この素晴らしい世界に文明の鉄槌を! -PUNISHMENT BY SHOVEL ON THIS WONDERFUL WORLD!-
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七丁
「なぁ、おい」
「なんですかー」
「どうしたのにゃんにゃん?」
「おまえら上級魔法覚えて卒業したからってウチに入り浸ってんじゃねぇよぉぉっ!」
何時もの二人が学校を卒業した。
十才でだ。
紅魔族始まって以来の天才少女。
それがめぐみんとゆんゆんの評価だ。
めぐみんは念願の爆裂魔法を、ゆんゆんは普通の上級魔法を覚えたようだ。
「あらいいじゃないにゃーちゃん。フェイベルの遊び相手は多い方がいいでしょう?」
「正論を持ち出すなリーア」
二人に遊んでもらえてご満悦のフェイベル。
フェイベルがいいならそれでいいか…。
「じゃぁ俺は何時もの所行ってくる。リーア、あのバカ共がフェイベルにおかしなこと教えないかちゃんと見張っててくれ。
めぐみんは言うまでもないがゆんゆんもあれでかなりのむっつりスケベだからな」
「わかってるわ。いってらっしゃい貴方」
「はいはい…テレポート」
一瞬にして視界が切り替わる。
そこは何時もの場所。
秘密格納庫だ。
『パパ。今日もお勉強ですか?』
片眼を通して俺と同じものを見ているフェイベルが語りかけてくる。
「そうだよ」
おれの眼にもフェイベルが見ている光景が映っている。
並列思考スキル様様だ。
『こんど私も連れていってください』
「いいよ」
可愛い愛娘のお願いだ。叶えてあげよう。
昨日の続きのファイルを取り出す。
中身はロストテクノロジーの塊だ。
俺の職業は、里では『冒険者』もしくは『狩人』だと思われているだろう。
だが俺は、自分では『魔導師』や『学者』だと思っている。
事実、幾つかの魔道具と魔法を開発した。
現代の魔法使いは『魔法』使いでしかない。
ステータスカードによって魔法を得てソレを扱っているだけだ。
本来の魔法使いとは、魔導を求道し世界の秘密を解き明かすという崇高な存在の筈だ。
並列思考でフェイベルの様子を確認しながらファイルを読み進めていると、昼になった。
昼からはめぐみんとゆんゆんのレベリングだ。
「フェイベル。今から帰る」
『わかりましたパパ』
来たときと同じようにテレポートで帰ると、フェイベルに抱きつかれた。
「ただいま。フェイベル。いい子にしてたかい?」
「はい。パパも研究お疲れ様です」
「「研究?」」
めぐみんとゆんゆんがそろって首をかしげる。
まぁ、いいか。例え知っても入れまい。
「ああ。秘密格納庫で研究をしている」
「「秘密格納庫!?」」
驚いてる驚いてる…。
「どうやって入ったんですかにゃんにゃん!?」
「そうよだれも入れなかったのに!」
「ん? あぁ。そうだな。さーてメシだメシ。フェイベル。あとニート共、メシ食ったら森いくぞ」
「「ニートじゃない!」」
いやニートだろ。
帰って来たら何故か家にゆいゆいさんがいた。
「どうもゆいゆいさん」
「あらお帰りなさいにゃんにゃん君」
「お帰りにゃーちゃん」
そしてリーアと談笑していた。
フェイベルがリーアの膝の上に乗る。
「ところでにゃんにゃん君」
「なんでしょうか」
「めぐみんの事は貰ってくれるのかしら?」
「はいぃ…?」
めぐみんをもらう? つまり結婚ってこと?
「えーと…何て言うか…めぐみんは妹みたいなやつでして…」
「あら、なら大丈夫ね。めぐみんの事頼んだわよ」
聞けよ。
「あの、ですから」
「でも近い内にめぐみんとゆんゆんちゃんと一緒に出ていくのでしょう?」
「なぜソレを?」
「めぐみんが言ってたのよ。貴方が近く里を出るらしいからついていくとね」
ゆいゆいさんが良いと言ってるなら俺はいいが…
「あの子も大きくなったわ。にゃんにゃん君のおかげね」
「そうですかね」
「そうねぇ。にゃーちゃんが食べ物を分けてなかったら今頃餓死してたりして」
「縁起でもないこと言うなリーア」
「あらごめんなさい」
あ、そうだ。
「ゆいゆいさん」
「なぁに?」
「めぐみんがつけてる首輪、頼まれても絶対に外したらダメですよ」
「ああ、あれ? やっぱりそういうプレイなの?」
「違います。魔力封印用ですよ。めぐみんが習得した魔法知ってますか?」
「爆裂魔法でしょ?」
「それをあのバカ里の近くでぶっぱなそうとしましてね。ヤバそうだったので封印しました」
「ウチの子がごめんなさいねぇ」
いや、実際一度ぶっぱなしていた。
しかしそれは俺の魔道具とスキルで無力化した。
宴会芸スキルの応用技ジャックインザボックス。
「いえいえめぐみんの魔力量で爆裂魔法なんてうたれたら一帯が更地ですからね」
めぐみんの魔力は俺ほどではないが、普通の魔法使いと比べても5倍はある。
「ふぅーん……ちゃんと手綱握っててね?」
俺に頼むなよ…。
「うふふ。それじゃぁ里を出ていく時には言ってね。お見送りにいくわ」
結局それから二年間旅立つ事は無かった。
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