ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第77話:Jungle
アディオンに乗ってハンターベースから去っていくゼロの後ろ姿を見守りながら、エックスとルインは今後についてケインと話し合うことにした。
「そうか、ゼロがか…」
「はい、ケイン博士。こういう時に独断行動は許されないのは分かってるんですけど…」
「分かっとるわい、友人か敵になってしまったゼロの気持ちも分からんではないからのう」
かつてのドップラーの件もあるからケインはゼロの行動に理解してくれた。
「ありがとうございます。ケイン博士」
理解を示してくれたケインにエックスとルインは深く頭を下げた。
「それじゃあ、ゼロの分まで私達は私達なりに頑張ろう。ダブル、聞こえる?」
『は、はいデシ!!』
新しく配属された新人オペレーターのダブルにルインが通信を繋ぐと、ダブルが慌てて答えた。
「今、レプリフォースが活発に動いているエリアは何処かな?」
『えっと…カギキラのジャングルでレプリフォースのゲリラ部隊が大型のビーム兵器を守っているデシ』
「ジャングルか…よし、なら私が行くよ。ジャングルなら私の方が向いているだろうしね」
ジャングルなら障害物も多いためにステルス性能の高いPXアーマーの性能をフルに発揮出来る。
「分かった。ルイン、気を付けてくれ」
「うん」
エックスの言葉にルインは頷くと、アディオンに乗り込んでカギキラに向かおうとするが…。
アディオンを走らせようとしたルインにディザイアが駆け寄って来る。
「待って下さい副隊長!!」
「あれディザイアじゃない…?どうしたの?」
「ダブルから副隊長がカギキラジャングルのレプリフォースの基地へと向かうと聞いて…」
「………」
「副隊長。私も連れていって下さい。」
「え?」
「いくら副隊長と言えどもイレギュラーの巣窟にたった1人で向かうのは危険です。」
「でも…」
「あなたを死なせたくはないんです。1人で行くよりも2人で行った方が生存率も成功率も上がるはずです」
「ありがとう…」
ルインは微笑みながらディザイアに礼を言う。
「副隊長…」
「君は本当に優しい人だね…訓練も仕事も人一番頑張ってるのに…凄いよ」
「そんな…私が…こんなに頑張れたのも…ひとえに、あなたが…副隊長がいてくれたからこそ…です」
「大袈裟だよ」
「大袈裟ではありません(私が努力を怠らないのは、あなたを守るためです…あなたを1人の女性として愛しているから…)」
カギキラジャングルにあるレプリフォースの基地へと辿り着いたルインとディザイア。
彼ら2人は互いに目を合わせながら、一気にジャングルを駆け抜ける。
セイバーとサーベルが閃くと同時にメカニロイドが細切れにされていく。
「(私はようやく、彼女の隣で戦えた……)」
ルインの隣でサーベルを振るい、メカニロイドを斬り捨てるディザイア。
彼の心は歓喜に満ちていた。
その時、隊長のエックスからディザイアに通信が入り、ディザイアは内心舌打ちしながらも通信を繋げる。
『ディザイア。何故お前がルインと一緒にいる?そんな命令を与えてはいないはずだが?』
「これはこれはエックス隊長、私は無断でついて来た訳ではありません。ちゃんと副隊長の許可は頂いているので…」
苛立ちの為か、エックスに対する言葉にはキツイ雰囲気を感じさせる。
しかしエックスは隊長としてはっきりとディザイアに言い放つ。
『レプリフォースは甘くない。お前は確かに強いが、レプリフォースは戦闘のプロだ。直ぐにハンターベースに戻って来るんだ』
「ご忠告、ありがとうございます隊長。ですが、今の私の実力は特A級のそれに比類します。過去の大戦の時のようにあなたに頼るしかなかった時とはもう違います。今は、私でも充分やれるんですよ」
そのままエックスとの通信を切るとルインを追い掛けるディザイア。
「どうしたの?」
首を傾げるルインにディザイアは笑顔で首を振る。
「いえ、何でもありません」
基地の中間地点まで来ると流石に警備も厚くなり、ますます攻撃が激しくなるが、ルインはディザイアと連携して強行突破する。
途中で蜘蛛の巣のようなメカニロイドがいたが、破壊出来ないことを確認すると跳躍して通り越す。
そして最後の蜂の巣のような装置を破壊し、奥にある扉に入ると大型のビーム兵器があり、そこから蜘蛛を模したレプリロイドが現れた。
「スパイダス…」
「ルインか…久しぶりだな…最後に会ったのは確かシグマが反乱を起こす前だな」
「レプリフォースに転属したんだって?そのベレー帽、似合ってるじゃん、格好いいよスパイダス」
「ありがとう、今では俺もレプリフォースのゲリラ部隊の隊長。そしてお前はあの第17部隊の副隊長…お互い立場も変わった…」
「今、レプリフォースが何をしているのか…君なら分かってるんじゃないの?スパイダス?」
「…まあ、な………」
正直に言うと今回の戦争はカーネルが大人しく投降しなかったから起きたことだ。
スパイダスも若干ながら、疑問を感じていたが…。
「だが、今の俺はイレギュラーハンターではない。レプリフォースの軍人だ。主と認めたカーネル殿やジェネラル殿を裏切ることなど出来ん」
「そう、残念だよスパイダス。」
バスターをセイバーに変形させて構えるルインにスパイダスは油断なく見据える。
純粋な戦闘力では自分が負けているが、手段さえ選ばなければ勝機はある。
スパイダスは蜘蛛の糸を伸ばし、木へと移動する。
「っ!!」
「此処を通すわけにはいかん!!だが、実力はお前の方が俺より上…。悪いが手段は選ばん!!元第0特殊部隊の実力を見せてやろう!!」
