隠した心
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第二章
「ありません」
「そうなのか、しかしとは」
「しかし?」
「人は絶対に何かが出来るだろう」
「絶対にですか」
「まなみにだってな」
このことは当然として、というのだ。
「出来るだろ」
「そうでしょうか」
「その真奈美さんに対してもな」
「そうであればいいですが」
「出来るん、人間は自分達が思っている以上に大きくてな」
そしてというのだ。
「同時に小さいんだよ」
「大きくて小さいですか」
「ああ、そしてまなみもな」
「私もですか」
「まなみは自分が小さいと思っているみたいだけれどな」
「私が思っているよりもですか」
「大きいものだよ」
まなみが淹れてくれたお茶を飲みつつ彼女に話した。
「そうなんだよ」
「そうですか」
「だから友達や周りの人にも与えるものは大きいし」
「そして受けるものもですね」
「大きい筈だよ、そしてその中で少しずつでも」
従兄はまなみに深い叡智を感じさせる顔と声で話した。
「その表情を変えていけばいいかもな」
「いいかもですか」
「そこはまなみがどう思っているかだな」
「私がですか」
「ああ、自分がどうしていきたいかな」
まなみ自身がどう思っているかというのだ、まなみは従兄のその言葉を受けた時は自分が今みたいに思われていることは仕方がないと思っていた、実際に表情を変えていないからだ。そして感情も見せないからだ。
だがその彼女の周りにいる親友の伊織杏子や他の数少ないが確かにいる友人達そして屋敷で彼女の世話をしている者達は次第にわかってきた。
「感情は滅多に見せないけれど」
「それでもね」
「いつも気配りしてくれて」
「公平で心も広くて」
「絶対に怒らないし」
「凄くいい人よね」
「実は」
こう話した、そしてだった。
親友と言っていい杏子をはじめとして友人達も周りの者達も無表情で感情を見せないまなみを慕う様になっていた。そのまなみにだ。
従兄はまたまなみにお茶を淹れてもらってそのお茶を飲んでいる時に話した。
「友達や屋敷の人達には慕われているみたいだな」
「どういう訳かわからないですが」
「見ている人は見ているからな」
だからだというのだ。
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