ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第78話:Ocean
ルインがカギキラジャングルから帰還し、メンテナンスを受け、エックスが破棄されたはずのバイオラボラトリーが動いていると言う情報を受けてバイオラボラトリーに向かっていた。
その時である、ハンターベースのモニターにレプリフォース海軍が映ったのは。
「Dr、トライス州の住民がレプリフォースの誘導でシェルターへの避難を始めました!!」
「何じゃとぉ!?ぬ~~~、何を始めるんじゃ…」
ケインはレプリフォースの狙いが分からず、モニターを見つめながら唸るが、何となく予想が付いたエイリアが口を開く。
「あそこには大規模なエネルギー精製工場があります。恐らくレプリフォースの狙いは工場の破壊でしょう」
「んなあ!?あそこをやられたらエネルギー供給が追っ付かなくなるぞい。く~~~、ルインが修理中でエックスが別件出動しておる時に~~~。」
「…あら?……Dr!!この反応は…ゼロです!!」
ゼロの反応をキャッチしたエイリアが叫んだ。
一方、エネルギープラント付近の海域では、施設破壊の準備が着々と進み、後は住民の避難の完了を待つだけである。
「ジェット・スティングレン隊長!!トライス州全住民の避難完了しました!!」
「うむ、御苦労!第二警戒態勢に入れ!!」
部下の報告を聞いたスティングレンは即座に次の指示を出し、エネルギープラントを見遣り、そして手に持っている起爆スイッチを見る。
「(エネルギープラントか……これを押せば80万世帯のライフラインかま断たれる……この破壊に正義があるのか……)………迷わん!!これは“義”なのだ!!カーネル様を信ずるのみ!!」
少しの間、葛藤するスティングレンだが、カーネルへの忠誠心のために起爆スイッチを押した。
仕掛けた爆弾が作動し、エネルギープラントが大爆発により吹き飛んだ。
火の海に包まれるエネルギープラントを見てスティングレンは息を荒くしながら起爆スイッチを落とす。
「ハァ、ハァ…に…任務……完了……これより帰還する」
スティングレンが部隊に帰還命令を出した直後、スティングレンの戦艦にランチャーショットが炸裂した。
「何だっ!?何が起きた!?」
「逃がしはしない!!」
アディオンに搭載されたランチャーでショットを放ちながらスティングレンの戦艦に迫るゼロ。
「(真紅のボディに流れる金髪……あいつがゼロか!!)全速離脱!!」
「?」
「え?」
その命令にスティングレンの部下達は目を見開いた。
「なっ、何故ですか!?」
「敵を前に逃げるのですか!?」
「軍人としてのプライドが許しません!!」
不満をぶつける部下達に対して、その気持ちを理解しながらもスティングレンは部下を守るために拳を叩き付けて黙らせた。
「全速離脱!!上官命令だ!!」
【イ、イエッサーっ!!】
「作戦は終了だ!!皆、生還することを考えろ!!」
【ハッ!!】
去っていく部下達を見て微笑むとスティングレンはゼロに向かって飛び立った。
「逃がさん!!お前らにはカーネルの居場所を教えてもらうぞ!!」
ゼロの目的はカーネルと居場所を知ることであり、そのためにスティングレンの戦艦に攻撃を仕掛けたのだ。
「カーネル殿の名を口にするか!この痴者がっ!!貴様にその名を口にする資格は無いと知れ!!」
ゼロに向けてエイ型メカニロイドを発射しながら接近するスティングレン。
「貴様、カーネルの居場所を知っているな!!」
「その名を口にするな!!」
「ならば力ずくで聞き出すまでだ!!」
「貴様にその資格はない!!」
「お喋りは終わりだ!!」
アディオンのランチャーショットでスティングレンを撃ち落とそうとするが、飛行性能も高いスティングレンには掠りもしない。
それどころか体当たりを繰り出してゼロを海中に叩き落とそうとする。
ゼロは体勢を立て直そうとするが、スティングレンは即座にバスターから竜巻を放ち、ゼロを海に沈めた。
「あんな痴者を“友”などと……カーネル殿唯一の汚点!……むっ!?」
「空円舞!!飛燕脚!!」
ゼロはフットパーツのバーニアをフルに使い、エックス達のエアダッシュ系統に相当する疑似飛行技を使い、スティングレンに肉薄した。
「馬鹿な、地上用のレプリロイドが空を…!?」
「バスターを使えない俺が貴様のような飛行型の相手をする場合のことを考慮しないと思うか!?エックスとルインの能力はしっかり学ばせてもらったぜ!!」
