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奇麗な爪

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第二章

「本当にね、伸ばしていくだけでも」
「駄目っていうの」
「それは出来ないの」
「どうしても」
「ええ。本当にそんなことをしても」
 頭の上にクエスチョンマークを出さんばかりの顔であった、その顔で友人達に対してさらに言うのだった。
「怪我しないか。マニキュアが乾くまでの間何かあったら」
「心配になるの」
「どうしても」
「そうなるの」
「ええ」 
 その通りだというのだ。
「私はね。けれど爪も」
「爪?」
「その爪が?」
「ええ、爪が奇麗だとね」
 ここで友美は自分の爪を見た、そのうえでの言葉だった。
「やっぱりいいのかしら」
「ああ、それはね」
「ネイルアートってあるしね」
「爪にペインティングする人いるから」
「マニキュアより遥かに凄くてね」
「伸ばしもして」
「そうよね、そんなにいいのかしら」
 友美はまた首を傾げさせて言った。
「爪が奇麗だと」
「そうかもね、ただね」
「そうよね」
 友人達は友美の今の口調からあることに気付いた、それで彼女に言った。
「友美ちゃん自分爪が汚いみたい」
「そんな風に言ってるけれど」
「そんなに汚い?」
「友美ちゃんの爪って」
「友美ちゃん自身が言う様な」
「汚い?」
「あっ、別に」
 友美は友人達の今の言葉に驚いて返した。
「そんなこと言ってないわよ」
「そう?だったらいいけれど」
「別にそう思ってないならね」
「それならね」
「いいけれど」
「いや、ネイルアートっていうから」 
 アート、つまり芸術と言われるからだというのだ。
「そう言っただけで」
「ありのままでもいいでしょ」
「そうそう、アートをしてもね」
「短くしていてもいいし」
「何も塗らなくてもね」
「そうしてもいいでしょ」
 友人達は口々に言う、そして。
 友美にだ、友人達はこうも言った。
「ちょっと手を見せて」
「友美ちゃんの手をね」
「そうして」
「ええ、それじゃあ」
 友美は友人達に素直に応えてそうしてだった。
 自分の両手を差し出して見せた、友人達もその手を見てだった。そのうえでその手の持ち主に言った。
「奇麗じゃない」
「ピンク色でね」
「付け根の三日月のところもはっきりした白で」
「ピンクと白の対比がしっかりしてて」
「奇麗な爪じゃない」
「ちゃんと切られてるから割れたりヒビも入ってないし」
 そうしたこともなくてというのだ。
「いい爪じゃない」
「健康美があるわよ」
 アートはないがというのだ。
「まあ手全体を見ればさかむけとかあって」
「結構そこが気になるけれどね」
「爪自体は奇麗よ」
「先の白い部分もないし」
 これは丁寧に切られてるからだ。 
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