リング
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79部分:ニーベルングの血脈その十一
ニーベルングの血脈その十一
「その結果周辺星系は帝国にこぞって帰順を申し出ているそうです」
「つまりびびったってわけか」
「はい」
ヴィントガッセンは答えた。
「その通りかと」
「これにより帝国軍はその勢力をかなり伸ばしております」
「恐怖で人を支配するやり方だな。あいつ等らしいぜ」
「ですが司令」
ここで部下達が彼に対して言った。
「このままですと」
「わかってるぜ。それならそれで方法がある」
しかし彼は特に慌てたところも怯えたところもなかった。
「要はその恐怖を取り除きゃいいんだろ」
「簡単に言えばそうですが」
参謀の一人であるヘップナーがここで声をあげた。
「相手は」
「構うこたあねえよ」
ジークムントはそれでも強気であった。
「相手の兵力がどれだけ多くてもな、やり方ってのがあるんだよ」
「やり方ですか」
「そうさ、どれだけ来てもな、まともに戦える状況じゃなきゃ戦力にはならねえんだ」
「ですがそれはあくまで相手が無能であった場合でして」
「今回はそれが期待出来ないってか」
「残念ながら」
敵将はメーロトである。彼のことは皆知っていた。だからこそ彼等はジークムントのその言葉を信じる気になれず、不安を拭い去ることが出来なかったのだ。
「少なくとも今の戦力のままでは」
「安心しな」
それを言われても彼は強気であった。
「そんなに信じられないならな、今すぐ軍を抜けな」
そしてここまで言った。
「軍を」
「そうだ。俺が信じられねえ奴はすぐにでも抜けていい。俺はそれを咎めるつもりはない」
「・・・・・・・・・」
彼等はそれを聞いて沈黙してしまった。
「さっきも言ったろ、戦争ってのはどれだけ数があってもまともに戦える状況じゃなきゃ勝てはしねえんだ」
「ですが今回は」
「そのまともに戦えるにはな、一つにまとまっていることが前提なんだよ。わかるか」
さらに言う。
「それができねえ奴はいてもらっても困るんだ。わかったらさっさと決めろ」
有無を言わさぬ口調であった。
「俺を信じるならよし、信じられないなら」
そして立ち上がった。
「今すぐ俺の前から消えな。二度は言わないぜ」
「・・・・・・わかりました」
皆それを聞いて覚悟を決めた。
「我等の命、提督にお預け致します」
「そして勝利を」
「それでいいんだな」
彼はもう一度問うた。
「はい」
彼等もそれに応じてきた。
「提督だからこそ」
「我等もこの命、預けましょう」
ジークムントは粗野で短気な一面があるのは事実である。だが飾り気がなく、戦場においては常に鮮やかに勝利を収めてみせる。それは最早天才的な程である。その軍事的才能にカリスマを見出されているのである。彼は部下達からそのカリスマ性を慕われているのである。
「わかった」
ジークムントは自身のそれを知ってはいない。だがここは頷いた。
「じゃあ御前達の命、預かるぜ」
「はい」
彼等はまた頷いた。
「この命、帝国との戦いの為」
「たった今より提督にお預け致します」
「よし、じゃああらためて出発だ」
彼は指示を下した。
「全軍このまままずはブレーメンに向かうぞ」
「はっ」
「まずはその近辺を取り戻す。そのうえで帝国を誘き出すぞ」
彼は既にその頭の中で戦略を描いていた。そして攻撃に出るつもりであった。彼の用兵に防衛はあまりない。攻めて倒す、それこそが彼の用兵であった。
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