ハルケギニアの電気工事
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第25話:問題抱えて、ただいま~!?
前書き
問題なんて、アルバート君には今更の感がありますが、周りの人にとってはやっぱり・・・・?
お早うございます。アルバートです。
今日は屋敷を出てから5日目。もう帰る日になりました。
昨日、ずっと僕の周りにいて、3歳になった時から見えていたはずなのに、なぜか意識することの無かった精霊さん達を、初めて認識する事ができるようになりました。
そして火の精霊に『ファイアリー』という名前を付けてあげたら火の精霊魔法が使えるようになったので、『ファイアリー』達にお願いしてみたら、大きな火石を貰う事が出来ました。
しかし、火石を作るためにお願いした結果、僕の周囲数十リーグ内の『ファイアリー』が全て集まって力を貸してくれた為、この範囲内では火を使うことが出来なくなりました。
そして『ファイアリー』がいなくなった事を訝しく思った火の上級精霊が、原因を確認するために来てしまったのです。僕は原因について説明をしました。他の精霊達も一緒に説明をしてくれたので、なんとか納得して貰いましたが、話しの弾みで、その上級精霊にも『サラマンディア』という名前を付けてしまう事になりました。
『サラマンディア』は帰る際に、この名前で呼べばいつでも来る事と、僕が精霊さん達に名前を付けた事で、いずれ他の上級精霊も何かを告げるために僕のいるところに来る事の2つを告げて行きました。問題は何時、どの上級精霊が来るかわからない事です。屋敷にいる時に来てくれれば多少の騒ぎになっても何とかなると思いますが、僕が皇城に行っている時などにわざわざ追いかけて来られたら、皇城も首都『ヴィンドボナ』も大騒ぎになってしまいます。本当に、僕は目立ちたくないのに………。
その後、余りの事に精神的に疲れ切ったので、アルメリアさんと軽く寝酒(自棄酒?)を飲んで、すぐに寝てしまいました。
今回の旅の目的であるゴムの樹液の採集と火石の入手は出来ました。その上、「リュウゼツラン」と「ケイアップル」を発見することが出来たので、目標は100%以上達成できた訳で文句なしなのですが、何でいつも何か余計な事が付いてくるのでしょうか。
さて、気を取り直して、最終日の今日は、いつも通りゴムの樹液の採集を行い、お昼にはエルフの集落に戻る予定です。
いつも通りの朝の風景の後、朝食をとって、アルメリアさんはすぐに調査のため南東に向かって森に入っていきました。
僕は朝食の後始末をしてから『ヴァルファーレ』に周辺をサーチして貰い、異常のない事を確認してから、後の事を頼んでゴムの樹液の採集に向かいます。
2時間位掛かって全部の木を廻り、溜まっていた樹液を瓶に集め、幹に付けていた容器類を纏めてベースキャンプに持って帰ります。今度来る時まで無くならないように保管庫の中に入れて地中に潜らせておきました。
これで、樹液の入った瓶が3本になり、差し当たって充分な量を確保できたと思います。
瓶は割れないように何度も固定化の魔法をかけてありますから、輸送上の問題はありません。そのほか椰子の実も30個取って瓶と一緒に網籠に入れました。
ベースキャンプの後片付けを終え、休憩を取りながら『ヴァルファーレ』と話していると、アルメリアさんが帰ってきました。
いつも通りスケッチブックを抱えて機嫌良く歩いてくるところを見ると、それなりの収穫があったようですね。アルメリアさんも今回の調査では色々な植物の新種を発見する事が出来たので、満足できたようです。出来ればもっとゆっくり調査したかったのでしょうが、護衛役の僕たちが帰るのでは残る訳にも行きませんから一緒に帰る事になっています。
アルメリアさんが『ヴァルファーレ』の前席、僕が後席に座って、ベルトを閉めた事を確認してから『ヴァルファーレ』に合図して離陸します。離陸して300メール位まで上昇し、そのまま集落に向かえば、15分で着きました。
集落の上空に着くと風竜が上がってきます。手を振っている騎士を見ると、初めてこの集落に来た時に警備していたカイスさんでした。こちらも手を振って集落外側の草原に着陸します。
すぐにアルメリアさんが降りるのを手伝って、その後、集落までアルメリアさんの荷物を持って行ってあげました。持ってと言ってもレビテーションで浮かべてですが。
アルメリアさんの家について昼食を食べさせてもらって、一休みしてから代表の所に行きます。今回、ゴムの樹液を採集しに行った間の事を報告してお礼をすると共に、これから帰るので挨拶をするためだったのですが、当然アルメリアさんも一緒に報告に行ったので、話すつもりの無かった精霊との事もすっかり話されてしまい、代表からの質問攻めに遭う事になりました。
