デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第49話:災厄撃破
前書き
オメガモンその他降臨
ウォーグレイモンとメタルガルルモンは激痛に苛まれる体を叱咤し、何とかディアボロモンがいる場所に到達したが、あまりにも凄まじい光景に戦意がへし折れそうになる。
傷だらけになり、中央に浮かんでいるメイクラックモンVMと…。
「こ、こいつら…何体…いるんだ…?」
「ま、待ってください…さ、32000…体…」
「3…2000…?」
光子郎の言葉が理解出来なかった太一…いや、したくなかったのかもしれない。
32000体もいる究極体のディアボロモンに太一達の表情は絶望に染まる。
ディアボロモンの視線がウォーグレイモンとメタルガルルモン、メイクラックモンVMに向けられ、一気にエネルギー弾を乱射した。
ウォーグレイモンはすぐさま一番危険な場所にいるメイクラックモンVMを抱き上げ、メタルガルルモンと同じようにディアボロモンの攻撃をかわしていたが……。
「……!?」
ウォーグレイモンは突然体が重くなったような感覚に襲われる。
次の瞬間、ウォーグレイモンとメタルガルルモンに攻撃が直撃し始めた。
「ウォーグレイモン達の動きが変だよ!!」
ヤマトと共にいたタケルが叫ぶ。
ウォーグレイモンは薄れゆく意識の中、せめてメイクラックモンVMだけでも守らねばと自分の体で全て受け止めた。
「世界中からのメールの所為です!!大量のメールが、こっちの処理速度を下げてるんです!!」
「これじゃあやられっぱなしだよ!!」
「世界中のみんな!!ウォーグレイモン達のレスポンスが下がっちゃう!!メールを送らないで、頼むから!!」
光子郎がメールを送信したのと同時に攻撃が止んだ。
煙が消えるとそこには傷だらけになった3体の姿があった。
ただ宙に浮かんでいるだけで、微動だにしない。
データ粒子とならないところを見ると死んでいても不思議ではないのに生きてはいるようだが。
メイクラックモンVMはウォーグレイモンが最後まで放さなかったらしく、ウォーグレイモンやメタルガルルモン程の怪我ではないが、メイクラックモンVMだけではどうしようもない。
「…もう駄目…?」
「駄目…そんなわけあるか…俺が…せめて俺が何とか一緒にいられたら……」
「太一さん…」
「このまま、諦めて…たまるか…核ミサイルなんか落とされてたまるか…!!」
太一の言葉を現実世界の神が応えたのだろうか、奇跡がやってきた。
「「デジヴァイスセット完了!!行け!!」」
「「おう!!」」
勢い良くネット世界に入り込んできたのはブイモンとワームモンであった。
「デジメンタルアップ!!」
「ブイモンアーマー進化、マグナモン!!」
「ワームモンワープ進化、バンチョースティングモン!!」
マグナモンとバンチョースティングモンに進化し、瀕死のウォーグレイモンとメタルガルルモンを守るように立つ。
「悪い、待たせたな!!」
「遅えよ、馬鹿野郎!!」
「すまない、混乱のせいで思うように動けなかったんだ」
太一の怒声にバンチョースティングモンが申し訳なさそうに言う。
ディアボロモンがマグナモンとバンチョースティングモンを標的にし、エネルギー弾を乱射する。
「はあっ!!」
「ぬんっ!!」
マグナモンとバンチョースティングモンは両腕を勢いよく振るい、エネルギー弾を弾き飛ばした。
弾き飛ばしたエネルギー弾は見事にディアボロモン達に直撃する。
「シャイニングゴールドソーラーストーム!!」
超広範囲に及ぶ必殺技を繰り出し、ディアボロモン達を消し飛ばしていく。
「ガ…ア…?」
メイクラックモンVMは暖かな光を浴びたことでゆっくりと目を開けた。
「よう、メイクーモン。起きたか、お前も頑張ったんだな。偉いぞ。後は俺に任せとけ」
メイクーモンの時に見せていた優しい笑顔にメイクラックモンVMの脳裏に今までの記憶が過ぎっていく。
芽心とブイモン達、大輔達との思い出。
そして自分を庇うようにして動かないウォーグレイモンの姿を見て、メイクラックモンVMは正気に返り、本来の正しい姿のメイクラックモンに変わる。
「あ、メイちゃんの姿が変わった…」
「いや、姿だけじゃねえ」
今までの禍々しい感じが完全に消えている。
「もしかしたらあれがメイクーモンの正しい進化なのかもしれません」
ディアボロモンは予想外の事態に癇癪を起こし、更に数を増やして総攻撃をしようとするが…。
「何キレてるんだ?頭に来てるのはこっちだ!!X進化ー!!」
マグナモンがX進化を発動し、姿を大きく変える。
デジモンの生存本能によって生まれた進化の力の余波、そしてマグナモンが持つ奇跡の力はメイクラックモンを奇跡の存在へと昇華させた。
