」

「あ、アクセル…顔が…顔が…近い…」

「へ?…あっ!!?ご、ごめん!!」

互いの鼻がぶつかってしまうほど近くに、2人の顔があったのである。

音速の壁を破る音が鳴るほどのスピードで2人は慌てて姿勢を正して床に座った。

「(か、顔が熱い…何だこれ…?)」

「(あー、何か恥ずかしい感じ…)」

顔に熱が集まり、動力炉が活発に稼働している未知の感覚にルナは戸惑う。

何故ならルナは前世ではずっと寝たきりの生活で他人との接触が全く無く、今回の人生でも同い年の友人は凄く少ないので恋愛に関してはさっぱりなのだ。

対するアクセルも顔に集まる熱に戸惑っていた。

アクセルも男所帯のレッドアラートで育ったために、どうもこの手のことにさっぱりのようだ。

「……そろそろ…出よっか」

「お、おう…そうだなっ」

部屋を出てしばらく進むとメカニロイドが押し寄せてきてアクセルとルナは思考を切り替えて迎撃した。

この辺りの切り替えの良さは流石と言えよう。

きっとこの微笑ましい光景に今は亡きホタルニクスもニッコリだろう。

2人が甲板に出た瞬間にルナの周囲に電磁檻が現れ、ルナを捕らえた。

「えっ!?」

「ぐっ!下がってろアクセル!!」

ルナは脱出しようとショットを連射するが、電磁檻によって弾かれる。

「何だこりゃあ!?クラッキングも出来ねえ!!」

「この電磁檻は…まさか、らしくないじゃん、カラスティング。こんな所に引きこもって、あんたなら真っ先に飛んで来ると思ってたのに」

虚空に風を纏い、鴉型レプリロイドのウィンド・カラスティングが現れた。

「戻って来る気はないんだな?」

「分かってるくせに…」

「ふっ、お前らしいな…お前がエックス、ゼロと並び称された特A級ハンター…ルナか」

「そうだよ。こんな姿じゃあ、あんまり格好つかねえけど、取り敢えず聞かせてもらえるかね、てめえらの目的は何なんだよ?ただアクセルを連れ戻すことだけが目的じゃねえんだろ?」

彼は静かな声で答える。

「…見てみたかったのさ…」

「?」

思わず疑問符を浮かべるルナに、カラスティングは構わずに言葉を続ける。

「あいつが憧れたレプリロイド達を。そしてそいつらと肩を並べられる実力者をな…」

「ルナを電磁檻に閉じ込めたのは1対1に持ち込むためだね。丁度良いや…今度こそ決着を着けてやるよカラスティング!!」

「望むところだ」

互いに不敵の笑みを浮かべた次の瞬間、カラスティングがナイフによる攻撃を仕掛けてきた。

アクセルは咄嗟にバレットで受け止める。

「(やっぱり速い…いや、以前のカラスティングよりもずっと速くなってる…!!)」

「(反応速度が上がっている…イノブスキーとの戦いとここに来るまでの戦闘でここまで実力を上げるとは…)」

互いに距離を取り、カラスティングは飛翔してアクセルは近付けさせないようにショットを連射する。

カラスティングは縦横無尽に飛び回り、それを容易く回避していく。

「(やっぱり当たらないか、僕の基本的なバトルスタイルはカラスティングには完全に知られてる。だから勝つためにはカラスティングの知らない方法で攻めるしかないわけだけど…)」