代表にとっても上級精霊との間にあった事は珍しい事だったようで、事情を聞かれたわけですが、精霊達に名前を付けた事を話すとしっかりと呆れられ、上級精霊にも『サラマンディア』と名前を付けた事を話したら珍獣でも見るような目をされました。
そのほか、僕の方から質問して、火の精霊に火石を作ってもらった時に、集落中の火が使えなくなった事も確認出来たので、あらためて謝罪しましたが、疲れた顔で苦笑して許してくれました。今更なんでしょうね。その時に出来た火石を見せると、その大きさに驚いていましたが、別れ際にはまた来いと言ってくれました。有り難い事です。
見送ってくれるというアルメリアさんと一緒に草原に戻ると、沢山のエルフが『ヴァルファーレ』の周りに集まっていました。子供達もいて『ヴァルファーレ』に触ったり『ヴァルファーレ』の周りで走り回ったりしています。すっかり馴染んでいますね。
近くに来て気が付いたのですが、いつのまにか網籠が来た時よりも大きくなって、中が色々な物で一杯になっています。僕が此方に来た時に持ってきたお土産のお返しだそうで、この前より沢山の食料やお酒などが大きくなった網籠がさらに膨らむ位に入れられていて、すごい事になっていますね。普通の竜やマンティコアなどでは、絶対に運べないでしょう。
エルフの皆さんにお礼を言って、また来る事を約束して『ヴァルファーレ』に乗り込みます。手を振って『ヴァルファーレ』を離陸させました。帰りも荷物があるので上昇はゆっくりですが、それでも見送ってくれているエルフ達があっという間に小さくなっていきます。見えなくなる前にもう一度手を振って、上昇を続けながら北に向かって飛行を開始しました。
5000メールまで上がると速度を上げて行きます。帰りも途中での休憩は無しで、一気にボンバード領を目指します。
来る時は全然気付きませんでしたが、『ヴァルファーレ』の周りに沢山の風の精霊『シルフィード』が飛んでいます。この高度になると余り他の精霊達は見当たりません。僕が『シルフィード』に気付くと、『シルフィード』も僕が気付いた事が解るようで、近づいてきて、時々僕に触ったり、『ヴァルファーレ』に触ったりしています。『ヴァルファーレ』の飛行に力を貸してくれているようで、益々『ヴァルファーレ』の速度が上がっているように感じます。
『シルフィード』の協力もあって、予想していた時間より早く、夕暮れ前には屋敷に着く事が出来ました。『ヴァルファーレ』にも聞いてみましたが、やっぱり使った力も少なくて済んで、その上スピードも速かったようです。この分では『ヴァルファーレ』の最高速度も更に速くなって、真面目に超音速戦闘機になってしまいそうですね。
訓練場に着陸すると、前と同じで母上とメアリーが来ていました。僕が付く事は物見から知らせが行ったようです。今日は父上も屋敷にいたようで、一緒に来ていましたね。他には執事さん達とメイドさん達も来ています。仕事の時間は終わっているのに『事務局』の人たちも迎えに来てくれています。嬉しいですね。
僕が『ヴァルファーレ』から降りると、母上に抱きしめられました。父上も隣に来て僕の頭をがしがしと撫でてくれました。一通り帰還の儀式(?)がすんで、僕は『ヴァルファーレ』の足からロープを外してやり、お礼を言って帰ってもらいました。
「『ヴァルファーレ』、有り難うございました。今回の旅もこれで終了ですから、ゆっくりと休んで下さい。」
そう言うと、『ヴァルファーレ』は一声鳴いて、空の裂け目に入っていきました。
僕はそれを見送ってから、ゾフィーさん達にただ今の挨拶をしました。
「『事務局』の皆さん。お迎え有り難うございます。こんな時間まで残っていてくれたのですか?」
「お帰りなさい、アルバート様。ご無事で何よりでした。みんな、アルバート様をお出迎えしたいと思って残っていたのですよ。旅はいかがでしたか?」
「それは有り難うございます。今回の旅も色々ありましたから、明日『事務局』の方でゆっくりとお話ししましょう。お土産もありますから、明日を楽しみにして下さい。」
その後、持ってきた荷物をレビテーションで浮かべ、一旦『改革推進部』の空き部屋に持って行きました。勿論その前にドライフルーツを一握り、メアリーに上げるのは忘れませんでしたよ。
荷物を置いて、椰子の実とゴムの樹液を網籠から出して、部屋の隅に片付けておきます。残ったお土産は、網籠ごと、もう一度レビテーションで浮かべて、屋敷の方に持って行きます。
屋敷の食堂に入って、テーブルの上にお土産を並べてみました。この前よりも沢山の品物があります。前と同じものは魚介類の干物、ドライフルーツ、干し肉にお酒ですね。今回は他に3種類の魚の燻製とハムやソーセージ等の肉の加工品、色々なチーズ、胡椒や唐辛子(?)のような香辛料と思われる物があります。それに小さい袋に入っている豆のような物がありますね。どうやらカカオ豆のようですが、いったいどこから持ってくるのでしょうか?
