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リング

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170部分:ラグナロクの光輝その二十四


ラグナロクの光輝その二十四

 七人いた。七人の侍従達はそれぞれの戦士達の前にグラスを置く。そしてそこに紅のワインを注ぎ込むのであった。
 紅の液が部屋を紅い光で染め上げる。それはまるで勝利の赤い光の様であった。
「それでは皆さん」
 パルジファルが六人に声をかける。
「宜しいですね」
「ああ」
「最初の決戦に向けて」
「そして鍵を手に入れる為に」
「今戦場へ」
 七人は一斉に杯を手に取った。そしてそれぞれの手でその杯を高々と掲げる。その光がさらに部屋を照らしだした。まるで勝利の光が七人に降り注いでいるようであった。
「勝利の為に」
「栄光の為に」
 今彼等は誓い合った。その勝利と栄光を。連合軍はムスペッルスヘイムに入った。遂に彼等は敵の要地へとその足を踏み込んだのであった。
 ムスペッルスヘイム。九の恒星が漂う炎の星系。今ここに連合軍は足を踏み入れた。
 目指すスルトはまだ遠い。そしてその前には百個艦隊が立ちはだかる。
 だが彼等はあえてここに足を踏み込んだのであった。勝利を収める為に。五十個を越える連合軍の艦隊はその九つの恒星の間を進んでいた。
「敵の動きは?」
 パルジファルは直属の部下達に問う。
「既に我々の動きを掴んでいるものと思われます」
 主席参謀であるグルネマンツが答えた。
「第五恒星付近で今集結しています」
「そうですか」
 パルジファルはそれを聞いてその兜の奥にある目を光らせた。
「予想通りですね」
「ですがどう為されますか?」
 グルネマンツは彼に問うてきた。
「今から第五恒星に向かっても集結途中の軍を叩くことは出来ません。この星系の複雑な磁場によって思うように進めない以上それは期待できないかと」
「それは承知のうえです」
 パルジファルはそれに言葉を返した。
「そのうえであえてここに来たのですから。私達は」
「私達は」
「そう、私達です」
 彼はその言葉を繰り返す。
「集結を止められないのならば構いません」
 あえてそれを見過ごすと言ってのけた。
「そこにいる敵艦隊は。どれだけですか」
「九十個です」
 グルネマンツは答えた。
「九十個ですか」
「はい。残る十個がスルト近辺に残っている模様です」
「スルトにですか」
「おそらくはニーベルングの護衛及び予備戦力だと思われます」
「成程」
 これはパルジファルの予想とは少し離れていた。彼は全戦力で決戦を挑むものと予想していたのだ。だがこれはかえって好都合であった。
「その九十個艦隊でこちらを迎え撃つつもりのようです」
「ではこちらに向かって来るのですね」
「おそらくは」
「わかりました。それでは」
 彼は全軍に指示を下した。
「まずはここに留まります」
「ここにですか」
「そうです、全軍ここで待機」
 彼は命じた。
「帝国軍の集結を待ちます。そして彼等がこちらに来たならば次の動きに入ります。宜しいですね」
「わかりました」
 グルネマンツはそこに彼の考えを見ていた。ここはそれを信じることにしたのだ。
「護りを固めておくように」
「はっ」
 第一恒星と第二恒星の間。丁度磁気のない場所において彼等は布陣していた。その周りは磁気が荒れ狂っている。その嵐の目の中で彼等は帝国軍を待ち受けたのであった。
 
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