ハルケギニアの電気工事
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第26話:課題消化!(その1:コックさんゲットだぜ!!)
前書き
家に帰ってゆったりのんびり。良いですね~!!
なんて思っていたら、あまり来て欲しくない人がやってきそうです。
その反面、一番来てほしい人も来たりして。
やっぱりのんびりできないアルバート君でした。
お早うございます。アルバートです。
昨日は疲れたので、公衆浴場で手足を思いっきり伸ばして広い湯船に浸かっていました。
ゆっくりとお風呂に浸かって、体中にしみ込んだ旅の疲れが、お湯に溶けていくような感じがしました。
ちなみにこのお風呂のお湯は、練金で地下深くまで掘り抜いて出した温泉です。どうやって掘ったかは内緒ですよ。結構深く掘ったのでちょっと手間は掛かりましたが、やっぱりお風呂は温泉が一番でしょう。源泉掛け流しの立派な温泉です。
おかげで、24時間いつでも入浴可能になっています。出来上がってから1週間も経っていませんが、屋敷の人も『改革推進部』の人も毎日入っていますが、近くの領民も入りに来ていて、とても評判が良いようです。
起きてから、旅行中は出来なかった日課の訓練もしっかりとやりました。5日もやらないと身体が鈍ってしまいそうで、変な気分になります。訓練後は公衆浴場で汗を流しました。朝の一番風呂で湯船に浸かりながら、誰もいないことを良いことに、大きな声で歌って気分爽快です。
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朝食後、時間に合わせて『改革推進部』へ出勤です。『部長室』に入ると机の上に書類の小山がありました。たった5日間でこんなに溜まります?いったいなんでしょうね?
カーテンを開いて窓を開け、空気を入れ換えながら、椅子に座って書類を一枚ずつ確認しました。どうやら僕が不在中に来た、村や町からの要望書や嘆願書のようです。いつもは父上の執務室に持って行かれる物ですが、『改革推進部』が出来たので、此方に廻ってくるようになったのですね。そんな話は父上から聞いていませんが。
それにしても、『改革推進部』が出来て2週間と経っていないのに、その間だけでこれ位書類が来ると言うことは、領内にも結構問題があるようです。
一番多いのは街道などの道路の補修関係ですね。やっぱり未舗装路ですから、雨が降るだけでもダメージがあるのでしょう。それに合わせて橋の補修依頼もあります。大抵石橋なのでそうそう壊れることもないように思いますが、基礎の作りが甘いと経年劣化で崩れる部分が出てくるようです。この補修は土メイジの仕事になりますが、場所によっては危険な獣や幻獣が出るところもあるし、野盗も出るかもしれませんので護衛のためにメイジや騎士の協力も必要となります。
範囲が広いだけに、時間が掛かる地味な仕事ですが、道路が荒れると色々な障害が出てくるので、出来るだけ早く対処した方が良いでしょうね。
ざっと目を通しただけですが、ミーティングの時間になりますので行きましょう。
先に『保健衛生局』に顔を出して、帰ってきた挨拶とお土産を置いて行きました。仕事はウイリアムさん達に任せておけば大丈夫でしょうから、現在の状況は後で聞くことにしましょう。
その後、『事務局』に行って、朝の挨拶をしながら自分の席に行きました。
「お早うございます。昨日は僕のお迎えのために遅くまで残って頂き、有り難うございました。まずはお土産です。皆さんの机を合わせてくれますか。」
そう言って、みんなの机を合わせてテーブルを作り、持ってきたお土産の袋をその上に乗せました。中からドライフルーツや魚の干物、燻製、干し肉やハム、ソーセージ等を出して、並べて見せます。
みんなの喚声が上がり、それぞれ公平に分け始めました。量があるので分けるのも大変ですが、楽しそうですね。特にドライフルーツやお菓子類は嬉しいようですね。
お土産に入っていた小さなチョコレートのケーキは、何種類かのジャムが入っていて、食べてみないと何のジャムが当たるか解りません。少しお酒が入っているのか、しっとりとして良い香りがします。
今日のミーティングは、お茶を飲んでケーキを食べながらになりました。
まず最初に、僕の方から今回の旅の成果を報告します。内容的に全部は話せないので、一部省略しますが。
「今回の旅は、前にも行った場所なので、移動自体は何も問題なく、一気に飛んで行くことが出来ました。
目的地に着いて、キャンプの準備をしてから一度森に入り、1時間ほど掛けてゴムの木の確認と、幹に傷を付けて樹液を受ける容器をセットしてから、他の所を探して新しいゴムの木を5本見つけることができました。これで合計16本のゴムの木を手に入れることが出来たので、今回は樹液も沢山取ることが出来ましたよ。」
「アルバート様お一人で森の中に入ったりして、危なくないのですか?』
ベラさんから質問がありました。普通、そう考えるでしょうね。
「あの辺りは人も居ませんし、危険な毒を持った生き物もいないので大丈夫ですよ。危険な獣や幻獣は近づく前に『ヴァルファーレ』が見つけて、僕にはすぐに警告が届きます。これまでに狼のような獣が群れで来たことが一度ありましたが、『ヴァルファーレ』の通常技で一瞬で吹き飛ばされてしまいました。」
「わあ~!『ヴァルファーレ』さんて、凄いんですね。」
そうです。凄いんです。その上必殺技(シューティング・レイ)も有りますから、このハルケギニアの世界では、ほとんど無敵と行っても良いでしょう。えっへん!!
