テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―
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第十一話
「ハァアァァァッ!!」
「く………っ!」
――目前で横凪に抜かれる剣閃。それを何とか避け、体勢を整えながら納刀したように持った木刀を素早く抜刀し、攻撃しようとするが…
「まだ抜刀仕切るのが遅い!裂震虎砲ッ!!」
「くぅっ!?ぐぁあぁぁッ!」
見切られたと分かった瞬間、振るった筈の木刀が弾かれ、そのまま、獅子のような一撃が僕の腹部を抉り吹き飛び、僕はそのまま、下へと打ち落とされた。
―――――――――――
「――すまない…その、やりすぎた……」
「……いや、うん……僕が悪かったんです…はい」
甲板に横たわっている僕に、申し訳なそうな表情で言ってきた彼、『アスベル・ラント』に、僕は倒れたまま苦笑いでそう返した。
アスベルは皆さん知っての通り、『グレイセス』の主人公であり、騎士団に所属しているあの抜刀術使いの彼である。
此方のアスベルもガルバンゾ国の騎士団に所属していて、ガルバンゾ国の王女であるエステルを迎えに来た……みたいだったんだけど、エステルはそれを拒否。それで、結局エステル達と同じく暫く、このギルドを手伝ってくれるようになった。
それで、今どうしてこうなっているかと言うと……僕がアスベルに抜刀術を教わりたい、と言ったからだ。
何でか、って言うと…やっぱり僕はまだまだ弱いし、前の赤い煙の件もあり、それこそ少しでも戦える力が欲しいからだ。
前の世界でも抜刀術は少しかじってはいたけど…やっぱりそう簡単に出来る訳もなく、ちょうど抜刀術使いでもあるアスベルが加入したから、直々に彼に教えてもらおうと考えた。
それに……うん、正直言うと…アスベルの抜刀術には男子特有の憧れがあるからだ。
でもまぁ……結局はこの結果なんですがね。
「――…それにしても……衛司は凄いな」
「へ……?」
そんな事を考えていると、不意に言われた言葉に思わずそんな声を出してアスベルを見る。僕が凄い……?
「いや、そんな…僕は凄くなんか全然ないよ。さっきもズタボロだったし……」
「いや、君は十分凄いよ。なんだかんだありながらも、君は少しずつ、確実に俺の教えた通りに動けていってる。聞いてたとおり、やっぱり君は凄い実力の持ち主だよ」
「そう……かな?実感ないけど…そう言われると嬉しいや」
アスベルのべた褒めに思わず恥ずかしくなり頬をかいてしまう。僕が凄い…か…。本当、実感ないなー。
「さて…それじゃ、まだ続けるかい?」
「よし…宜しくお願いしますっ!」
アスベルの問いに僕は頷くと、再び木刀を持ち立ち上がって構えると、再び鍛錬を開始した。
―――――――――――――
「――赤い煙は、最近じゃ色々な形に見える、って言ってたよね?
それって…もしかして、実態を持とうとしてるのかな?」
――アスベルとの鍛錬から数日…クラトス師匠との修行を終え、ちょうど食堂にてクラトス師匠と一緒に昼食を食べていると、その場にいたファラがそんな話を出した。
確かにファラの言うとおり、最近噂では様々な形をした赤い煙を見るようになったらしいけど…。
実態を持とうとしてる、か……まぁ、結局正体不明のままだからなぁ…。
「精霊なら、正体を知っていたりするかな」
「精霊かぁ…あってみたいなぁ」
ファラと同じく食堂にいたコハクの言葉に、僕は思わずそんな声を出した。
いや、前作でも精霊でセルシウスが出てたし、テイルズファンならば出来ればみたいもんだもん。
「でも、本当にいるかはわからないよ…。昔はいたって聞いた事あるけど、どこまで本当かわからないよね」
「精霊と交流を持つ、『ミブナの里』という場所がある」
コハクのそんな言葉に、先程まで静かだったクラトス師匠が不意にそう言葉を出した。
「…ミブナの里……師匠、それって…?」
「行く意志があるのなら、案内する。依頼として届けておこう。まぁ…衛司はちょうど先程の鍛錬の成果もみたいから出来る限りついてこい」
「ぅ……了解致しました」
それだけ言うとクラトス師匠はホールの方に歩いていった。
それにしても……『ミブナの里』かぁ…。
「――ミブナの里…、聞いた事があります。あそこは妙な昔話があるんです」
不意に、厨房にいたロックスさんが此方に来てそう言葉を出した。
「妙な昔話……?」
「えぇ、人がお化けになったり、動物になったりする昔話です。他にも、悪い事をしてカエルにされた男とか…」
「うわぁ……なんか…怖いな」
「ロックスも元々ヒトだったりしてね!」
ロックスさんの説明に思わず苦笑いしていると、唐突にファラが笑ってそう言った。
「えーぇぇぇ…ぇっと。何でしょうか、ヤブカラボーに…」
「ふふ、冗談だよ!ただ、ロックスってすごくヒトみたいだから。私達より頭がいいし、色んな事出来るし。何だかヒトとの違いを感じないもの」
「そ、そうですか。それは…、どうも……」
ファラの言葉を聞いて、どこか焦った様子から少し落ち着いた様子を見せるロックスさん。
……?どうしたんだろ…?