「メイクラックモン究極進化、ラジエルモン!!」
かつてオファニモンと同等の位を与えられたとされる座天使型デジモンにメイクラックモンは進化した。
「進化した!?」
「まさか、究極体に!?」
「メイちゃん…」
芽心の言葉が聞こえたのか、ラジエルモンは芽心の方を振り返り穏やかな笑みを浮かべた。
自分の声が聞こえていることが分かり、それだけで芽心には充分だった。
ラジエルモンがマグナモンXを見遣るり、マグナモンXは現実世界の方と自分を交互に見るラジエルモンを見てラジエルモンの考えを察した。
マグナモンXの鎧が光り輝き、ラジエルモンも呼応するように光り輝いた。
この2体は能力と技の違いはあれど奇跡の力を扱うことが出来るのだ。
まず1つ目の奇跡…。
「あ…」
「ここは…」
「ネットの中か…メタルガルルモン…!!」
「ウォーグレイモン…!!」
ウォーグレイモン達のパートナーである太一、芽心、ヤマト、大輔、賢をネット世界に入れること。
太一とヤマトは即座に傷ついたパートナーの元に向かう。
そして2つ目の奇跡は…。
「これは…」
「世界中の人達からのメール…」
大輔と賢は周りに出現する無数の応援メールに気付く。
マグナモンXとラジエルモンの輝きは更に増していき、太一とヤマトは胸元に熱い何かを感じて、そして響く音を聞き取った。
「何だ…この音は…?」
「これは…心音…?でも俺のじゃない…まさか…太一の…?」
太一と勇気とヤマトの友情が重なり、1つの力となる。
しかしそれだけでは足りない。
究極の力を呼び起こす程の奇跡を起こすには、人々が送ったメールの力が必要不可欠。想いが奇跡を起こすのだ。
マグナモンXとラジエルモンの奇跡の光によってメールが…正確にはメールに込められた想いが力となり、ウォーグレイモンとメタルガルルモンに向かっていく。
ダメージ回復だけでは終わらず、ウォーグレイモンとメタルガルルモンが変形し、メールに込められた想いが1つとなって肉体を創造したことにより、終焉の聖騎士・オメガモンを降臨させた。
そしてそれは近くにいたバンチョースティングモンにも更なる力を与える。
バンチョースティングモンが燃え上がるようなオーラを放ち出したのだ。
「ウォーグレイモンとメタルガルルモンが合体した!?特別な進化をして更なる力を発揮したマグナモンとは違って、2体のデジモンが合体して1体のデジモンとなることで更なる力を得る…これもまた進化の形なのか…?」
「それだけじゃない。バンチョースティングモンもパワーアップしちゃった!?」
「まるで力が爆発したような変化…バーストモードとでも言いましょうかね?」
変化を見届けたマグナモンXとラジエルモンが即座に奇跡の光の放出を止める。
1体なら相当の負担が掛かったが、2体でやれば多少疲れる程度で済んだので戦闘続行は可能だ。
「芽心ちゃん、捕まれ」
「はい」
太一が芽心を支えてオメガモンの左肩にしっかりと立つ。
マグナモンとバンチョースティングモンが多少倒していたが、まだ20000体近く残っている。
だから早くディアボロモンを殲滅しなくては。
ディアボロモンが全方位からエネルギー弾を発射する。
「ライトオーラバリア!!」
マグナモンXが全員を包むようにバリアを張り、エネルギー弾を全て防いだ。
そしてオメガモンが左腕から剣を出現させ、刀身に炎を纏わせ、横一文字に振るった。
炎を纏った剣圧がディアボロモンに直撃し、直撃したディアボロモン達を焼き尽くしていく。
次は右腕から大砲を出現させ、絶対零度の冷気弾を発射。
着弾した瞬間に広範囲の物質とディアボロモン達を凍結させ、着弾の衝撃で粉微塵にした。
「凄い…!!」
「おい、みんな!!俺達も負けてられないぞ!!シャイニングゴールドソーラーストーム!!」
「爆雷天!!」
「ノウレッジストリーム!!」
マグナモンXのレーザー光。
バンチョースティングモンBMの機雷虫。
ラジエルモンのエネルギー波。
それぞれの攻撃が次々とディアボロモン達を殲滅していき、20000体近くいたディアボロモンもとうとう1体になる。
「い、いました!奴が最後の1匹…時計を持ってる奴です!!」
「よし、俺が仕留めてやる!!ミラクルグリッター!!」
マグナモンXが放った光をディアボロモンはかわし、そしてそのまま逃げに徹するディアボロモン。
「奴め…タイムリミットまで逃げるつもりか!?」
賢が思わず歯軋りする。
「1分を切りました!!」
「みんな、早く奴を見つけて!もう時間がないよ!早く!!」
「チッ、逃げ足だけは速い奴だ!!」
「奴のスピードは普通のまま…こちらは大量のメールのせいで体が重く、本来のスピードが出せない…!!」