「向こうでやっていたことは、毎日ゴムの木から樹液を取ることだけですから、空いた時間を使って、前来た時に探せなかった辺りの調査をしました。この調査で、面白い物を見つける事が出来たんですよ。」
「面白い物ですか?いったいなんでしょう?」
グレーテルさんの話し方は、アニメ版のカトレアさんかな?何かホンワリしますね。
「植物なのですが、一つは「リュウゼツラン」の1種で「アガベ・アスール・テキラーナ」という背の高さが60サント位の植物です。これはテキーラという強いお酒の原料になります。もう一つは「ケイアップル」といって少し背の高い木ですが、実がオレンジに似ていて少し酸味があって美味しいんです。どちらもまだ収穫できる状態ではないので、もう少し時間が掛かりそうですが、きっと気に入って貰えると思いますよ。」
「お酒とオレンジですか。良いですね。美味しそうです。でも、いったいどれくらい遠くまで行ったのですか?聞いたことのない名前の植物ばかりなので、余り近くではないと言うことは解るのですが、どの辺なのかが全然解りません。」
これは、ラウラさんの質問です。さすが最年長。お酒も好きそうです。
「場所については話していませんでしたね。『ヴァルファーレ』が時速900~1000リーグで飛んで1時間半から2時間といった所ですから、大体屋敷から南の方向に1600~2000リーグの間位でしょうか。」
「1600リーグから2000リーグですか!?もの凄く遠いです。私の村からこのお屋敷まで、たしか30リーグですが、それでもお屋敷までは遠くに感じていましたのに、それの50倍以上も遠いなんて。」
「本当に遠くよね。それにしても『ヴァルファーレ』さんて、そんなに早く飛べるんですか?風竜よりもずっと早いですよね。」
「本気になればもっと早く飛べるんですよ。しかも飛んでいられる時間も風竜より長いので、ハルケギニア中で行けない所はありませんね。」
みんな、本当に驚いています。これだけの能力を持った生物は、このハルケギニアには他にいませんから想像も出来ないのでしょうね。
さて、それでは、次に皆さんの報告もお聞きしましょう。
「私の方はこれ位でお終いにしましょう。皆さんの方はどうでしたか?」
こうして、僕のいなかった間のことを報告してもらい、大体今週合ったことは確認できました。(外伝2参照!!)
