| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

徒然草

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

90部分:九十.大納言法印


九十.大納言法印

九十.大納言法印
 大納言法印殿の使用人であった乙鶴丸殿という人がいましたがこの人はやすら殿という人と仲がよかったのです。乙鶴丸殿がいつもこの人のところに遊びに出掛けるので大納言法印殿は彼が屋敷に帰って来た時に何処に出掛けていたのだと尋ねました。すると乙鶴丸殿はやすら殿の家に遊びに行っていましたと答えるので大納言はやすら殿という人は怪我生えている人なのかそれとも坊主なのかとまた尋ねました。乙鶴丸殿は自分の服の袖をさすりながらさて、どうでしょうか。その頭を拝見したことがないものでと答えました。この話を聞いて妙なのは頭を拝見したことがないということです。他の場所は見えているようです。それでいて何故頭だけが見えないのか、これが謎であります。
 若しかしたらこのやすら殿は女性でそれで簾で御顔を隠しながら乙鶴丸殿と会っていたのでしょうか。それでも何度も会っていればやがては顔を見せ合うまでに深い仲になるでしょう。頻繁に会っているのに頭を見たことがない、若しかすると御顔は見ているかも知れません。しかしだとするとそれで頭を見ていないというのはやはり妙なお話です。頭を見たことがない、これがどうしてもわからない次第であります。若しかすると何か深いものがあるのかも知れませんがどうしてもわかりません。何故なのかと考えても答えは出ません。頭を見たことがない、いえ見せないというのは化け物ではないのかとも思いますが果たして真相は。考えても考えてもわからないことであります。


大納言法印   完


                  2009・8・12
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