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永遠の謎

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226部分:第十六話 新たな仕事へその二


第十六話 新たな仕事へその二

「だからこそ誰もがです」
「結婚するというのですね」
「そうです。愛があればこそです」
「愛、尊いものです」
 王もよくわかっていた。このことはだ。
 だが今はだ。その尊いものに対してだ。何故か悲しみを見せる。
 そのうえでだ。公にこう話すのだった。
「ただ。それは」
「それは?」
「女性に向けられるものですね」
「御言葉ですが陛下」
 甥の嗜好はわかっている。そのうえでの言葉だった。
「騎士は姫を愛するものです」
「そして姫は騎士をですね」
「愛するものですか」
 例えてだ。こう話したのだった。
「ですから」
「わかっています」
 王の返答はこれであった。
「私も。わかっているのです」
「あくまで。そちらはです」
 男色について。公はやんわりと表現した。
「遊びに留めて」
「女性をですか」
「愛されてはどうでしょうか」
「そして后をですね」
「迎えなくてはなりません」 
 后を迎えるそのことはだ。義務だというのだ。
 その義務についてだ。公はさらに話した。
「ですからどなたかを」
「愛。愛は」
 王はだ。叔父である公の言葉を受けてだ。こう話したのだった。
「異性を愛するものですね」
「その通りです」
「では。私は」
 王はここでも遠い目になった。そのうえでの言葉である。
 その遠い目で見ているものは何なのか、公にはわからない。しかし王はそこにあるものを見ながらだ。こう話したのだった。
「歪んでいるのですね」
「それは」
「男性しか愛せない私は」
「そのことですが」
 己を否定しだした王にだ。公は。
 何とか取り繕いながらだ。思い出した様にしてこう話すのだった。
「オーストリア皇后がです」
「シシィですね」
「はい、あの方が言っておられました」
 王と親しい数少ない女性である彼女の話を出してなのだった。事実でありそれはだ。今の王にはよいと判断しての話である。
「陛下は女性を愛されないのはむしろ」
「むしろですか」
「それが普通なのだと」
「私はそれでなのですか」
「私にはどういった意味かはわかりません」
 それはだ。公にはというのだ。
「ですが確かにそう言っておられました」
「私が女性を愛せないのは」
「どういうことでしょうか」
「はじめて聞きました」
 王は叔父の言葉にこう返した。
「シシィがそんなことを」
「そしてです」
 さらにであった。公はもう一人の名前も出した。
「プロイセンのです」
「ビスマルク卿ですね」
「あの方も言っておられました」
 不思議とだ。王に対して深い敬愛を見せるプロイセンの宰相の名前も出すのだった。王も彼に対しては敬意を見せている。
「陛下の御婚姻はです」
「それはですか」
「焦ることはないと」
 このこともだ。王に伝えたのである。
「そう言っておられたとのことです」
「焦る必要はない」
「はい、決して」
 そうだというのである。
 
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