永遠の謎
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351部分:第二十三話 ドイツのマイスターその六
第二十三話 ドイツのマイスターその六
その王だからこそだ。今こう言うのだった。
「しかし今はそれが可能になりました」
「そしてですね」
「ワーグナー氏の作品のみを上演するあの劇場」
「その劇場もですね」
「築かれるのですね」
「至高の芸術にとっては相応しいことです」
王は確信の下に話した。
「だからこそです」
「ワーグナー氏の為の劇場」
「ワーグナー氏の為だけにある場所ですか」
「それをこのバイエルンに築かれますか」
「ミュンヘンに」
王のいるだ。その王都にだというのだ。
「そしてこの都はドイツに、いやこの世におけるです」
「ドイツだけではなくこの世に」
「この世においてなのですか」
「はい。この世における至上の芸術の都となるのです」
微笑みだ。こう話すのだった。
「ワーグナーの芸術。その芸術の聖地となるのです」
「聖地ですか」
「このミュンヘンが整地になりますか」
「ワーグナーの作品がその整地を築きます」
まただった。王は見ていた。
その目にタンホイザー、ローエングリン、そしてトリスタンを。そのうえでワーグナーが携えてくるであろうマイスタージンガーもだ。
そのうえでだ。やはりこの作品の話も出た。
「指輪もまた」
「やはり指輪もですか」
「このミュンヘンにおいて整地となる」
「そうなのですね」
「芸術は全てを清らかにします」
今度はこんなことも話すのだった。
「何もかもよ」
「この世もですね」
「清らかにしますね」
「その芸術の聖都」
ミュンヘンのことに他ならない。
「それはベルリンやウィーンにも劣らないものになります」
「このドイツにおいて」
「そうまでなりますか」
「戦いは人を荒ませます」
王にとっては戦争はそういったものにしか他ならない。このことは変わらない。
「ですが芸術は人だけでなくあらゆるものをです」
「今の御言葉通りですね」
「清らかにする」
「そうするのですね」
「ドイツだけでなくこの世も。清らかであれば」
そのだ。芸術によってそうなればというのだ。
「私はこのうえなく喜ばしいと思います」
「だからこそのワーグナー氏ですか」
「このバイエルンに戻されるのですか」
「そしてミュンヘンに」
「今度は手放しません」
ワーグナーを。その想い人をといったようにも聞こえる言葉だった。
「絶対に」
「絶対にですか」
「そうされますか」
「私達の絆はです」
それをだ。絆とまで話してだった。
そのうえでだ。王はワーグナーとの関係について述べてもいく。
「何があろうともです」
「それは離されない」
「二度とですか」
「若しもです」
若しも、やはり王はワーグナーとの絆を絶対だと思っている。
その絶対のものをだ。確信しつつだった。
「私達が別れるならば」
「そうならば」
「どうなるのですか?」
「私はおそらく全てが嫌になってしまうでしょう」
そうなるとだ。王は話すのである。
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