他には紅茶の葉が3袋にコーヒー豆3袋、あと綺麗なティーセットが色違いで2セット入っていました。もの凄く薄くて繊細な作りで、模様も細かくてとても綺麗です。前世ならウェッジウッドやマイセンといった高級ティーセットですね。思わず高そうだな~なんて考えていました。多分、アルメリアさんに何時も紅茶を出していたので、そちらから考えてくれたのでしょう。
あと、チョコレートと思われる沢山のお菓子が入っていました。一口大のお菓子で、一つ食べてみるとジャムを挟んだケーキにチョコレートをコーティングしています。少しチョコレートに苦みがありますが、中のケーキとジャムの甘さで丁度良くなっています。
しかし、持って行ったお土産より、もらったお土産の方が圧倒的に価値がありそうなのですが、どうしたものでしょうね。僕自身大したことをしているとは思えないので、今度行く時にはもっと色々考えてみたいと思いました。
それに、これだけ素晴らしい物があるのですから、何としても交易を行いたいと思ってしまいます。ティーセットは貴族達にも人気がありますから、良い値で売れると思いますよ。
お土産を父上や母上、メアリーに上げる物と屋敷の執事さんやメイドさんに上げる物、『改革推進部』の人たちに上げる物、皇帝と妹姫に上げる物と分けて、差し当たって父上達と執事さん、メイドさんの分を渡しました。『改革推進部』には明日持って行くとして、皇帝の所には明後日の虚無の日に報告がてら皇城まで行って渡して来ることになるのでしょうね。
お土産を渡して、少し遅くなった夕食を食べる終わると、もう夜も遅くなったのでメアリーを先に寝かせ、僕は父上と母上に今回の旅であった事を話しました。
まず、エルフの集落に行ってアルメリアさんにあった事。お土産を渡して集落の人たちに分けてもらった事。代表に挨拶した事を報告し、次にアルメリアさんとゴムの樹液を採集する場所まで一緒に移動し、それぞれの仕事をしていた事。その際、アルメリアさんが「リュウゼツラン」と「ケイアップル」と発見した事を話しました。
「この「リュウゼツラン」は、「アガベ・アスール・テキラーナ」という種で、テキーラという強いお酒の原料になります。まだ若いのでもう少し時間が掛かると思いますが、今のうちから「アガベ・アスール・テキラーナ」一ヶ所に移植して畑を作って、どんどん増やしていきたいと思います。
それから、「ケイアップル」はオレンジのような実を付ける木で、こちらも一ヶ所に植え替え、果樹園を作ろうと考えています。」
「それは面白い物を見つけたな。それだけでも良い商品になるだろう。」
父上も賛成してくれるようです。これは決まりですね。
話を続けましょう。その後はゴムの樹液を瓶3本と椰子の実30個を持って帰ってきた事を話し、そして、今回の旅の一番問題となる場所に話しが来ました。
「ところで、父上達にはお話していませんでしたが、今回の旅は一つの大きな目的がありました。
ある理由からエルフしか持っていない火石という物を貰ってくる事です。」
「火石?それはどういった物なのかな?」
「エルフの元には、4精霊の力が込められた秘石が有ると聞いていました。その内の火石は火の精霊の力が込められ、ルビーよりも赤く、その力を解放すれば火のメイジでなくとも火系統の魔法を使う事が出来ます。」
「なんと、そのような石が存在するというのか?」
「そうです。しかも制御方法さえ確立すれば、家全体を暖める暖房や厨房の竈の火の変わりにも使えたり、灯りにもすることが出来ます。そのほか、使い道は色々考えられるのです。」
「それは便利な物だが、おまえはそれを使って何をするつもりだ?」
「この度の改革で必要となる、活性炭という物を作るために、安定した高温で長時間過熱できる特別な炉を作らなければなりません。その炉の熱源に使います。」
「また、難しい物を作ろうとしているようだな。それでどうなった?」
「火石はエルフが持っているというのですから、アルメリアさんに火石の入手について聞きました。そして、火石を作るには火の精霊の協力が必要と言われて、どうしようかと考えた時に、3歳の頃の事を思い出したんです。僕が3歳になって酷い頭痛に襲われた後の事ですが、僕の廻りにそれまで見えなかった淡い影のような物が見えるようになりました。」
「淡い影?いったい何なのかしら?」
