永遠の謎
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263部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その十三
第十八話 遠く過ぎ去った過去その十三
そうしてだ。王はさらにであった。彼は言うのであった。
「ではだ」
「では?」
「中に入るとしよう」
寺院のだ。中にだというのだ。
「これからな」
「そうですか。寺院の中に」
「外だけを見ては完全ではない」
完全主義者のだ。その王らしい言葉だった。
「中も見てこそだ」
「外だけでなく中も」
その二つを比べてだというのだ。
そして彼等はだ。その中に入るのだった。そうして中の美も見ていくのだった。
そうしたものを見ていってであった。王はだ。
フランスの中をさらに回っていく。そしてその美を見ていくのだった。
「素晴らしいな」
「はい、確かに」
「フランスの美は非常に素晴らしい」
見回った後でだ。王はホテルの中でホルニヒに話す。
ホテルは豪奢なものだった。まるで宮殿の様にだ。見事なソファーにテーブル、そしてカーテンは絹でだ。見事なものである。
その中でだ。王はホルニヒにさらに話すのだった。
「その美を全て見た訳ではないがだ」
「それでもなのですか」
「その美はわかった」
それはだというのである。
「そしてだ。それを持って帰ろう」
「バイエルンにですね」
「そしてドイツにだ。父の国だ」
ドイツをそう呼んだ。ドイツ人としてだ。
「その国に帰りだ」
「ドイツ。思えばです」
「どうしたのだ?ドイツに何かあるのか?」
「ドイツはこれまで長い間多くの国に分かれていました」
そうなのだ。実はドイツはだ。
「それが一つの国になるのだ」
「そうだな。ドイツは一つになる」
「そしてそのドイツに美を築かれるのですか」
「はい、しかし」
「しかし?」
「それは陛下にとってはなのですね」
「嬉しいことだ。だが」
しかしだというのだ。王は暗い顔で話すのだった。
「それ以上にだ」
「悲しいことですね」
「バイエルンがそれを政治的に導くことはできないのだ」
「それはどうしてもですね」
「力がない」
それもだ。よくわかっている王だった。
「バイエルンにはそれだけの力がないのだ」
「あるのは」
「プロイセンだ」
まさにだ。そのプロイセンだというのだ。
「あの国にあるのだ。そしてだ」
「ドイツの統一はプロイセンによって為される」
「そうなる。それは避けられない」
王の言葉には悲しみがある。諦められない悲しみがだ。
その悲しみを見せたままだ。王は己の向かい側に座っているホルニヒに話すのだった。その手にワインが入ったグラスを持ちながらだ。
「どうしてもだ」
「プロイセンですか」
「政治的統一は正しい」
王はそれはいいとした。
「しかしだ」
「しかしなのですか」
「私はあることでドイツを統一すべきなのだろう」
「ではそれこそが」
「美だ」
それをだ。ここでも出すのだった。
部屋の中は暗い。夜のその暗さの、灯りの薄暗い中でだった。
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