ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第127話:Infinite Possibility
ハンターベースにアクセル達が帰還するよりも数時間前のこと、エックスは複雑なサイバースペースの迷宮に頭を悩ませていた。
エイリアに正しいルートを調べてもらおうにも通信が出来ないのでそれも出来ない上に、このステージで一番厄介なのは…。
「また裏側に行かなきゃいけないのか…」
ここに来てから何度目か分からない程に吐いた深い溜め息と共にエックスは行き止まりにある光に飛び込むと、エックスはサイバースペースの裏側に転送された。
どうやら、ここのボスに会うためにはサイバースペースの表側と裏側を行き来しなければ先に進めない仕組みになっている。
しかしそれだけなら大した問題にはならない。
エックスの出現に気付いたメカニロイドやムシャロイドが攻撃を仕掛けてくる。
「くそ!!ガイアシールド!!」
即座にストンコングから会得した超硬度岩石の盾で攻撃を防ぐエックス。
この程度の相手なら本来特殊武器を使わずとも倒せそうに見えるが、この裏側での最大の問題は…。
「この裏側フィールドは運動回路が干渉を受けているのか、回路が逆に作動するようになっているから戦いにくいな…」
正直、これ程までに戦いにくい場所は初めてなので、流石のエックスも早く終わらせて脱出したい気持ちが強くなる。
最後のメカニロイドをチャージショットで破壊するとエックスは奥にある転送装置に乗り込んだ。
そして転送された部屋には重力プログラムでも組み込んであるのか、円柱型の足場は、どの角度にいても立てるようになっている。
エックスは、奥にある背を見据えながらゆっくりとバスターを構えた。
「やはりサイバースペースにいるのはお前か、レッドアラートの戦闘員の頭脳、スナイプ・アリクイック」
「ふぉふぉふぉ……ここまで来るとは流石…かの?」
エックスに睨まれ、バスターを向けられてもアリクイックは余裕のあるゆったりとした動作で振り返る。
「お前達レッドアラートはこんな馬鹿げたことを…何時まで続けるんだ!?」
1人の少年を巡る争い。
特異な能力を持っていても、アクセルがまだ幼い子供であることに変わりはない。
「ふぉふぉふぉ…では聞くが…何時からその、“馬鹿げたこと”が続いていると思う?」
「!?」
「歴史が語る数多くの戦いの記録……なくなりはせんよ」
諭すように言うアリクイックに対してエックスは力強く叫ぶ。
「違う!争いのない世界は…人間とレプリロイドが共存するアルカディアは必ず実現する!!」
「わしらのような意に背く者の屍の上に、そんなものは建ちはせんよ。お前さんは武力による解決で、一体どれだけそのバスターでイレギュラーと言う名の屍の山を築いて来たのかのう?本当にお前さんの言うような人間とレプリロイドが共存出来るアルカディアを…理想郷を創れるのかのう?」
エックスの言葉に対してアリクイックはそう断言し、自分に向けられているエックスのバスターを指差しながら逆に問うのであった。
「………確かに、俺がしてきたことは武力による解決だアリクイック。俺はこのバスターで幾つもの命と可能性を奪ってきた…倒してきたイレギュラーにもきっと俺のように帰りを待っていてくれている大切な人がいたかもしれない。俺はかつての戦いでみんなの未来と笑顔のために戦うと言った。でもそれは俺の単なるエゴに過ぎないのかもしれないな…殺されたイレギュラーからすれば堪ったものではないかもしれない。でも、だからこそ…ここで逃げたら、今まで俺が倒してきた相手に申し訳が立たないんだ!!人間とレプリロイドが共存出来る未来の可能性が僅かでもあるのなら、俺はその道を信じて進むだけだ!!」
バスターにエネルギーをチャージさせてアリクイックを睨むエックス。
悩みながらも少しずつ前進しようとする若者の目にアリクイックは愉快そうに笑った。
「ふぉふぉふぉ……その目…希望と未来を感じさせる目はまるであのひよっこのようじゃな…全力で来るんじゃぞ?データが狂うでな」
「後悔するなよ!!」
予めチャージしていたバスターからチャージショットを放ってアリクイックに直撃させる。
まともな回避行動を取らなかったアリクイックに目を見開くが、次の瞬間にその理由を理解する。
「ぬう…ふむ…確かに老体には中々キツい威力じゃな…じゃが、お主の攻撃エネルギーは確かに頂いたぞ。出でよ、ソルジャーアント!!」
受けたダメージエネルギーを武器精製に利用するアリクイック。
蟻型メカニロイド・ソルジャーアントはかなりの速度でエックスに迫る。
「何だと!?」
「驚くようなことではあるまい?お前さんもまた、そのアーマーで似たようなことを出来るじゃろ?わしもまたそれが出来る。ただそれだけじゃ」