****************
夕方、仕事が終わって屋敷に帰ると、アニーが待っていて、父上が話しがあるので執務室の方に来るようにと伝えてくれました。急いで行ってみましょう。
「父上。アルバートです。」
ノックをして、中に話しかけます。
「アルバートか。入りなさい。」
執務室の中に入って、父上の前に行きました。
「父上、何かお話があるそうですが、何でしょうか?」
「昨日の件で。朝一番に皇帝閣下に鷹便を飛ばしたのだが、もう鷹便が帰ってきた。昨日の夜の通りの内容で手紙を送ったのだが、まさかこんなに早く返事が来るとは思わなかったよ。おまえも読んでみなさい。」
鷹便で着いた手紙を渡されました。内容は大体わかりそうな気がしますが。
……… 手紙・読んでいる最中です。………
やっぱり来るそうです。来週マンの曜日に皇城を出発し、街道を馬車で移動して、ダエグの曜日に此方に着くと言うことです。妹姫達も連れてくると書いてありますから、予定通りですね。それにしても、何でこんなに早く返事が来たのでしょう?待っていましたという感じなのですが、気のせいでしょうか。
「ん?父上。この手紙によるとダエグの曜日に此方に着いて、マンの曜日までゆっくりしていくと書いてありますが、そうすると皇帝閣下が皇城に戻られるのは再来週のダエグの曜日になります。2週間近く皇帝閣下が皇城を空けることになりますが、政務はどうなるのでしょうか?」
「アルバート。おまえが言いたいことは良く解るつもりだが、皇帝閣下が動き出したら、もう誰にも止められないのだよ。恐らく今頃は仕事を丸投げにされる大臣達が大騒ぎをしていることだろう。」
皇帝が2週間も不在で、仕事は大臣に丸投げ?しかも不在の理由が臣下の家で湯治?大丈夫か?ゲルマニア。
多分騒ぎになるだろうとは思っていましたが、ここまで来ると、開いた口がふさがらないといった感じです。途中の宿泊は街道沿いの貴族達の屋敷になると思いますから、彼らの所でも皇帝を迎える準備で大変な騒ぎになっていることでしょう。その上、警護の騎士達が大勢着いてきて、どこかの大名行列ですね。やはりお忍びは無理でしたか。やれやれ………。
「それでは、来週のダエグの曜日に皇帝閣下が行幸されると言うことで、お迎えの準備をしなければなりませんね。領民にも知らせないと行けませんから、各村や町に伝令を出します。」
「うむ。屋敷の方の準備などは私とソフィアでやるから、村や町に知らせるのはおまえに任せる。後は自分の仕事に専念しなさい。」
「解りました。来週いっぱい、何事も起こらなければ良いのですが。」
「そうだな。余り期待できないが、そうなることを祈ろう。」
その後、父上と一緒に食堂に行き、みんなで夕食を頂きました。
夕食の後はメアリーと遊んであげて、遊び疲れたメアリーを部屋に運んで寝かしつけて自分の部屋に戻ります。
明日はお休みなので特に仕事はありませんが、皇帝の行幸を村や町に知らせるお触れを書いて、伝令に持たせなければなりません。それが終わったら久しぶりに秘薬作りでもしましょうか。最近秘薬の改良もやっていませんから、母上と話しをしてみましょう。
ベッドに入って、適当な本を読んでいる内に眠くなりましたから、そのまま明かりを消して寝ました。
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翌朝。
今日は皇城に行く用事もないので、起床後、村や町に皇帝行幸の知らせを伝えるお触れを書いて、執事にすぐに送るようにお願いしました。本当は朝の訓練もしようと思ったのですが、何枚もお触れを書いて面倒くさくなったので、サボりました。
朝食後のティータイムに母上と話して、午後から秘薬の改良などをやる事になりました。母上も久しぶりなので、嬉しそうです。
それから、午前中はメアリーと遊んであげました。『ヴァルファーレ』を呼んで、1時間ほど遊覧飛行をしてから、訓練場の隅でオママゴトの相手や本を読んであげたりしましたよ。『ヴァルファーレ』も横でのんびりうたた寝をしたり、メアリーの相手をしたりしていました。
お昼も済んで一休みしてから、僕の部屋に母上が来ました。色々相談して、どの秘薬をどれくらい改良するか決めて、二人で練金と調合を繰り返します。
大抵の病気なら簡単に直してしまう秘薬や、怪我を治すための秘薬などは、あれ以上効果を高める事が出来るとは思えません。代わりに個別の症状に特化した秘薬を作って見ました。例を挙げると便秘薬や下痢止め、ものもらいなどの眼病用とか、水虫の薬などです。
母上が特に興味を示したのはお化粧を落とすクレンジング液や美容液、お腹に塗ると余分な脂肪を除去する塗り薬や、やはり塗るだけで胸を大きくできる豊胸薬(ルイズが欲しがりそうですが。)などです。クレンジング液と美容液は、生前の日本でよく見かけた物を見本にしました。数限りなく有りましたからね。脂肪除去の塗り薬は塗ると皮膚から成分が浸透して、体内の余分な脂肪を溶かして尿として排出します。また、豊胸薬は腹部や大腿部などの気になる所に塗ると成分が浸透し、余分な脂肪を胸に集めて胸を大きくします。共に塗った後、じっくりと揉むことで、より効果を発揮するようにしました。それにしても母上が塗り薬に異常な程熱を入れていました。僕の見た限り、そんな物は必要ないと思うのですが、見えない所に不安があるのでしょうか?何て事を考えていたら、母上に笑いながら殴られました。何で考えていたことが解ったのでしょうか?
