レーヴァティン
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第七十五話 霧の都その七
「色々な術を使っているね」
「獣の術も使っているしな」
「そうである」
ここで先程の男がまた言ってきた。
「あの者は魔術師であるが」
「魔術以外にもか」
「様々な術を使うである」
「それが出来るのはな」
「外の世界から来た者である」
「これで確信したぜ」
久志はあらゆる分野の己の身体を守る術を出していく魔術師を見て言った、速度を速める術や霧で相手の目を惑わす術も出している。
「あいつは十二人の一人だ」
「間違いないね」
源三も答えた。
「これは」
「ああ、そうじゃないとな」
「あらゆる術をね」
「あそこまで使えないからな」
「まずはね」
「あそこまで色々な術を使えるなんてな」
それこそとだ、また言う久志だった。
「俺達だけだからな」
「だからね」
「ああ、それじゃあな」
「この闘いが終わったら」
「声をかけるか」
「そのことが決まったね」
「これまで以上にな」
このことも話した、そしてその彼等の目の前で。
魔術師は一撃離脱で跳び上がって襲い掛かり続けるベヒーモスの素早い攻撃を紙一重でしかも分身まで使って闘いつつだった、そうして。
七つの身体で攻撃していく、その七つの身体の手の平からだ。
様々な属性の魔法それも高位のものばかり繰り出す、そうしてベヒーモスを次々と攻め立てていた。
その闘いぶりを見てだ、正は唸って言った。
「あれはな」
「相当だな」
「ああ、戦上手だな」
こう言うのだった。
「恐ろしいまでの」
「御前でもそう言う位だからな」
「相当だっていうのがわかるな」
「ああ、俺もそう思うしな」
久志は唸りつつ言った、恐れを知らない巨獣は攻撃にもダメージにも怯むことなく攻撃を続けている。だが魔術師はその攻撃をかわしつつだった。
分身達も使って宙から攻撃し続けている、正もそれを見て言うのだ。
「ただ分身をするだけじゃないか」
「普通分身は目くらましだけれどな」
「そこにさらにな」
「術を繰り出すとかな」
「出来ることは出来ますが」
夕子も言った。
「ですがそうなるまでは」
「相当にだよな」
「術の力が強くないと」
さもないと、というのだ。
「出来ません」
「そうだよな」
「そのうえでそれを有効に使い」
「闘いを有利に進めているな」
「ベヒーモスは体力もかなりです」
そちらは個体によってはドラゴン以上とも言われている、防御力や術への耐性もかなりだが体力でもかなり強力なモンスターなのだ。
「しかし」
「そのベヒーモスにああしてか」
「術を浴びせていけば」
「倒せるな」
「一撃で駄目でもです」
それでもというのだ。
「何十何百と浴びせていけば」
「倒せるな」
「はい、しかしそれも」
「最初の一撃をかわせないとな」
「あれだけの動きは」
ベヒーモスの最初の突進をかわした、それはとだ。夕子は強い声で述べた。
「そうそう出来ません」
「魔術師だと余計にな」
「魔術師は格闘には向いていません」
この事実をだ、夕子も言うのだ。それは紛れもないこの島においては絶対と言っていいことの一つだからだ。
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