東方刑務所の人狼ゲーム
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残り一人のジンロウを探して~零side~
――――――――ダイヤが無残な姿で発見された。
一歩間違えれば死のゲームは段々と終わりに近づいてきていた。
村人の勝利条件である「人狼を全員処刑すること」までは、あと最短で二日。人狼の勝利条件である「人狼の数が村人の数と同数になること」までも最短で二日。狩人の判断次第で掛かる日数は変わってくるが、そろそろこのゲームも終わることはわかっている。
村人の残りはあと五人。人狼の残りはあと二人。
きっと、最後の決め手は一条兄妹の判断になってしまうのだが、別にそれでもいい。僕は与えられた役職の使命を全うすればいい。そうすればきっと僕への依頼主は満足してくれるはずだから。
「まさかダイヤくんが、ねぇ……」
―――――輝さん、貴方は僕の仲間だ。
「てっきり俺が殺されるかと思ってた……くそっ」
――――残念だったね、陽。ここで君を殺したら、きっとすぐに人狼の正体がばれてしまう。
「ごめん……私の読みが間違っていたから……」
――――いいや。聖月の読みは当たっているよ。本当なら陽を襲う予定だったからね。
「いいや、聖月は悪くないよ。人狼だって、狙いを読まれてターゲットを変えたんだよ」
――――どこまでも勘が良いねぇ。せいかい。
「囚人組の最後が俺か……」
――――どう?最後まで取り残された今の気分は。達也。
「というか、看守組はまだ四人全員残ってんだな……」
――――あたりまえだよ。僕達だって考えて襲っていたんだよ?
「あと看守組が四人と囚人組が一人、吸血鬼組が二人。で、村人陣営が五人で、人狼陣営が二人だよ」
――――さぁて。今日は誰を人狼にしようか、輝さん。
残り一人のジンロウはどこまでも嘘つきじゃないといけないね。
「……なぁ。結局霊媒師って誰なんだ?」
「さぁ?でも、さすがにここまで減ると死んじゃっている可能性の方が高いよね」
殺気の言葉は嘘。村人の役職持ちは共有者一人を除いてまだ全員生き残っているはずだ。僕の読みで行くと、占い師が聖月で霊媒師が猿也さん、共有者が陽。となると狩人は一鶴だねぇ。やっぱり最初の方の読みは当たっていたね。
僕は一日目の襲撃で聖月を選んで失敗したときからずっと一鶴に目をつけていたからね。ずっと聖月を守っている使えない狩人さんが指を咥えて仲間の死を見ている姿は実に面白かった。何回か部屋で大爆笑してしまうほどね。
となると、今日は達也を吊るしかないみたいだね。
「今日はお兄ちゃんを占ったよ。で、村人だった」
あ、やっぱり輝さんは「 」だったんだね。輝さんはきっと最初から人狼が誰なのかが分かっていたんだ。もちろん、他の人の役職も。だから色んな人を人狼に見せ立てることができたんだ。
輝さんも聖月と同じく人の話をしっかりと聞く人だから、すぐに皆がどの役職かわかってしまうと思っていたけど、やはり合っていた。だからきっと妹の聖月もわかっているのだろう。
「とすると、零くんか達也くんが人狼かな?聖月はどう思う?」
輝さんが急に聖月に話を振ると、聖月は一度大きく肩を揺らしてから答える。
「私には分からない。けど、一ついいかな」
きっと、ここで僕か達也を疑ってしまったら最後、疑った方が今日の投票で最多票を獲得してしまうと思ったのだろう。その優しさはありがたく受け取りたいのだけど、そこで僕の名前を挙げても達也の名前を挙げても、きっと輝さんが正しい方へ持って行ってくれるはずだ。
「私と陽を除いた残り五人の中には狂人がいると思うの。占いで白とわかっていても、狂人の場合結果が白として出てしまうから、もう占いの結果なんて信じられなくなってくる頃だよ」
その読みは当たっている。実際、この五人の中には狂人の役職を持っている人が居て、今も場を狂わせようとしているから。
「今日からは狂人についても考えていかなきゃいけないと思うんだ……」
さて、狂人はどう出るだろう。白という結果の出ている狩人さんや霊媒師さんを狂人に仕立て上げるのだろうか。それともグレーである僕と達也のどちらかを狂人に仕立て上げるのだろう。
「そうだな。村人陣営が勝つには人狼も狂人も殺さないといけないんだ。だからどちらから殺しても同じか」
どうするのだろう。輝さんは。序盤から皆を引っ張ってきているのだから、きっと皆輝さんの言葉を信じるだろうから凄いよね。
「俺は狂人が猿也だと思うんだよね。まだ役職をカミングアウトしてないしね」
「僕も同意見かな」
ちょっと怪しかったかな。間に誰かを挟んでおけばよかったかもしれない。
「……俺は霊媒師だ!」
「でも、今になってポツリと出てくるっておかしいよね。狂人はいつも場を惑わせるんだ。今になって霊媒師を名乗ってもおかしくない」
「でも俺は‼」
どれだけ反論しようと、輝さんは全く動じない。その反論を一文字一句違えず予想していたかのような受け答えをしている。
「猿也は霊媒師だよ‼狂人じゃない!」
「どうして?その証拠はあるの?聖月」
「それはっ……ない」
聖月も結局お兄さんに負けてしまっている。彼女は押しに弱い性格なのかもしれないね。
「達也はどう思う?」
「俺も……輝さんがそう言うのなら、そうかもしれない……」
凄いよ輝さん‼確か初対面の達也を味方につけている‼
今回はちょっと押しが弱かった気がするけど、まぁ大丈夫だよ。
「さぁ、投票の時間だ。投票をしよう」
四日目 投票結果
聖月 → 輝
達也 → 猿也
零 → 猿也
陽 → 猿也
一鶴 → 零
猿也 → 輝
輝 → 猿也
――――猿也さんはどれだけ言っても自分から毒を飲むことをせず、ずっと暴れていた。
――――そんな猿也に、聖月は無理矢理毒を飲ませて殺した。
――――彼女は泣いていて、猿也がピクリとも動かなくなると、彼を抱きしめて泣いた。
――――初めて見るような彼女のその行動を見ていると、気が狂ってしまったように涙が出てきそうになる。
――――ここで涙を流しても無駄な事はわかっている。
――――だけど、僕を誤魔化すために涙を使おう。
この日、僕はこのゲームを始めて、初めて涙を流した。
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