空に星が輝く様に
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204部分:第十五話 抱いた疑惑その八
第十五話 抱いた疑惑その八
「冒険なあ」
「じゃあ何処がいいかしら」
「お化け屋敷」
声はまた言ってきた。
「それがいい」
「そうか、それでな」
「椎名は何処がいいと思うの?」
言ったのは津島だった。
「それで何処の遊園地がいいのよ」
「行ったんならわかるんだよな」
狭山も言う。実は二人はその声の色からもう察していたのである。
「どの遊園地?」
「それで何処がいいんだよ」
「八条テーマパーク」
椎名が薦めるのはそこだった。
「そこの遊園地はかなりいい」
「ああ、あそこか」
「噂には聞くけれどね」
二人はそこだと聞いてすぐに頷いたのだった。
「滅茶苦茶怖いんだって?」
「病院みたいな形で」
「そう、トラウマになる」
そこまでだというのである。
「一度見たら忘れられない」
「実はね」
今度は赤瀬が言ってきた。
「一度一緒に行ってきたんだ」
「ああ、椎名とか」
暫く話を聞いていた陽太郎がこう指摘した。
「二人でだよな」
「わかるんだ」
「何かちょっとわかったんだよ」
そうだと赤瀬に返す。
「そうか、それでか」
「凄かったよ。椎名さんは全然動かないけれどね」
「赤瀬も」
それは二人共だというのだった。
「全然動かなかった」
「だってさ。目線が下にあるからね」
赤瀬は大きい。それは当然だがそれでもだ。お化け屋敷の中でもその巨大さは全く変わることがないのである。
「見えるし迫力もないしね」
「そうだよな。でかいとやっぱりな」
「怖くないわよね、小さい相手は」
狭山と津島もこの事に頷いた。
「そういうことか」
「成程ね」
「僕は怖いとは思わなかったよ」
「私も」
小柄な椎名もだというのだった。
「けれど皆が怖がるものなのはわかる」
「椎名は動じないからな」
陽太郎はその椎名にも突っ込みを入れた。
「やっぱりそうなるよな」
「そう。それは平気」
また言う椎名だった。
「怖いことは」
「っていうか何で怖いって思うんだ?」
陽太郎は実際に何時でも冷静な彼女にそうした感情があるのかどうか疑問にさえ思った。それでこう問い返さずにはいられなかったのだ。
「椎名ってどういうのに対して」
「壊れること」
「壊れること!?」
「そう、それは怖いと思う」
これが彼女の怖いものだというのだ。
「人の心が」
「それがか」
「癒せるものだけれどそれ以上に壊れやすいから」
「そういうものか」
「そういうもの。特に」
彼女はまた言った。
「つきぴーみたいな娘は」
「ああ、椎名さんな」
「そうよね、あの娘はね」
彼女の心がどうかについては狭山と津島もすぐに察することができた。それだけ月美の心は誰がどう見ても強いものではないのである。
「気が弱いしな」
「何かあったらすぐに折れそうだし」
「折れそうだし壊れやすい」
椎名の言葉だ。
「それが凄く心配」
「だからいつも一緒にいるんだな」
「それだからなのね」
「私つきぴーが好き」
これは親友としての言葉だ。
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