「ギガクラッシュのようなものか!!ムービンホイール!!」
チャージムービンホイールでソルジャーアントを迎撃するが、数体は破壊できたものの、残りがエックスに向かっていき、接触と同時に爆発した。
「ぐあっ!?」
「確かにそうじゃが、少し違うかのう?出でよ、ソルジャーアント!!」
再びソルジャーアントが精製されていく。
それを見てエックスはまた同じ数が精製されたことに目を見開いた。
「まだ造り出せるのか!?」
「ソルジャーアントの破壊力に関してはお前さんのギガクラッシュとやらには遠く及ばんが、一撃しか放てない攻撃はあまり有益とは言えん。同じ威力を安定して放てる攻撃の方が余程有益じゃぞ…言っておくがわしの力もこの程度ではない。さてはて、お前さんが倒れるか、それともわしが倒れるか、勝負と行こうではないか」
「くっ、負けてたまるか!!」
チャージショットではソルジャーアントの迎撃には間に合わない。
通常弾の連射でソルジャーアントを破壊しながらアリクイックにダメージを与えていくが、ショットの威力が足りずにどんどんアリクイックの攻撃の手数を増やしてしまう。
アリクイックがホーミングミサイルを放ち、レーザーポッドを精製してエックスを攻撃してくる。
それを何とかかわしてもソルジャーアントがエックスを追尾して爆発した。
「ギガクラッシュ!!」
ミサイルとソルジャーアントをギガクラッシュで破壊したが、特殊金属のレーザーポッドには傷一つ付かず、ギガクラッシュの射程外に逃れていたアリクイックはまだ余裕がある。
「くっ…」
「さて、この攻撃はかわせるかのう?」
ソルジャーアント、ミサイルを放ち、ポッドから一斉にレーザーが発射され、凄まじい攻撃の嵐にエックスは為す術なく被弾した。
「ぐ…あっ…」
あまりのダメージにエックスは膝を着いてしまう。
「蒼き英雄よ。お前さんの負けじゃな。現実の世界ならともかくサイバースペースはわしが最も本領を発揮出来る場所じゃ、そのようなアーマーではなく究極の強化アーマーを復元出来ていれば話は違ったかもしれんがのう」
「アルティメットアーマーか………お前を倒すのにそんなものは必要ない。」
ゆっくりとだが、それでも力強く立ち上がるエックスにアリクイックは目を細めた。
「(エネルギーが減るどころか増大しておる…じゃと?)」
「俺はライト博士が託してくれたこのグライドアーマーの力を信じる。行くぞアリクイック、最後の勝負だ!!レイジングエクスチャージ!!」
全身からエネルギーを放出し、今までとは比較にならない力を纏うエックスにアリクイックは目を見開く。
「ふぉふぉふぉ、人が悪い奴じゃな。まだ力を残していたとはのう。」
「いや、今までも全力だった。レイジングエクスチャージは使用と同時に凄まじい力を与えるが、同時に身体に凄まじい負担も与える。これで倒せなければ俺の負けだ」
「正に諸刃の剣と言う訳か。じゃが、いくらパワーアップしようとここまでの武器を精製出来るようになったわしには簡単には…」
アリクイックが言い切る前にエックスがチャージショットを放って先程まで破壊出来なかったポッドを破壊した。
「言っておくが、レイジングエクスチャージによる強化は代償に見合うだけの効力がある。武器精製の暇など与えない。一気に畳み掛ける!!」
そう言うと殆どチャージなどせずにチャージショットを放ってアリクイックにダメージを与えていく。
「っ…流石…じゃのぉ…遥か昔に造られたレプリロイド…いや、ロボットよ」
アリクイックはダメージを受けながらアーカイブを検索して古きデータを検出しながら呟く。
所詮紛い物の力などレプリロイドの始祖には通用しないと言うことなのかもしれない。
「ムービンホイール!!」
チャージムービンホイールを発射し、アリクイックに直撃させる。
エックスの猛攻で受けていたダメージもあり、アリクイックは力なく崩れ落ちた。
「ふぉふぉふぉ…見事じゃ、わしのデータを上回った褒美に少し未来の可能性について語ろうかのう…」
「………未来?」
首を傾げるエックスに構わずにアリクイックは未来の可能性について語り始めた。
「幾重にもプロテクトされたお前さんのデータから垣間見えたのは…未来の記憶か過去の虚像かは分からぬが…これより遠い未来。世界はお前さんを模した偽りの蒼とその子らに支配される。創られた紛い物の理想郷、それを突き抜ける斜陽の如き鮮烈な紅き光。蒼と紅は再び戦う運命にある…これが…少し前に見えた未来の可能性じゃ………お前さんの進む未来がこうなるのかそうでないのか…見させ…て…もらう…かの…」
それだけ言うとアリクイックは機能停止した。
エックスはアリクイックの言うような未来にはさせないことを誓いながらサイバースペースから脱出した。
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