「(“学んだ”だと?レプリロイドが学んで技を会得するなど…まさか、ラーニングシステムか!?レプリロイドの動きやDNAデータを解析、学習することで性能を高めるパワーアップシステム…極一部のレプリロイドのみに実装されたと言う…)」
「空円斬!!」
ルインの回転斬りをゼロ用に調整した技でスティングレンに斬り掛かる。
「(避けられん!)」
スティングレンはかわせないことを悟ると、ダメージ覚悟でゼロの懐に入る。
「!?」
「一つ!強敵と出会うことを喜べ!!一つ!敵わぬと思い、自ら身を引くな!!一つ!死中に活を求めよ!!これがカーネル殿の教え!!」
バスターをゼロに密着させると零距離で攻撃を繰り出す。
「ぐあっ!!」
まともに喰らったゼロは一瞬意識が飛んだが、脳裏に浮かんだエックスとルインの姿に意識を取り戻すとスティングレンのバスターを掴んだ。
「むっ!?」
「カーネルの教えか…そいつは大した物だな」
掴まれたスティングレンのバスターがゼロの凄まじい握擊でへこんでいく。
「ぬ、おおお!?(な、何と言う膂力だ!?こ、こんな細身のどこにこんな力が!?)」
「」お前にも退けない理由があるように俺にも退けない理由がある。こんな大変な事態にも関わらずに独断行動をしようとした俺を信じて送り出してくれた友の想いに応えるためにも、必ずカーネルを見つけ出し、レプリフォースを止める!!」
スティングレンを戦艦に向けて投げ飛ばし、戦艦の甲板に叩き付ける。
ゼロは疑似飛行技でスティングレンに肉薄するとセイバーによる高速連擊を浴びせた。
「ぐああああっ!!」
「水中と空中では追い詰められたが、地上戦では俺は負けん!!」
スティングレンはゼロの繰り出す斬擊を何とか耐えながらかつてのカーネルとの会話を思い出していた。
あれは確か自分がまだレプリフォースに配属されたばかりの頃だろうか。
『大丈夫ですかカーネル隊長』
まだ新人だった頃の自分をイレギュラーからの攻撃から庇って怪我をしたカーネルの身を案じるスティングレン。
『馬鹿を言うな』
『しかしその傷は……私を庇って……』
『スティングレンよ、部下を守り、敵を倒し、生還する。これこそ軍人冥利に尽きると言うものだ』
そうスティングレンに語るカーネルの表情はとても誇らしげであった。
『カーネル隊長……』
『痛…しかし…奴には見られたくない様だな』
しかし傷が痛むのか、傷口を押さえながら顔を顰めた。
『あ、奴?』
『真紅のボディと風に流れる金色の髪、最強のハンター……ゼロ!!あいつなら部下も自分も傷付けず敵を倒すだろう……私の終生のライバルだ』
『(カーネル殿がライバルと呼ぶ男……ゼロ!会ってみたい!そしていつか所属の枠を越え、共に戦ってみたい!共に………戦い…………たい……)』
そして意識は現実に戻り、スティングレンは太刀筋を見切ってゼロの腕を掴んだ。
「何!?」
「貴様はカーネル殿に信用されていた!貴様は認められていた!!それなのにぃいーーー!!」
ゼロを殴り飛ばし、そして馬乗りになるとゼロに拳を振るう。
「ぐっ!!」
「カーネル殿を裏切った!カーネル殿の信念に刃を向けた!!絶対に……絶対にぃいぃいーっ、許さぁあんん!!」
「黙れ…!共に歩むだけが友情とは違う!!そんなことも分からん奴が…友情を語るな!!」
ゼロもスティングレンに殴り、そして蹴りを入れることで何とか吹き飛ばす。
「何としてでも貴様にカーネルの居場所を吐いてもらうぞ!!」
「ほざけ!!カーネル殿を裏切った罪、体に刻み込んでくれる!!」
ゼロとスティングレンが激突する直前、甲板に脱出したはずのスティングレンの部下達が現れた。
「お前達!命令違反だぞ!!」
「我々も一緒に!」
「共に誇りのために!」
「ば…馬鹿者共がぁ……」
「……………」
命令違反をしてまでスティングレンと共に戦おうとする部下達を見てゼロは動きを完全に止めてしまう。
次の瞬間、スティングレンの戦艦に砲弾が放たれた。
【!?】
一瞬、誰もが何が起きたのか分からなかったが、しかしゼロは理由に気付く。
自衛団が戦艦に砲弾を放ったのだ。
「(一応俺がいるのに撃ってきたか…いや、当然か…俺がいようと自衛団には関係ない。彼らは自衛団として正しいことをしている)」
ゼロは巻き込まれる前に海に飛び込んだ。
しかし、大量の火薬やエネルギーを積んだ戦艦の爆発は凄まじく、その衝撃は離れていたゼロをも余波で気絶させる程であった。
意識が途絶える寸前でスティングレンらしき残骸が目に入ったのだけは記憶に残った。
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