| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

人徳?いいえモフ徳です。

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

二十一匹め

「シラヌイ。話がある」

「どったのボーデン?」

風呂から上がると、ボーデンがシリアスな顔をしていた。

「お前のスキルの事だ」

ボーデンはバスローブのまま、僕にステータスプレートを手渡した。

「そこのスキル欄。<エナジードレイン>ってあるだろ?」

エナジードレイン?

ステータスプレートを確認すると確かにそう書いてある。

「知ってたか?」

「全然」

「だろうな。それ、タマモ様が封印していたスキルらしいぜ」

「そうなの?」

「お前の記憶が解放されたのと同時に解かれたそうだ」

なるほどー。

「理由は、危険なスキルだからだ」

「魔力の過剰供給とか?」

「いや、無意識に発動する場合だ」

「これってパッシブスキルなの?」

「半パッシブスキルだ」

半…。

「恐らく、お前が望めば様々なエネルギーを吸いとれる。
それは別にいい。問題は、無意識に他者の魔力を吸うことだ」

まるで某猫委員長だなぁ。

「正確には、お前の魔力が不足している場合、触れた者の魔力を急速にすいとる」

「へ━━」

「真面目に聞け。もう少しでメリーが昏睡する所だったんだぜ」

え……? 今なんて言った? メリーちゃんが昏睡?

「どういう事ボーデン!?」

気付けばボーデンに掴みかかっていた。

「落ち着け。話を聞け」

ボーデンの手が僕の手に重なる。

「まぁ、ただの魔力切れで済んだから大事にはなってない」

「そっか…よかった…」

「だから明日王宮に行くぜ。タマモ様に会おう」

お婆様か…うん…お婆様なら…。

「わかった…。行くよ。事は重大だね…」

「ああ…重大だ…。なんせこのままではお前をモフれない」

うん…僕をもふ……………

「ってやっぱそっちかよ‼ 僕のシリアスをかえせ!」

「滅茶苦茶シリアスだろうが! このままじゃお前を抱いて寝るだけで衰弱死だぞ!」

「抱くなよ!」

「 私をこんな体にしといてよく言えるなシラヌイ!」

「どんな体にしたって言うんだ!」

「モフモフがないと眠れない体にっ…!」

「死ねよお前! ケモナーでショタコンとか救い様のない変態じゃないか!」

もうやだコイツ!

「今日は抱き枕にしないが明日は必ずっ…!」

決めた。明日は寝る前に何か宝石でも錬成しよう。

「ぜったいさせないもん」

今日もなんか造っとこう。

うん……窓は開いてるね。

詠唱どうしようかなぁ…。

かっこよくて、それでいて分かりやすくて、手順が想像しやすくて…

いやそもそも何を作ろう?

「ボーデン。ダイアモンド錬成できる?」

「あん? できなくはねぇが……」

そっか、ダイアモンドは作って大丈夫なんだね。

じゃぁ、つくっちゃおうかな。

素手はあぶないから…

近くにあった皿を持つ。

「集え、集え、人の息。重なれ重なれ大気の灰」

ヒュゥッと風が吹いている。

吹き込んだ風が、お皿の上に集まる。

「集え、集まれ、姿を顕せ」

風魔法で二酸化炭素を集めて、液体化させる。

「重なり、結べ、形を成せ。
ジェネレート! ディアマント・ナイフ!」

液体二酸化炭素から炭素原子だけが引っ張られ、形を為す。

色々ごっそり持っていかれたけど、楽しい。

イメージを絶やさず、集中を途切れさせないよう注意を払う。

分子の強制分離とかに魔力を持っていかれているのがわかる。

さらには無理矢理ダイアモンドの分子構造を作っていくのも…

「鋭く、硬く、全てを切り裂く金剛の刃」

最後に、キンッ…と音がして、形が固定された。

刃渡り15センチ程の、純粋ダイアモンド製ナイフ。

液体酸素の入った皿を置き、隣にダイアモンドナイフを置く。

体のあらゆる物が消失した感覚だ。

ああ…コレが魔力切れなんだね…。

「お休みなさい。ボーデン」

その気だるさに身を任せ、僕は体から力を抜いた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