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永遠の謎

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159部分:第十一話 企み深い昼その一


第十一話 企み深い昼その一

                  第十一話  企み深い昼
 王の下にだ。悲しむべき報告が入って来ていた。
「それはまことか」
「はい」
「残念ですが」
 侍従達が王に話していた。彼等は今王宮の中にいる。そこでだ。王に対してその悲しむべき報告を述べていた。そしてなのだった。
 王もその話を聞いてだ。暗い顔で述べた。
「早いな」
「はい、まだ若いというのに」
「それでもです」
「急死でした」
「妻君が病になったと思えば」
「私はだ」
 王はだ。ここでまた話した。
「妻君の病を心配していたのだが」
「はい、私もです」
「私もそう思っていました」
 侍従達もだった。それは同じなのだった。
 ところがだ。彼等はここでまた話した。
「ですがそれでもです」
「夫君がまさか」
「急死するとは」
「わからないものです」
 こうも言うのだった。わからないとだ。
「人の運命というものは」
「まだ三十の若さで」
「どうしてでしょうか」
「あの方が死ぬとは」
「素晴しい歌手だった」
 王はここでも遠くを見る目になった。そしてその彼のことを話した。
「トリスタンを歌うに相応しい歌手だった」
「まことに」
「あの方ならばこそ歌えました」
「しかし。舞台が終わってすぐに」
「あの様にして」
「死か」
 王は今度はこの言葉を口にした。
「彼もまた死に魅入られたのか」
「死ですか」
「それにですか」
「魅入られたと」
「そうなのではないのか」
 こうだ。王は言うのだった。
「トリスタンとイゾルデは死の作品だ」
「二人は死によってその愛を成就させた」
「その死。愛の死」
 そのオペラの最後の歌だ。イゾルデが歌う。その歌は第一幕前奏曲と並ぶトリスタンとイゾルデの象徴とも言える曲なのである。
 それを話しながらだ。王は彼のことを話した。
「ペーター=フォン=カルロスフェルト」
「惜しい歌手でした」
「彼のことはですか」
「忘れないのですね」
「忘れる筈がない」
 それはないというのだった。
「決してだ。それはない」
「あれだけの素晴しい歌手は」
「決してなのですね」
「トリスタンの死に魅入られたのか」
 王の言葉にまた悲しみが宿った。
「彼もまた」
「そうして旅立ってしまった」
「そうなってしまったと」
「陛下は」
「冥福を祈ろう」
 沈んだ声だった。だがそれでも話した。
「心からな」
「はい、それでは」
「今は」
「その冥福を」
 彼等はこう話してだ。王と共にその歌手、カルロスフェルトの冥福を祈るのだった。王は今一人の歌手の死をだ。心から悲しんでいた。
 その彼のところにだ。ワーグナーが向かっていた。屋敷を出る時にだ。
 
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