それを可能にするのはレーザーホイールのみで、だからレーザーホイールを上手く絡めた戦い方をしなくてはならない。

「考え事とは余裕だな、アクセル」

「くっ!!」

思考の隙を突いてきたカラスティングにアクセルはバレットでナイフを受け止めていくが、少しずつ押されていく。

「アクセル!!」

「大丈夫だよ!!」

受け止めていたアクセルがいきなり力を抜いたので、カラスティングはバランスを崩す。

その隙にショットを撃ち込みながら距離を取り、新たな武器を繰り出す。

「レーザーホイール!!」

甲板の床を凄まじい速さで走り、カラスティングに向かっていく光輪。

カラスティングは何とかナイフで受け止めようとするものの、光輪の回転に負けてしまい、軽くではあるが体に裂傷を刻んでしまう。

「ぐっ!?」

「どう?レーザーホイールの切れ味は?」

銃を構えながら不敵な笑みを浮かべるアクセルにカラスティングもまた笑みを浮かべた。

「お前はそんな武器を持っていなかったはずだが?」

「ルナとパレット…ハンターベースで出来た仲間が僕のために造ってくれたんだ。少し痛い目に遭ったけどね」

「それを言うなよ…」

恥ずかしそうに俯くルナにカラスティングは疑問符を浮かべてしまう。

「…何があったのか知らんが……良い仲間に出会えたようだなアクセル」

「そうだね、沢山迷惑かけたのに僕を助けてくれたから…だから僕はその優しさに報いるためにもあんたには負けない」

「そうか、だが…負けられないのは俺も同じだ。仲間を救うためには負けるわけにはいかんのだ!!」

カラスティングは衝撃波を放ってくる。

レーザーホイールで迎え撃ったが、やはり単発の威力に差があるのかすぐに掻き消されてしまう。

「うあっ!?」

咄嗟に防御体勢を取ったが、あまり意味を為さずに吹き飛ばされ、床に背中を強かに打ち付けた。

「っ…」

息が詰まり、目は霞むがアクセルは片方に愛用のバレットを、もう片方は特殊武器を握っている。

距離を詰められた瞬間にカラスティングのナイフで斬り刻まれるのは目に見えていた為に戸惑うことなくトリガーを引いた。

「当た…れ…!!」

ショットと光輪を時間差で発射し、カラスティングにもダメージを蓄積させていく。

「ウィンドカッター!!」

「っ!!」

ナイフの光刃をブーメランのように飛ばすカラスティング。

アクセルはレッドアラート時代に見たことのある攻撃に回避行動を取るが、それがカラスティングの狙いだったのだ。

「かかったな!!」

ミサイルを放ち、移動直後の硬直を狙ってアクセルに直撃させた。

ミサイルの爆風によってバレットとレーザーホイールが手元から離れてしまう。

「しまった…!!」

「勝負あったな、それともコピー能力で一か八かの勝負に出るか?」

カラスティングの言葉にアクセルは歯噛みする。

コピー能力で挑んだところでカラスティングには勝てないのは明白だ。

万事休すかとアクセルとルナが思った時、パレットから通信が入った。

『アクセル!!新しい武器!!今、転送したから!!』

慌てているからか、何時もよりも声が大きいが、その通信はアクセルからすればとても心強い物であった。

アクセルの手元に大型のバズーカ砲が転送されたからだ。

「こ、これは…!?」

「新しい武器か…!!見たところ威力を重視した武器のようだな、そんな取り回しの悪い武器で!!」

カラスティングが猛スピードでアクセルに向かっていく。

『アクセル!早くガイアボムを撃って!!』

「よし…いけえ!!」

バズーカのトリガーを引き、砲口から凄まじい勢いで発射されたのは見覚えのある超硬度岩石。

「あれは!?」

「(ストンコングの…!!)」

想像以上の速度で迫る岩石弾に面食らったカラスティング。

「くっ!だが、かわせない程では…」

身を捻って岩石弾を回避した瞬間、弾が爆発した。

「ぐあっ!?」

「超硬度岩石の爆弾を発射する武器なのか!!」

物理攻撃と爆発による二段攻撃。

超硬度岩石の硬度も合わさってその威力は侮れない。

「よし、これならイケる!!ありがとうパレット!!」

バズーカを構えて岩石弾を連射する。

流石にバレット程とはいかないが、それなりに連射が利いて扱いやすい。

ガイアボムの高い威力と連射性は正にルナとパレットの開発理論が1つになったかのようだ。

岩石弾の1発がカラスティングに直撃し、物理と爆発の二段ダメージを受ける。

「ぐっ!!まだだ、この程度で…」

「いや、これであんたは終わりだよカラスティング!!ガイアボム!!」

カラスティングの周囲に岩石弾を大量に発射し、そして最後にランナーボムに変身して全ての爆弾を投擲して後に防御体勢に入ると、甲板にて大爆発が起こる。

「うわああああ!!!」

あまりの衝撃にルナは思わず悲鳴を上げた。