「はい、母上。その時はなんだか解りませんでした。ただ見えるようになっただけで、それが何なのかも解りませんし、相手も此方に何かするという事もありませんでした。ただ、不思議なことにその時から今までずっと、見えているのに見ていないと言う状態だったのが、アルメリアさんと話した後で、もしかしたらあの影は精霊なのではないかと気がついたのです。」
「精霊?アルバートは精霊が見えるようになっていたというの?」
「その様です。そして、その事に気がついて、あらためて自分の周りを見渡したら、沢山の精霊がいる事に気がつきました。精霊は4つの色に分かれていて、赤が火の精霊、青が水の精霊、薄い水色が風の精霊で茶色が土の精霊だったのです。」
「4つの色か。魔法の属性と同じなんだな。」
「そうです。そこでアルメリアさんにやり方を教えてもらって、自分の手の平の上に火の精霊に集まってもらうと、そこに炎が生まれました。その上、手の平の上で綺麗な炎が踊っているのに、ちっとも掌は熱くなりませんでした。」
「それは精霊魔法か?」
「はい。これで僕は精霊魔法が使えるという事が解ったのです。こんな風に。」
そう言って、掌を上に向けて前に出し、『ファイアリー』に集まって炎になってくれるようにお願いすると、部屋の中を飛び回っていた『ファイアリー』が集まってきて、手の平の上で炎の踊りが始まりました。
父上も母上も声もなく見つめています。少しして、『ファイアリー』に分かれてもらうと炎も消えました。
「アルバート。絶対人前でその力を使うのではないぞ。間違ってもロマリアなどに知られれば異端審問で殺されてしまうからな。」
「解っています。ただ、問題はまだありまして、何時までも火の精霊と呼ぶのもつまらなかったので、それぞれの精霊に名前を付けてしまいました。火の精霊は『ファイアリー』、水の精霊は『ウンディーネ』、風の精霊は『シルフィード』そして土の精霊は『ノーム』です。」
「精霊にまで名前を付けたのか?相変わらず変な事を考えるヤツだな。それで精霊は許してくれたのか?」
「はい。許してくれて、その上、とても喜んでくれました。おかげでこんな火石を作って貰えたのです。」
そう言って、持ってきた火石を両親の前に出して見せました。
「これが火石か?なるほど、今まで見た事のあるルビーよりも遙かに大きいが、透き通るような綺麗な赤だ。」
「本当に、何て綺麗なんでしょう。初めて見たけれど、こんなに大きな火石って、いったいどれだけの力を秘めているのかしら。」
「そうですね。この火石の力を制御して引き出す方法も考えないと行けません。まあ、それは置いておいて、この火石を作るために、僕達がいた場所の周囲、どれくらいか解りませんがおそらく数十リーグの範囲で、一時的に『ファイアリー』がいなくなりました。そのためエルフの集落でも火が使えなくなったりしたそうです。
そして、その事に異常を感じた火の上級精霊が僕達の所にやって来ました。」
「上級精霊?そんな者まで出てきたのか?良く無事だったな。」
「幸い、話のわかる精霊だったので助かりました。『ファイアリー』のいなくなった訳を話し、その事を他の精霊も説明してくれたので、上級精霊も納得して、特に咎められる事もありませんでした。
ただ、火の精霊に名前を付けた事を話したところ、大変驚かれてしまい、その上、他の精霊達みんなにも名前を付けたと言ったら、思いっきり呆れられてしまいました。
なんでも、相手に名を付け、相手がその名を認めたら、その相手を僕にした事になるのだそうです。それは真の名を相手に告げる事と同じ事で、僕がこの世界を司る4つの力の僕達全員を自分の僕とした事になると言われました。」
「なに~!?4精霊全てを僕にしただと?いったい何しているんだ?そんな事をして上級精霊達が黙っている訳がないだろ!?」
「一応、火の上級精霊には認めて貰えましたし、話しの弾みでしたが火の上級精霊にも名前を付けてしまいました。」
「呆れて物が言えんな。どこまで非常識を突き進むつもりだ?上級精霊に名前を付けた?いったいどうなるのだ?」
「火の上級精霊、名前は『サラマンディア』にしましたが、いつでも呼べば来てくれるそうです。」
「つまり、おまえに従属してくれたという事か。とんでもない息子を持ったものだ。」
「ねえ、アルバート。その『サラマンディア』さんてどんな精霊さんなの?格好いい?」
