| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

空に星が輝く様に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

364部分:第二十七話 護るものその七


第二十七話 護るものその七

「斉宮に言えばいいのに」
「あっ、そうよね」
「それはそうよね」
「何で言わないの?」
「それは」
「何でなの?」
「言えないのよ」
 星華は困った顔になって三人に言い返した。
「どうしてもね」
「つまり内気ってことね」
「つまりは」
「そういうことね」
「悪い?」
 困った顔でまた言う彼女だった。
「だって。どうしてもね」
「だからここで勇気を出してよ」
「そこまで好きなら最初に一気に言えばよかったのに」
「もうね。最初にね」
 三人は自分達の視点から言う。そうしてだった。さらに言うのであった。
「そうしたらかえって楽なのに」
「当たって砕けろじゃなくてよ」
「もう意地でもゲットするんだって」
「そういう意気でいけば何でも成功するのに」
「そこで言わないのがね」
「駄目なのよ」
 こう話す三人だった。しかしであった。
 星華はどうしてもそれを言えないのだ。実際に今も困った顔をしている。それで俯いてだ。どうしても言えずにそこにいるだけになっていた。
 そんな彼女を見てだ。橋口が彼女を気遣って言う。
「まあそれはいいとして」
「そうね。これからゲットすればいいんだしね」
「そうよね」
 三人はこれで頷く。そうして話を変えたのだった。橋口はこう言ってきた。
「それで宿題だけれど」
「ああ、数学の」
「それやった?」
 野上と州脇もすぐに言う。
「学校の宿題だけれど」
「それやった?」
「どうなの?」
「一応やったけれど」
 橋口は自信があまりなさそうな顔で言ってきた。
「それでもね。どうもね」
「難しいからね、あの宿題」
「できないわよね」
「ううん、どうすればいいのかしら」
「解ける?」
 こう言うだけだった。そしてだった。
 二人は実際にノートを出してきてそれを開く。何も書いてなかった。
 それでだ。困った顔で言うのであった。
「どうしよう」
「写していいかな」
 こう橋口に言うのだった。やや上目遣いになっている。
「全然わからないし」
「よかったらだけれど」
「別にいいけれど」
 橋口はこれといって断らなかった。すぐに言葉を返す彼女だった。
「どんどん写して。かなり間違えてると思うけれど」
「いいのよ、それはね」
「とりあえずやってることが大事だから」
 二人も写してもらう立場はわかっていた。それでの言葉だった。
 そしてだ。星華もだった。
 何時の間にかノートを持って来てだ。そうして言うのであった。
「私も。いいかしら」
「ええ、いいわよ」
 橋口は星華に対しても述べた。
「どうぞ」
「有り難う、それじゃあ」
「今からね」
 州脇と野上も続く。そうしてだった。
 三人は橋口の宿題を写させてもらった。それで窮地を脱したのだった。そしてその宿題はだ。月美はどうだったかというとだ。
「次の数学の授業ね」
「うん」
 そのことを椎名に話していた。彼女のノートを出してそれを見せながらだ。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