爆煙が晴れるとランナーボムへの変身が解除され、ボロボロだが、力強く立っているアクセルと床に倒れ伏したカラスティングがいた。

「へへ、僕の…勝ちのようだね…」

「その…ようだな…相変わらず無茶をする奴だ…」

「それくらいしなきゃ…あんたには勝てなかったよ」

大破して命尽きる寸前であるにも関わらず、カラスティングは微笑んでいた。

ライバルとの死力を尽くした戦いはカラスティングを満足させたようだ。

「…強く…なったな…」

「……あんたこそ…僕だけの力じゃない…パレット達の力があって勝てたんだ…」

「ふっ…俺の…強さは……所詮…紛い物に過ぎん…ごふっ…」

凄まじい速度で放たれた超硬度岩石をまともに受けて内部機構がイカれていたのか、口から疑似血液を吐き出すカラスティング。

「……カラスティング……」

「お…前を…裏切り、利用してま…で、得た力など…何の…意味も…無か…った…お前には…謝っても…謝り…きれん…」

何と言えばいいのか分からず、アクセルはただ彼を見つめるだけだ。

横たわる彼は視線をずらし、アクセルの傍に移動して彼を支えているルナを捉えた。

「…な…何だよ…?」

「…ルナと…武器を転送して…アクセルの力に…なってくれた…パレット…だったか?」

『は、はい…』

「…アクセルを……支えてやってくれるか……?見ての通り…こいつは…無茶を…する、から…な……」

アクセルの瞳が見開かれる。

それにはアクセルだけでなく、ルナと通信で聞いていたパレットも驚く。

「………当然だろ、仲間だからな」

『任せて下さい!!』

2人の返事に安心したのか笑みを浮かべてアクセルを見遣るカラスティング。

「……………………レッドを……止めてやれ………お前なら……いや…お前にしか……出来ない……」

「…分かってる。後は任せて」

アクセルが返事をした直後にカラスティングの動力炉が完全に活動を停止した。

「アクセル……大丈夫か……っ!…危ねえ!!」

殺気を感じてアクセルの腕を引っ張ると光弾の嵐が降り注ぎ、飛んできた方向を見遣ると、そこには…。

「ルイン…?いや、ルイン・シャドウか」

「蒼…紅…破壊スル…破壊…破壊…」

「な、何か様子がおかしいね…って言うかこの殺気は…」

引き攣った表情を浮かべるアクセル。

目の前のルイン・シャドウはとても今の状態で勝てる相手ではない。

「死ネ、滅閃…」

拳にエネルギーを纏わせ、滅閃光を繰り出そうとする直前に…。

「死ぬのはお前だ」

「いい加減に成仏したらどうかな?」

爆弾と氷龍がルイン・シャドウを粉砕しようとするが、チャージセイバーで相殺してしまう。

「チッ、化け物め」

「ふう、あの人から聞いてたけど一筋縄では行きそうにないね」

舌打ちするこれまた見覚えのあるアーマーを身に纏うレプリロイドが2体。

ルイン・シャドウは少しの間を置いて消えてしまった。

「そのアーマー、ウェントスとテネブラエとか言う奴らの仲間か!?」

「仲間ではない、ただ協力関係を結んでいるだけだ」

ジャケットタイプのアーマーを纏う橙色のアーマーの女性レプリロイドと青いアーマーの少年レプリロイドが振り返る。

「誰だてめえらは?」

ルナがバレットを構えて警戒しながら尋ねる。

「テネブラエから聞いて来てみたが、グラキエス、本当にお前と同じくらいのガキ共だな」

「酷いやイグニス。君だってそう変わらないじゃないか」

グラキエスと呼ばれた少年は口を尖らせながらイグニスという女性に言う。

「だから何なんだよお前らは!?」

「ウェントスかテネブラエから僕達のこと聞かなかったんだ?まあ、あの2人がそう親切なわけないしね。僕の名前はグラキエス…よろしく」

「私はイグニス…だ。ある男からの指示でルイン・シャドウの排除をしている…ついでに邪魔になるようならお前達イレギュラーハンターの排除も指示されている」

「くっ!!」

イグニスの殺気に咄嗟にバレットを拾って構えるアクセルだが、グラキエスは朗らかに笑いながら言う。

「止めといた方が良いよ?君はさっきの戦いで相当のダメージを負っているんだし、勇気と無謀の区別が付かないようじゃ、まだまだだね」

「所詮、雑魚に過ぎないお前達になど用はないということだ。お前達はここで海の藻屑となるのがお似合いさ!!」

ナックルバスターを抜き、バスターを床に叩きつけると甲板に亀裂が入り、飛行戦艦が堕ちていく。

イグニスとグラキエスが転送の光に包まれ、消えていく。

「アイリス!!戦艦が墜ちる!!早くハンターベースに転送してくれ!!」

『了解!!』

アクセルとルナも転送の光に包まれて、ハンターベースに転送された。 
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