「そうですね、全身炎に包まれた真っ赤な巨大な竜です。恐ろしい熱を出していると思うのですが、僕には全然感じませんでした。精霊の加護があれば、炎に焼かれる事もないそうですから、今の僕は火山に飛び込んでも火傷一つしないかもしれません。」
「すごいわね。会ってみたいわ。今度呼んでくれない?」
「ちょっと待て。ソフィア何を言い出すんだ。そんな精霊を呼んだりしたらアルバートは平気でも、私達や屋敷なんか灰も残らず燃え尽きてしまうぞ。」
「そうですよ、母上。いくら何でも無茶です。『ヴァルファーレ』とは違うのですから、呼ぶのは止めた方が良いですよ。」
「そうなの?残念ね。面白そうなのに。」
相変わらずの母上に、僕も父上も力が抜けそうです。
「その話は終わりにして、ここで最後の問題が出来ました。『サラマンディア』が帰る時に告げられたのですが、他の精霊にも名前を付けた事で、それぞれの上級精霊が何か言ってくるそうです。それも何時、どの上級精霊が来るか解らないので気を付けるようにと言われました。」
「他の上級精霊?火の他の3精霊か?そんな者がここに来るというのか?」
「まあ、この屋敷に来てくれれば、まだましかと思っています。『ヴァルファーレ』の事もあって、屋敷の人たちはある程度の耐性がありますから、それほど大騒ぎにもならないでしょう。問題は、僕が皇城に行っている時に来たりすると大変な事になるという事です。おそらく僕を追って皇城まで来てしまうでしょうから。」
「何て非常識な。そんな事になったら、皇帝閣下も皇城もどうなるか解らないではないか。『ヴィンドボナ』もパニック状態になってしまうぞ。」
「そうなんですよね。どうやって対処したらいいかも解らないので、3つの上級精霊が来てしまうまで皇城に行かない方が良いのでしょうが、報告にも行かないといけませんし、お土産もありますから。だから頑張って良い方法がないか考えているところです。」
親子3人で頭を抱えて考え込んでいるのも笑える気がしますが、問題が問題なので、一歩間違えればゲルマニアがどうなるか解りません。ここは慎重に考え無いといけないでしょう。
でも、いくら考えても良い考えなんて浮かびません。いい加減、今日は疲れたので公衆浴場に行って、どっぷりと湯船に浸かってこようかなと考えて、閃きました。
そう言えば、この前皇城に行った時、皇帝が公衆浴場に入りたいって言っていましたね。あの時は他の貴族達に知られるのが嫌で、適当に話しを誤魔化しましたが、この際です。こちらから行く事が危険なら、来てもらえば良いのではないでしょうか。後でこの事が広まって他の貴族達に来られても困りますから、お忍びで来てもらえば何とかなるかもしれません。妹姫様達もこの屋敷に来たがっていましたから、ついでに呼んでしまうのも良いでしょう。
「父上、母上。先週皇城に行った時に、今行っている領内改革について皇帝閣下におはなしした所、皇帝閣下からぜひ公衆浴場に入ってみたいと言われました。それに妹姫様達も、一度この屋敷に来て母上とゆっくり話しがしたいとの事でした。この機会に、お忍びでお呼びしてはどうでしょうか?」
「アルバート。つまり、おまえが行けないから、皇帝閣下をこっちに呼んでしまおうという事か?」
「端的に言ってしまえばそう言うことです。」
「おまえも、本当に遠慮のないヤツだな。」
「あら。良いじゃありませんか。私も妹たちとゆっくり話が出来ますし、みんなでお風呂に入るのも楽しそうだわ。あなたも皇帝閣下と一緒にお風呂に入って、ゆっくり話しをされても良いと思いますわよ。」
「解った。一度皇帝閣下にお伺いを立ててみよう。話しをしたらすぐに来られる事になるかもしれないが。」
多分、この前の様子なら、すぐに飛んでくるでしょうね。でも皇帝が家臣のお風呂に入るためにやって来るというのもとんでもない話しです。男湯に皇帝と父上が入って、女湯に母上と妹姫達が入ってる?聞いた事もない状況ですね。絶対他の貴族達に知られないようにしないと行けません。
まあ、これで報告もお土産も何とかなるかもしれません。この際ですから、何でも利用しましょう。
これ以上の話しも、特にないようなので、僕は公衆浴場に行く事にしました。旅の疲れはやっぱりお風呂が一番ですよね。それで入ってきます。
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