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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第十話



――武器である木刀を手に走る僕。標的はケージに群がる魔物『サンドファング』の一体。


「―――魔・神・剣ッ!」


ケージから意識を此方に向けるために放つ斬撃。それは見事にサンドファングに直撃し、此方を睨んでくる。


『キシャァアァアアッ!』


「っ……双牙ァッ!!」


奇声を上げながら、トカゲ特有な走り方で接近してくるサンドファングに、再び斬撃を飛ばす。
うん、正直キモかった。

二度の斬撃を受けたのもあってか、サンドファングの動きが止まる。
それを確認したと同時に僕は走り出し、サンドファングに接近する。


「ハァアァァァッ…双・牙・斬ッ!!」


怯んでいるサンドファングに対し、攻撃の手を休める事無く斬り下げから斬り上げの攻撃を与える。

サンドファングは石化とか色々厄介なので、此方としても手早く倒したいからだ。
此方の石化は本当に質が悪い。ゲームでは石化なんて簡単な戦闘異常かと考えていたのに、此方の石化は……あまり語りたくない。少なくとも、味方を石化させるのも自分が石化するのも嫌だというのは確実である。



「――これで……飛・天・翔・駆ッ!!」


双牙斬を受けて上昇したサンドファングに対し、自分も飛び、トドメとばかりにサンドファングに向け急降下し、木刀を打ち込む。




度重なる連撃にサンドファングも効いたのか、僕が着地したと同時に、サンドファングは奇声だけを残して消滅した。


「――…ハァ……他の皆は…」


息を整え、他の皆に視線を移すと、皆もちょうど今倒したところであった。


「――皆、大丈夫みたいだね。……問題は…」


サンドファングの群れを退けケージの前に集まり、クレス師匠がメンバーを確認してそう言うと、ケージへと視線を向けて手を伸ばした。




「契約はどうすんのよ…?」


「…僕達の依頼は『魔物の搬送』だ。僕達の受けたのは『人間を捨てる』事じゃない」

イリアの質問にクレス師匠はそうはっきりと返すと、ケージの扉の鍵を開く。
僕達はそれを静かに見守る。メリアも少し不安なのか、不意に服の袖を引かれたので、そっと手だけを動かして頭を撫でた。



終始無言のままクレス師匠がケージを開く――と、同時に中から現れた二体のモノに思わず僕達は身構えてしまう。

ケージの中から現れたモノは……姿形は確かに人型であるが…それはまるで船で見た変化を起こしたコクヨウ玉虫のように…岩のような独特な皮膚に覆われた『ナニカ』であったからだ。
だが、その『ナニカ』が着ている服に僕は見覚えがあった。


「……まさか……本当に、ジョアンさん……ですか!?」

「は、はいぃ…。その声は…衛司君…ですかっ!?」


聞き返してきたその声はやはり、ジョアンさんのものであった。じゃあもう一人は…ジョアンさんが言っていたミゲルさん、か…?






「…どうしてそんな姿に……」


「そ、それが…私達にもわからないのです。
あの…赤い煙に触れてから、病は治って村で過ごしていたんですが……なぜかはわかりませんが、村の中にいる事がひどく居心地悪く感じる様になって…いえ、村…だけじゃなく、この世に生きている事自体に…。自分で、自分の存在が分からなくなって……自分が今まで知っている自分でない気がして……」

どこか苦しそうに、淡々と説明していくジョアンさん。『自分が自分でない』……?一体……。


「――そうして、次に意識がハッキリした時には檻の中でした。私は、この異形の姿になって暴れていたらしいのです」

「――俺も…ジョアンと同じです。赤い煙に触れて、病気が治った後…ジョアンと同じ様に体が変化を始めて…。もう、村には置いておけないと…。でも、確かに…俺の身体はもう人とは違う様だ…人の中じゃ、生きていけないんだろうよ。
――ああ、これから俺達はどうすりゃいい!?ここに残って死ぬのを待つしかねぇのか…!?」


淡々と説明した後、苦しそうに、どこか悔しそうに言葉を出すジョアンさんとミゲルさん。願いを叶える赤い煙。それを受けた結果とはいえ……いくらなんでもこんなのって……っ!!

自分の何も出来ない悔しさに思わず舌打ちをしてしまう。

――その時……。



「……………」


「……メリア…?」


隣で黙っていたメリアが歩き出し、二人の前で止まる。僕達が不思議気にメリアを見ていると…それは起こった。




「――ぇ……っ!?」


「「!?」」


突如、メリアの両手が光り出し、そのまま辺り一面が眩い光に包まれ、僕達は思わず目を塞いでしまう。
そして次に目を開くと……ジョアンさんとミゲルさんの姿は…先程の異形ではなく、元の人の身体に戻っていた。


「これは……っ!?」






「人の…、元の姿に!!ああ、あなた方には助けられてばかりです!ありがとうございます!!」


「凄い……メリア、これは…君がやったのかっ!?」


その場の全員が驚いた様子でメリアを見る。メリア自身はどこか疲れたのか…フラフラと此方に向き直る。……って、危なっ!


「……わからな……い…っ」


「メリアっ!!」


言い切り、崩れかけるメリアに駆け寄り、倒れる前になんとか支えた。
……眠ってるみたいだ。


「…よく分かんないわね。無意識なのか…コイツの力なのか」


「少なくとも…今は一旦船に戻ろう。メリアを休ませないと……ジョアンさん達も、僕達の船に来てください。ここに留まるのは危険ですから」


「は、はい…」


ジョアンさん達が頷いたのを見て、メリアを背中に背負い、僕達は船へと戻る事にした。


それにしても…メリアのあの力……多分、『ディセンダー』の力だろう。
じゃあやっぱり……今回の世界樹の敵は…あの赤い煙って事……なのかな。






―――――――――――



その後、なんとか船まで戻り、今回の事を説明した。メリアは医務室に直ぐ様休ませに行って、アニーがいうにはやはり眠っているだけらしく、身体に異常はなく、少ししたら直ぐに起きる程、らしい。

そして今回の事…コクヨウ玉虫の変化とジョアンさん達の変化。この二つによって、赤い煙が『生物変化の原因』であると確定した。肝心の人の治癒や生物変化を起こす過程は分からないままだが。



次にジョアンさんとミゲルさんの事だけど…アニーの診察の結果、二人は完全に元の人間に戻ったようだ。ただ、しばらくは元の村には戻れないので、アンジュが所属していたらしい教会で保護するらしい。


これで一応一件落着……とは言いたいけど……。


「――やっぱり……僕は気に入らない」


そう。僕は今回の事は正直気に入らなかった。
魔物化したとはいえ、同じ村の人間を捨てた事。それを…何も出来ないとはいえ捨てる此方側には何も伝えずにそうさせようとしたモラード村の村長の判断。

船に戻った当初、僕は直ぐにでもモラード村に向かって、あの村長に一言言いたかったけど…アンジュやミントに止められて、結局行くことはなかった。


自分が今いる世界は確かに…最近この世界に馴染みすぎて薄れ掛けてたけど…ゲームの世界なんだ。
元いた世界では絶対に起こる事のない今回のシナリオ。だからこそ…今、実体験したからこそ…今回の事に僕はイライラしてるんだろう。


恐らく……今回の敵であろう『赤い煙』。
それに対して…ただ一人の人間として…、この世界で戦うものとして……改めて、戦う事を心に決めた。




 
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