空に星が輝く様に
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498部分:第三十九話 あの場所へその八
第三十九話 あの場所へその八
「じゃあ。呼んでみて」
「佐藤さん」
椎名は実際に彼女の名前を呼んでみせた。
「どうかな」
「いいじゃない」
星華も椎名の今の呼び名に微笑んで返した。
「その呼び方」
「気に入ってくれた」
「ええ、そうよ」
その通りだとも答えた。そして今度は彼女から言った。
「じゃあ私もね」
「佐藤さんも」
「あんたのこと。呼んでいいわよね」
こう彼女に問うのだった。
「それでいいわよね」
「うん、じゃあ呼んでみて」
「椎名・・・・・・さん?」
少し戸惑いながら。こう呼んでみせたのだった。
「どうかな。気に入ってくれた?」
「うん」
椎名もだ。微笑みを星華に向けてだ。そのうえで告げたのだった。
「いい」
「いいのね。じゃあ」
「こう呼ぶから」
笑顔で話す椎名だった。
「これから」
「そうしてね。それと」
「それと?」
「ねえ、これからどうしようかしら」
星華はこれからのことを椎名に尋ねた。
「ここから帰ったらね」
「そのままお家に帰ろう」
これが椎名の言葉だった。
「まっすぐに」
「まっすぐになの」
「そう、確かに誰が来てもやっつけられる」
その自信はあった。確かにだ。
「確実に」
「確実になの」
「そう、けれど」
それでもだとだ。椎名は慎重な口調で述べた。
「それでも」
「それでもなの」
「自分から危険なことをすることはない」
こう話すのだった。椎名は慎重論だった。それを言うのである。
「だから。真っ直ぐに帰ろう」
「そうね。それじゃあ」
「今日だけじゃないから」
「今日だけじゃないの」
「そう。またここに来よう」
最初に話に出した場所はこの港だった。
「他の場所にも」
「あのプラネタリウムも」
「そう、他の場所も何処も行けるから」
こう話すのだった。
「だから」
「それでなのね」
「今日は帰ろう」
「また。次ね」
「そう、次」
椎名はその言葉にだ。こうした意味も込めた。そしてそれを言うのだった。
「次があるから」
「次がなの」
「次はある。だから今は帰ろう」
「そうね。次があるわよね」
椎名の言葉にある意味がよくわかった。それでだった。
星華は頷いてだ。あらためて彼女に言った。
「だから今はね」
「そういうことだから」
「わかったわ。じゃあ」
こうしてだった。二人はだった。
この日はそのまま帰った。だがそれからだった。
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