忍びとして一流であるスパイダスは、姿を隠すと同時に気配を完全に消した。
「(気配が完全に消えている…流石だね…スパイダス)」
上空から気配を感じて飛びのくと子蜘蛛型メカニロイドが降ってきた。
「副隊長!!」
「来ないで!!」
チャージセイバーでメカニロイドを薙ぎ払うと、バスターに変形させて木にショットを数発放つ。
しかし、スパイダスはそれを容易く回避してしまう。
「ライトニングウェブ!!」
「当たるか!!プラズマビット!!」
電撃を纏った蜘蛛の巣を放つ技にルインはHXアーマーに換装し、エアダッシュで回避すると電撃弾を放つ。
スパイダスは目の前にライトニングウェブを放つと盾代わりにして相殺する。
最初に放たれたライトニングウェブは床に当たった。
スパイダスのライトニングウェブの厄介なところは威力でもなければ、スピードでもない。
一度、相手を捕らえれば簡単に外すことが出来ない拘束能力なのだ。
ホバーを使い、床のライトニングウェブに触れないように、床に着地した瞬間にスパイダスは筒のような物を取り出し、それをルインに向けて投げる。
黒い霧のようなものが噴射して、ルインに纏わりついた。
「うっ…これは!!?」
霧は体に付着して粘り着き、関節の動きを鈍らせる。
「レプリロイド捕獲用のホールドガム…!!」
「勝つためには手段は選ばんと言ったろう。ライトニングウェブ!!」
「くっ!!」
ホールドガムで動きを鈍らせられ、ライトニングウェブに搦め捕られたルインは完全に動きを封じられる。
「止めろ!!私が相手だイレギュラー!!」
「イレギュラーだと?我々をイレギュラー扱いするか…まあ否定出来んのが悔しいがな…だが、たかがA級が元がつくとはいえ特A級に勝てると思っているのか弱虫ディザイアの坊や?」
「もう私は昔の私ではない…!!私は特A級の実力を得た!!」
サーベルをスパイダスに振るうが、スパイダスは嘲笑いながら軽々とディザイアの攻撃を回避していく。
「どうした?遠慮は要らんぞ。」
「くっ!!」
サーベルをスパイダスの脳天に目掛けて振り下ろすが、片手でサーベルを持つ腕を掴まれる。
「成る程、確かにA級にしてはパワーもスピードも悪くない。実力が特A級クラスというのも満更出鱈目ではなさそうだ。あくまで特A級の下位…そうだな、精々ペンギーゴやナウマンダークラスがいいところだろうが」
「何…!!?」
「本物の実力を持った特A級を舐めるなと言うことだ。ふんっ!!」
ディザイアの腕を弾き、スパイダスはディザイアの顎に強烈な掌底を喰らわせ、身体を浮き上がらせると鳩尾に蹴りを入れて吹き飛ばす。
しかし直ぐさまディザイアは体勢を立て直した。
「ほう?中々どうして、A級ハンター如きが楽しませてくれるじゃないか。」
「つあっ!!」
「甘いぞ坊や」
サーベルの鋭い突きを回避し、裏拳をディザイアの顔面に喰らわせる。
「A級にしては悪くない。あくまでA級にしては…な。」
「ぐっ…」
「だが、これで終わりだなディザイアの坊や。ライトニング…」
「…うわああああああ!!!!」
スパイダスが技を放つ前に強引に糸を引き千切り、Xアーマーに換装する。
そしてルインはダブルチャージショットをスパイダスに向けて放つ。
「何!?」
不意を突かれたスパイダスはルインのダブルチャージショットに脇腹を刔られた。
激痛に顔を顰めた瞬間。
「はああああっ!!」
ディザイアのサーベルがスパイダスの動力炉を貫き、スパイダスは機能停止した。
「大丈夫?ディザイア?」
ホールドガムの影響で動きが鈍いが、何とかディザイアの元に歩み寄る。
「…ええ、ご迷惑をおかけしました……」
そう言うディザイアの表情は暗い。
助けるために一緒に来たというのに逆に彼女に助けられた自分に憤りを感じていたからだ。
「ダブル。ディザイアがダメージを受けたから、ハンターベースに転送をお願い」
『了解デシ!!』
ルインは周囲を見渡して何もないことを確認すると後始末は後続のハンター達がやってくれるだろうと、ルインもハンターベースへと戻ろうとしたが、何か不思議な気配を感じてそちらに向かうと、見慣れたカプセルを発見した。
「ライト博士…?」
ルインが近付くとカプセルが起動し、ライト博士のホログラムが現れる。
『元気そうで何よりじゃルインよ。この戦いはあってはならぬ戦いじゃ。何故、同じ志を持つレプリロイド同士が戦う?』
カプセルの中に姿を現したライト博士がルインに向かって問い掛ける。
『平和を守る者同士が何故戦わなければならないのか?きっと何かの間違いじゃ。ルインよ、このカプセルに入るがよい。このカプセルに入れば、お主の戦闘力を2倍にするオーバードライブの持続時間を少しだが伸ばすことが出来るようになる。』
ライト博士がルインに“R”の文字が刻まれたチップをホログラムにして見せる。
そして次に見せるのはエックスのアーマーパーツのフットパーツだ。
『後はこのパーツをエックスに渡して欲しい。このフットパーツをつければ、ホバリングが可能になる。前後に動くことができ、暫く滞空出来る。高い場所にいる敵や、危険な場所を、落ち着いて移動するのに有効じゃ。一刻も早く無駄な戦いを止めるのじゃ、ルイン…』
「分かりました。パーツを受け取ります」
ルインはカプセルに入るとエックスのフットパーツを入手し、更にオーバードライブ持続時間延長チップを入手した。
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