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169部分:ラグナロクの光輝その二十三
ラグナロクの光輝その二十三
「そしてこここそが我々の目指すべき先」
「そこが」
「そうです。ですが今ムスペッルスヘイムには帝国軍の主力が展開しています」
「ケルンやジュッセルドルフのよりもだな」
「その数百個艦隊」
「百個」
一同その言葉に思わず息を呑んだ。
「百個艦隊が展開しているだと」
「数にして我が軍の二倍。それが帝国軍の主力です」
「ううむ」
「予想はしていたが」
六人もその数を聞いて深刻な顔になった。
「しかも地の利は彼等にあるな」
ジークフリートが手を組んで言った。
「その大軍を運用出来るだけの地の利が」
「ムスペッルスヘイムは帝国の要地の一つですから」
パルジファルもそれに頷く。
「少なくとも我々よりは知っているのは間違いないです」
「この一目見ただけでわかる複雑な星系をか」
ヴァルターは九つの恒星を見上げていた。
「知っているというのだな」
「彼等にとっては遊び場でしょう」
「その遊び場で大軍を相手にする」
トリスタンがポツリと述べた。何時になく深刻な声の色であった。
「尋常ならざるものだ」
「まさに死地だな」
そしてタンホイザーも。
「迷路の中で待ち構える怪物達を相手にする」
「その怪物は何処から来るかさえわからない」
ローエングリンがそれに応えた。
「しかもその数は我等より上ときては。お手上げといったところだな」
「しかし行かなくちゃならねえだろ」
五人の言葉はジークムントの言葉によって打ち消された。
「帝国に勝つ為にはよ。その死地にも」
「提督の仰る通りです」
その言葉こそパルジファルが待っていたものであった。
「我々は行かなければなりません。そして勝たなければならないのです」
「ならない、か」
ヴァルターがそれを聞いて呟いた。
「そうです。今勝たなければ」
「では総帥」
ローエングリンの言葉に続いて六人がパルジファルに顔を向けた。
「その為の策は」
タンホイザーが問う。
「ないとは思えないが」
そしてジークフリートも。
「それは。どうなのだ」
「あります」
トリスタンの言葉が出たところでパルジファルは述べた。
「そう言ってくれると思ったぜ」
ジークムントはその言葉を聞いてニヤリと笑った。
「では早速話してもらうか」
「その策を」
「はい」
パルジファルはそれを受けて話しはじめる。六人はその話から目を逸らすことはなく、全てが終わった時には目の色は大きく変わっていた。
「成程な」
「それなら或いは」
彼等の心の中に勝利が見えてきていた。それはかなり大きかった。
「勝てます」
パルジファルの声は強いものであった。
「何があろうとも」
「よし」
「では迷うことはないな」
六人は席を立った。パルジファルもそれに続く。
パルジファルが自分の席の側のボタンを押す。するとすぐにワインとグラスを持った侍従がやって来た。
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