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永遠の謎

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350部分:第二十三話 ドイツのマイスターその五


第二十三話 ドイツのマイスターその五

「指輪がです」
「指輪?」
「ニーベルングの指輪」
「それがですか」
「あの作品が」
「私は観ることができるようになります」
 その作品についてもだ。王は想いを馳せるのだった。
「遂にです」
「ですがあの作品はです」
「まだ完成には至っていないのでは」
「最後までは」
 周囲はすぐにだ。その指輪について話した。
「最後の最後まではです」
「確か神々の黄昏まではです」
「そうだったと思いますが」
「確かにそうです」 
 そうだと認めはする王だった。
「あの作品は最後まではできていません」
「それではまだ御覧になられないのではないでしょうか」
「ラインの黄金やワルキューレはできていても」
「まだもう少しの我慢がです」
「必要なのでは」
「そうですね。まだですね」
 王は彼等の言葉に一旦足を止めた。
 だがすぐにだ。その足を進めてだった。
 周囲にだ。こう話すのだった。
「しかしラインの黄金やワルキューレはありますね」
「確かにそうした作品は完成しています」
「既にです」
「では上演は可能です」
 そのだ。ラインの黄金やワルキューレ等に限りだ。
「私は観ることができます」
「では上演をされるのですか」
「そうした作品をですか」
「陛下が」
「できます。私は」
 王にはだ。それは可能だというのだ。
 だが周囲はだ。すぐにこう言ってだ。王を止めに入った。
「ですが陛下、それはです」
「為されては如何でしょうか」
「それはとてもです」
「お勧めできません」
 こう話すのであった。王に対して。
「それを行えばワーグナー氏も快く思われないでしょう」
「ワーグナー氏は四つの作品を完成されてからの上演を望まれています」
「ですから先に上演されてはです」
「ではとても」
「それをされては」
「それはわかっています」
 王は唇を噛み締めてだった。
 そのうえでだ。周囲に述べた。
「ワーグナーはそのことを快く思わないでしょう」
「ではやはりです」
「それはされるべきではありません」
「全ての作品の完成を待たれるべきです」
「そうされましょう」
「わかっています」
 またこう言う王だった。
「ですが。私は待ち望んでいます」
「指輪を御覧になられることをですね」
「そのことはどうしてもですか」
「そうです。どうしてもです」
 まさにだ。そうだというのだった。
「指輪を観られたらどれだけ幸せなのか」
「ニーベルングの指輪を」
「あくまで想われますか」
「指輪はかつてはワーグナーも完成を諦めました」
 困窮の中でだ。作品の上演は無理だとだ。ワーグナー自身も思ったからだ。だがそれは王が彼を庇護したことで可能となったのだ。
 
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