隠した心
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第三章
「それでだよ」
「だからですか」
「まなみを好きになっているんだよ」
「私の何処がいいのか」
「だから人は案外大きくて小さい」
またこのことを言う従兄だった。
「見られるものもな」
「大きくて小さいですか」
「まなみのいいところも見られたんだ」
「大きくですか」
「自分はないと思っていてもそれが案外大きくて」
それでというのだ。
「見てもらってな」
「慕ってもらっているんですか」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「だからな」
「私を慕ってくれているんですね」
「そうだよ、僕だってまなみは嫌いじゃないし」
「私の何処が」
「いつも助けてくれるし公平で裏表がないからだよ」
そうしたことをしてもらって性格を見てもというのだ。
「だからだ」
「それで、ですか」
「嫌いじゃないよ、まなみは自分で思っているよりも実はずっと暖かくて」
「見てくれている人が見ていてくれて」
「慕っているんだよ」
「だとすれば嬉しいです」
まなみはここまで聞いて述べた。
「本当に」
「そこで嬉しいと思うことが何よりの証拠だよ」
「心があるということの」
「暖かい心がな」
「若しそうなら」
まなみは従兄のその言葉を聞いてだ、自分もお茶を手に取りつつ話した。今も奇麗な緑色のお茶を淹れている。
そしてだ、そのお茶を口に近付けつつ話した。
「嬉しいです」
「そうか、嬉しいか」
「そう感じます」
こう言ってお茶を飲んだ、その時だった。
まなみの口元は僅かで一瞬だが確かに笑った、その口元を見てだった。
従兄は笑みになってだ、こう言った。
「僕も見せてもらったよ」
「何をですか?」
「暖かさをね」
まなみの中にあるそれをというのだ、それをまなみ自身に言った。そうして笑みを浮かべて自分もお茶を飲むのだった。まなみが淹れてくれたその美味しい抹茶を。
隠した心 完
2018・6・17
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