東方刑務所の人狼ゲーム
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一歩間違えれば死のゲーム~達也side~
三日目の朝が来た。
今日は皆が家の裏にあるお墓の前にいる。今はセブンと雷のお墓しかないが、このお墓は段々と増えていき、最終的には八か九くらいの数になると思う。
「……ごめんね……ごめんなさい……ごめんなさい」
静かに言う聖月の横顔はいつにも無いくらい悲しそうに曇っていて、今は仲間であるため支えてあげたかったが、きっとこのゲームが終わればまた敵になってしまう。俺と聖月の間にある壁が消えることはない。
「……よしっ。今日はみんなに伝えたいことがあるの」
悲しみを乗り越えたのか、それともそのままにしているのかは分からないが、聖月は力強く立ち上がり、言葉を作った。
「二つ、皆に伝えたいことがあるの」
セブンや雷、そして沙耶香の気持ちを受け取ったのだろうか。強い光を瞳に宿し、強く透き通った声で話していく聖月。
「一つ目は占いについて。今日はレンを占って……黒、人狼だったよ」
たった九人であったが、何十人かでザワザワしているような感じがあり、どこか気味が悪い。きっと運営側の人も慌てているのだ。
「……違う、違う‼嘘なんて吐くなよ、聖月‼」
「嘘じゃない‼昨日の夜レンを占って、人狼だったの‼」
何回も何回も「違う」と主張するレンだが、悲しそうに言葉を吐き捨てる聖月の姿を見れば、聖月が本当のことを言っているのだと思ってしまう。
でも、きっと聖月が正しいのだ。聖月は俺達に隠し事は沢山作る。だけど嘘は作らない。それだけは長く同じ場所にいればわかる。
「俺さ、聖月が人狼の襲撃にあった時、聖月は『ハッキリと声が聞こえた』って言っただろ。その時、レンだけ大きく反応していたんだよな。……なぁレン。お前、本当に人狼だろ」
陽も良く人の反応見てるなー、と感心していると、陽のそこを突く発言が飛んだ。
「よ~う。僕が見るに、人狼は陽だと思うんだよね。だって、人狼は周りの反応を窺っていないとでしょ?陽はいつもあんまり周りを見るタイプじゃないと思うんだよね。ねぇ、陽が人狼なんじゃないの?」
零の発言に再度ざわめきが起こったような気がして、どこまでも気味が悪い。
「俺は共有者だよ。これ、雷から渡された、多分……遺言書」
雷の遺言書にはこう書かれていた。
『これは陽と一鶴さんと聖月さんがまず白であることを証明しています。僕は三人にそれぞれ暗号としてこの遺言書の隠し場所を教えました。なので、この手紙が見つかっているのなら三人は村人です。僕は一人の共有者として、もう一人の共有者を教えます。それは陽です。陽を疑わないでください。聖月さんも、一鶴さんも。どちらの陣営でも構わないから、ゲームを終わらせてね。』
一気に重くなる空気だが、それ以上に勇気が溢れてくる。皆揃って「ありがとう」と言うと、一斉に立ち上がって深く息を吐く。
目を閉じて、ゆっくりと息を吐き、またゆっくりと息を吸う。そして自分の頬をペチリと叩き、目を開ける。
皆それぞれが決意を固めたようで、目に宿る光が一層強くなっている気がする。
「なぁ、聖月。言っていいよな?」
猿也さんが口を開いたと思ったら、その言葉の意味は全く分からない。だが、聖月はわかるようで、その言葉を聖月はこう返していた。
「今日の夜レンを吊って、レンが人狼だったらいいよ。……いや、レンを吊ることができたら言ってもいいよ」
どうやら、聖月はレンが人狼だと確定しているようだ。恐らく誰かがどれだけ反論しても聞かない。輝さんの言葉に反論しても無意味だったように、聖月に反論しても無意味だという事はわかっていた。―――――わかっていたが、レンはやはり反論を続ける。それしかないのだ。
「俺は違う‼……そう言う聖月が人狼じゃ……」
そこまで言って息を飲むレン。
聖月は一日目の夜、人狼の襲撃に会って、そこで狩人に守られている。それに聖月は占い師だ。人狼な訳がない。どれだけ聖月が人狼だと言おうと、聖月が人狼でない理由はしっかりとある。その中で、一日目に犠牲が出ていないのと、人狼の襲撃に遭った人が聖月と雷以外に出てこないのがある。
聖月は村人。それはこの場の全員が分かっている事だった。
この日の会議の始まりはいつもより四十分程遅く、投票開始の二十分前だった。既に投票する人は決まっていたので、投票開始の数分前に集まっても良かったのだが、軽く皆で喋りたいという聖月の意見により、かなり早めに集まったのだ。
「ここまででわかったことを整理してみようか」
聖月 → 占い師・襲撃被害者
レン → 人狼?
達也 → 灰
ダイヤ → 灰
沙耶香 → 灰・死亡
セブン → 灰・死亡
零 → 灰
陽 → 共有者
雷 → 共有者・死亡
一鶴 → 白(狩人)
猿也 → 白(霊媒師?)
輝 → 灰
聖月が用意した紙に情報を加えていき、表を作る。
「……灰が残り四人、白が四人、黒が一人、死亡が三人だね。今日人狼が誰を襲うかは分からないから、上手く狩人さんが守ってくれるといいんだけど……」
心配そうな声色で聖月の方を見る輝さん。兄妹なのだから仕方ないのだろう。
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。狩人さんはきっと陽を守るって決めているはずだよ。私ばかり守っていても、周りのみんなが死んでいくだけで、仕方がないから」
静かに言う聖月だが、その声は震えていた。やはり聖月でも死ぬのが怖いということは他の人と変わらないのだろう。
「私の勝手な想像だけど、人狼はまだ二人いて、そのうちの一人がレンであることは多分正しいと思うんだ。あと、今日人狼は陽を狙っている事。間違っていたらごめんね」
「それは正しいと思う」と言おうと空気を吸った途端、この会議で初めてレンが反応を見せた。
「投票の時間だ」
三日目 投票結果
聖月 → レン
レン → 聖月
達也 → レン
ダイヤ → レン
零 → レン
陽 → レン
一鶴 → レン
猿也 → レン
輝 → レン
この日、レンは苦しむことなく、ゆっくりと――――――
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