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空に星が輝く様に

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497部分:第三十九話 あの場所へその七


第三十九話 あの場所へその七

「お星様は」
「それ自体が奇麗だから」
「しかも一つじゃない」
 いいところはさらにあるというのだ。奇麗なだけではなくだ。
「一杯あるから」
「そうね。どれだけあるかわからない位に」
「まさに星の数だけある」
 椎名は今度はこう言った。
「数え切れないだけ」
「奇麗なのが数え切れないだけあるのね」
「奇麗なものが一杯あって悪いことはない」
「それを考えたら」
「夜空程いいものはないから」
 椎名は話す間もずっと夜空を見上げている。星華も話を聞きながら同じことをしている。その無数の星達を見上げているのである。
 それを見てだ。星華はまた言った。
「ねえ。見てると」
「見てると?」
「このまま夜空に吸い込まれそうよね」
 微笑んでだ。こう椎名に言うのである。
「何かこのまま」
「そう。あまりにも奇麗だから」
「そうよね、それはね」
「それと」
 椎名の言葉がここで変わった。こうしたものにだ。
「星の数だけって言ったけれど」
「それが何かあるの?」
「お星様は幸せでもあるから」
 そうだというのである。
「それは」
「幸せなの」
「そう、お星様は幸せ」
 今度はこう星華に話すのである。
「そして恋でもあるから」
「言いたいことはわかったわ」
 そこまで聞けばだった。星華は椎名に笑顔で返して述べた。
「恋も星の数だけっていうのよね」
「そう。数え切れないだけあるから」
「けれどこうも言うわね」
 星華はあえてである。意地悪い笑みを作って椎名にこう言ってみせたのだった。
「恋はダイアモンドよりも見つけられないって」
「歌の歌詞ね」
「ええ、シングルベット」
 しゃ乱Qの曲だ。アニメのエンディングの曲にもなった。
「それにあったじゃない。見つけられないものじゃないの?」
「ダイアなら」
 しかしであった。椎名はここでもすぐに言ってみせたのだった。
「一杯ある」
「ないから高価なんじゃないの?」
「ほら、そこにある」 
 椎名は見上げているだけでなく上を指差してきた。そうしてであった。
 その星達を指差しながら。こう星華に告げた。
「一杯。あり過ぎて困る」
「困るって?」
「ダイアは夜空にもあるから」
「まさかそれって」
「白く光るお星様」
 それだというのである。
「それが。ダイア」
「そう言われたら」
「そう。一杯あるもの」
 こうだ。今も同じく夜空を見上げて星達を見ている星華に話すのだった。
「それも数え切れないだけ」
「ダイアは。あのダイアだけじゃなくて」
「夜空にもある。ダイアだけでなく」
 それだけではないとだ。さらに言うのだった。
「サファイアもルビーも。一杯あるから」
「恋もそれだけあるのね」
「そう。お星様の数だけあるから」
「そうかもね。それじゃあ」
「佐藤さんって呼んでいい?」
 椎名ははじめて彼女の名前を言ってきた。
「そう呼んでいいかな」
「えっ、ええ」
 少し戸惑いを見せてからだ。星華は椎名のその問いに答えた。
「そういえばまだお互い名前で呼び合っていなかったわね」
「そう。だから」
「そうね。それじゃあ」
 一呼吸置いてから。椎名のその問いに答えた。
 
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