こうして作られた秘薬類は、我が領の特製として他の貴族達に非常に人気があります。結構な値段で売っているので、かなりの収入源になり父上も喜んでいますが、母上の熱心さから想像すると夫婦仲にも貢献しているのかもしれません。その内、もう一人位弟か妹が出来るかもしれませんね。少し効果を落とした物を安価で領民に分けていますが、手荒れ用のクリームなどは特に人気があります。
そんな事をして休日を過ごしました。
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そして、また、新しい一週間が始まります。
お触れは休み中に出してしまいましたから、僕は自分の仕事に集中したいと思います。
朝、『改革推進部』の各局に顔を出して、ミーティングに参加してから仕事場に行きます。
今日は、早速炉を作ります。途中で拾い集めた石を使って、練金で1メール四方の石の箱を作ります。側面の一ヶ所に30サント四方の穴を開け、石箱の内面に耐熱煉瓦を隙間無く敷き詰め。さらにその内側に練金で耐熱用のセラミックを作って貼り付けます。石箱の壁の厚みは合計20サントになりました。
石箱の中は2段にして、下の段は高さ10サント、上の段は45サント、間の棚は厚さ5サントの鋼鉄をセラミックでコーティングしました。棚は石箱の壁近くにスリットを作り上下を繋いでいます。
30サントの開口部に鉄と耐熱煉瓦とセラミックで扉を作り、取っ手と閂を付けました。
更に開口部の上に穴を開けて、そこに温湿度計を取り付けます。
この石箱の下に30サントの台を鉄で作り、石箱としっかり固定して出来上がりです。
石箱の下段に火石とセラミック容器に入れた水を入れて、『ファイアリー』にお願いして力を解放していきます。温湿度計とにらめっこしながら、炉内の温度が900℃になるように解放する力を調整します。ほとんど感覚での作業になりましたが、午前中一杯かけて調整し、大体どれくらいの力を解放すれば良いか確認できました。
問題は水蒸気ですね。ガスとして使う水蒸気と椰子殻炭を一緒に密封して加熱するのですが、加熱温度が900度位になる事と、火石と一緒に入れた水では充分な水蒸気が得られませんでした。
なにしろ、一回ごとに炉内がある程度冷えてからでないと、中の水を補給出来ないので時間が掛かります。
昼食を挟んで水蒸気を得る方法を考えて、仕方ないのでセラミック容器の大きさを変えてみたり、上段にも容器を入れてみたりして、試行錯誤の結果、水の量と容器の位置を決めることが出来ました。何度も試していたら、あっという間に夕方になってしまいました。時間が経つのが早いです。
事務局の方で終了ミーティングに出て、解散後屋敷に戻ると、アニーが待っていました。
コック長から時間があるようなら来て欲しいと言付かって来たそうです。多分コックの件だと思うので早速行ってみましょう。
「コック長いますか?」
「おお!アルバート様、お呼びだてして申し訳ありません。」
「良いですよ。気にしないで下さい。それで、コックの件ですか?」
「はい。見つかりましたよ。丁度良い人がいました。」
「見つかりましたか。それは良かった。これで食堂の運営が出来ます。それでどこの人ですか?」
「実は、昔の知り合いで、現在ガリアの首都『リュティス』で酒場の厨房を取り仕切っている奴なんですが、彼からの手紙で料理の発想に行き詰まって、他の土地で働く所を探していると書いてあったんですよ。それで、まだ行き先が決まっていないならこっちに来てみないかと鷹便でこっちの条件なんかも書いて送ってやったら、来ても良いって返事が来たので、早速呼んでおきました。良いですよね?」
「勿論良いですよ。それで、その人の名前は何て言うんですか?」
「そいつの名前はモーリスって言うんですが、たしか叔父がトリステインの魔法学校でコック長をやっているとか言ってましたな。その叔父仕込みで料理の方はかなりの腕ですよ。」
トリステインの魔法学校って、コック長はマルトーさんですよね。来て欲しいと思っていた人材に当たったようです。とうとう原作関係者に関わりが出来たようですね。
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