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奇麗な爪

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第三章

「いい爪じゃない」
「何も問題なし」
「いい爪よ」
「それも十本共ね」
「そうなの。それじゃあ」
 友美は友人達のその言葉を受けて言った。
「この爪はこのままでいいのね」
「全然いいわよ」
「こんないい爪他にないから」
「だからね」
「そのまま短いままでいいわよ」
「友美ちゃんはね」
「そうね、それじゃあね」
 友美も友人達の言葉に励まされ確かな顔で頷いた、
「私このままでいくわね」
「ええ、それがいいわ」
「友美ちゃんも切りたくないっていうし」
「それならね」
「このままでいくといいわ」
「そうよね、あと切り方だけれど」
 友美はこれの話もした。
「皆どうして切ってるの?爪は」
「いや、それは爪切りでしょ」
「爪切りはその為のものだし」
「普通に爪切りで切ってるでしょ」
「違うの?」
「私足の指は爪切りで切ってるけれど」
 それでもと言う友美だった。
「手は削ってるの」
「爪切りにあるヤスリの部分で」
「そうしてるの」
「切るんじゃなくて削ってるの」
「そうしてるの」
「そうなの。ちょっと先が白くなると」 
 つまり伸びればというのだ。
「その時点でね」
「削ってなの」
「そうしてるの」
「いつも」
「手の指は」
「ええ。けれど皆切ってるのね」
 爪切りでとだ、友美は言った。
「そうしてるのね」
「ううん、それ自体がアートじゃ」
「爪をいつも削って短くしてるって」
「普通爪切りで切って終わりなのに」
「そこをそうしてるってね」
「手間がかかるのに」
「友美ちゃんそれ凄いわよ」
 友美に口々に言うのだった。
「それをしてるなんて」
「ちょっと伸びたら削るとか」
「何か友美ちゃんの爪の秘密見たわ」
「ヒビとか欠けてるところがないことが」
「本当にね」
「そうした努力の賜物ってことね」
「そうなるかしら」
「伸ばすんじゃなくて削る」
 それがというのだ。
「本当にね」
「それは滅多にね」
「出来ることじゃないから」
「そうかしら」
 友美本人はこう言った。
「私本当にね」
「ちょっと伸びてたなのね」
「削らずにはいられない」
「性分としてそうなの」
「だから別に凄いとは思わないわ」
 このことはというのだ、こう言ってだった。
 友美は自分の爪を見た、今見るとよく整い奇麗なものだった。それでこれからもこうした爪を維持しようと思ったのだった。


奇麗な爪   完


                 2018・4・22 
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