| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十五話 霧の都その六

「あの魔術師はである」
「一人でか」
「勝ち続けているのである」
「この闘技場でかよ」
「人もモンスターも」
「どんな相手でもか」
「倒していっているである」
 こう久志に話すのだった。
「魔術師でありながら」
「普通魔術師っていうとな」
 久志はその男に常識から話した。
「冒険の中でのバトルでも戦場でもな」
「後方からであるが」
「術で援護するものだろ」
「そうである、しかしである」
「あの魔術師はかよ」
「たった一人で、ある」
「どんな奴も倒していってるんだな」
「この闘技場である」
 そうしてきているというのだ。
「恐ろしいことにである」
「どういった戦い方をすれば出来るのかな」
「興味はあるであるな」
「ああ」
 その通りだとだ、久志は男に答えた。
「一体な」
「見るである」
 男は久志に真顔で答えた。
「これからその闘いぶりを」
「どう闘うか、か」
「見れば驚くである」
 男の顔は真顔のままだった。
「魔術師でありながらどうして巨獣を倒すのか」
「それ見せてもらうな」
「とくと見よである」
 こう言ってだ、男はその戦ぶりを見た。そしてだった。
 魔術師とベヒーモスの闘いがはじまった、巨獣は凄まじい唸り声をあげてそのうえで魔術師に突進した、しかし。
 魔術師は素早い動きで宙に舞い上がった、久志はそれを見てすぐに言った。
「浮遊の術か」
「はい、あの術ですね」
 順一はその術を見て言った。
「まさに」
「それを格闘に使うか」
「中々考えていますね」
「そうですね、しかし」
「ああ、それでもか」
「これで終わりではないですね」
「これからだな」
 久志は確信を以て言った。
「ベヒーモスはあれだけで相手には出来ないからな」
「はい、熟練の重装備の戦士でもです」
「一対一じゃまず負ける様な相手だ」
 その強さ故にだ、この島でかなり強大なモンスターなのだ。
「浮遊の術だけで倒せないからな」
「絶対に」
「だからな」
「これからさらにどう闘うか」
「見せてもらうか」
「そうしましょう」 
 順一は久志の言葉に頷いた、それは他の面々も同じだった。彼等は皆魔術師の次の動きを見守った。
 ベヒーモスは空に上がった魔術師に跳び上がって襲い掛かった、巨体からは想像も出来ない素早い動きだった。
 だが魔術師は空中でその動きもかわした、そして空中に留まったまま。
 今度は分身した、その身体が二つ三つ四つと増えていきやがて七つまで増えた、そうして。
 その七つの身体でだ、術をさらに使った。防壁等の己の身体を守る術を使っていく。久志はそれを見てあることに気付いた。
「魔術師の術だけじゃないな」
「僧侶の術も使っているし」
 今度は源三が言った。
「錬金術や超能力もね」
「ああ、時の魔術も使ってるな」
「全部な」
「流石に魔術よりは威力が落ちるみたいだけれど」 
 それでもだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