マグナモンXとバンチョースティングモンBMが悔しげに周囲を見回す。
「光子郎さん、メールのせいで満足に動けないから何とか出来ませんか!?」
「メールで満足に…?そうだ!!転送だ…!このメール全部、奴のアドレスに転送すれば…!!……行っけーーーー!!」
突如、ディアボロモンの動きが鈍る。
光子郎が機転を利かせてディアボロモンに大量のメールを転送したことで処理が追い付かなくなったのだ。
そして枷を失ったオメガモン達は本来のスピードで…。
【はあっ!!】
オメガモンの剣。
マグナモンXの拳。
バンチョースティングモンBMのドリル。
ラジエルモンの爪。
それらがディアボロモンの体を貫いた。
そして、その直後にマンションの横に流れる川に核ミサイルが墜落したが、爆発はしなかった。
時計が止まったのは、ギリギリ1秒前であった。
「「間に合った…」」
「「ふぃ~」」
腰を抜かす現実世界に帰還した太一と芽心。
そして色んな意味で力尽きたアグモンとメイクーモンであった。
そしてウォーゲーム終了後に解散し、太一は芽心を送り届けながらパートナーを労う。
「よく頑張ったなアグモン」
「はあ~もうクタクタだよ。お腹空いた~」
「おお、母さんに頼んでご馳走を作ってもらうか」
「ア、アグモン…」
「ん?何?」
アグモンが振り返るメイクーモンがしょんぼりしたような表情を浮かべていた。
「その…ごめんだがん」
「へ?……ああ、別にいいよ。全然気にしてないよ。多分君がいなかったらあいつにやられてたし」
「アグモン…」
「お互い迷惑かけて助け合ったんだからおあいこだよ。ね?」
「だがん!!」
アグモンとメイクーモンのやり取りを微笑ましげに見ていた芽心も太一に向き直った。
「良かったねメイちゃん…それじゃあ私、失礼しますね」
「ん?ああ、今日は本当にありがとな。ケーキとかもそうだし、あいつとの最後の戦いも」
「そんな…私はただ…戦ったのもメイちゃんだし…沢山迷惑も…」
「アグモンも言ったろ、俺達も迷惑かけて芽心ちゃん達に助けられたんだ。それにしても…」
「?」
太一が遠い目をしながら明後日の方角を見つめる。
「今回で俺達の纏まりの無さを痛感させられたな。」
「あ…はは…」
選ばれし子供は良くも悪くも個性が豊かな面子が集まっているのだ。
まあ、まだ協調性がある仲摩を確認出来たのは良かったかもしれない。
芽心を自宅付近にまで送ると太一は口を開く。
「んじゃあ、またな芽心ちゃん」
「はい、太一さん。」
「ん?」
「本当に今日はありがとうございました」
「別にいいって、俺達は同じ選ばれし子供だろ?芽心ちゃんもメイクーモンも俺達の仲間なんだからさ」
「…はい!!」
笑顔を浮かべる芽心に、よく見ると可愛いなと太一は思う。
空やミミとはまた違う魅力があるというか…。
「って、何考えてんだ俺は」
「?」
「何でもない。じゃあな」
太一は手を振って自宅に戻るのであった。
「ただいま」
「お帰り太一。芽心ちゃんをちゃんと送った?」
「ああ、ちゃんと家の前まで」
「そう、それにしても太一が空ちゃん以外の女の子を連れてくるなんて最初は驚いたわよ」
「だって芽心ちゃんの世話しろって先生とかに言われたしさ…(それに同じ選ばれし子供だし…)」
太一は後者はあまり言わないようにした。
裕子はそんな太一を見て更に男らしくなったと感じた。
「太一、そろそろ夕飯出来るからヒカリを呼んできて」
「ああ、帰ってきてたのかヒカリの奴。今頃、お誕生日会のことでテイルモン達に喋ってんだろうなあ…」
太一が部屋を開け、中にヒカリがいることを確認して声をかける。
「おーい、ヒカリ。飯だ…ぞ…?」
「ネエ、テイルモン。大輔君ノ作ッタゴージャスケーキハ美味シカッタ?ドンナ味ダッタ?プリンハ何プリン?ドンナ果物ガ載ッテタノ?ネエ、テイルモン?聞イテルノ?私ノ話ヲチャント聞イテルノ?ネエ?」
「ふがふが…ひ、ひはり…ふぉをひっふゃららいへ…ごへんなふぁいごへんなふぁい…」
ヒカリの目からハイライトが消えており、体全体から名前とは正反対の性質のオーラを放っていた。
そしてテイルモンを恨めしげな言葉を放ちながら両頬を引っ張っている。
「……………」
太一は無言のまま、ゆっくりと部屋の扉を閉めてこの場を立ち去った。
「あら、太一。ヒカリは?」
「取り込み中だった」
「?」
取り敢えず食い物の恨みは恐ろしいことを改めて学習した太一。
「変に意地張らないで断って行けば良かったのによ」
「何の話?」
「いや、何でもない……」
数分後、すっかり元通りとなったヒカリと両頬が真っ赤になったテイルモンが降りてきたのであった。
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