その後も少しロックスさん達と話をしてホールに向かう事にした。
――――――――――――
「ん……?」
ホールに入ると、足下に一枚の何かが書かれた紙が落ちていた。誰かの捨て忘れかな…?
手に取って見ると……案の定、文字が分かりませんでした。
うん、そういや僕、まだ完全にこの世界の文字覚えてなかったね。
……自分で言ってて泣きたくなった。
取り敢えず、自分が分かる範囲で読んでみる。
「――えっと……『終末…近し』?…『今こそ…ディセンダーが降臨する時…ディセンダーをこの世に迎え…腐敗した世界を共に打ち砕き…輝ける未来を再建しよう』……『世界再建の要…、暁の従者』?」
読んでみて改めて小さく首を傾げる。ディセンダーを崇拝する団体……前作でいう『ナディ』みたいな存在だろうか…?
だとすると……危ない、かな?
こういうの場合…もし本当にディセンダーが居ると分かればどんな過激派な行動を取るか分からない。それこそ、前作で『マナ』を崇拝し過ぎ、負の感情に落ちた『ナディ』のように……。
「……しばらくはメリアと一緒に居るべき、かな…」
「――あら、それはメリアへの告白かしら?」
「―――ブっ!?」
突如、背後から聞こえた声に驚き振り向くと、そこにはまさに『ニヤニヤ』という擬音が似合いそうな笑みを浮かべたアンジュが居た。
「ぅ……いや、別に告白とかそんなんじゃないから……」
「あら、そうかしら?怪しいわねぇ……その紙は…?」
「ん……ただのゴミ」
僕の言葉に、依然と笑みを浮かべるアンジュは一度僕の手にしている紙に視線を向けた後、再度僕を見てそう聞いてきたので紙を丸めてそう答えた。
少なくとも…今はあまり気にする事はないだろうし。まぁ、一応警戒すべきだろうけど。
「――…そう言えばアンジュ。クラトス師匠から話、聞いてる?」
「えぇ、聞いてる。それにしても驚いたわ…精霊と関わりのある里が実際にあったなんて…。教会でも、世界樹と共に精霊を奉じるけど、私達の様な教会関係者でも精霊と会った人なんていなかったから…」
「そっか…。もし本当に精霊がいるなら…赤い煙についてまた一歩近付けるかな」
「そうね。さぁ、肝心のミブナの里へ行く方法なのだけれど、ブラウニー坑道を通ることになるらしいの」
「ブラウニー坑道を……?」
「えぇ。何でもこの前の奥地を更に深く行くとか…それじゃ、行く人数が揃うまで待っててね」
アンジュのその言葉に頷いた後、僕は準備の為に自室に向かった。
ブラウニー坑道の更に奥地かぁ…なんか嫌な予感しかしないなぁ…。
―――――――――――
そして現在、ブラウニー坑道の三層目を魔物を倒しながら歩いている。
結局パーティーはクラトス師匠に僕、ハロルドにメリアとなった。…最近思うけど、僕よくメリアと結構一緒に依頼行きまくって本来の重要なイベントがなんなのか分かんなくなってきた。
いや、元から知らないけど。
それにしても……
「メリア…何でハロルド、あんなにノリノリなんだろ?」
「……さぁ……?」
僕とメリアは、ヤケにテンション高い(いや、まぁいつもだけど)ハロルドを見ながらそんな話をしていた。
クラトス師匠の話では確か…ミブナの里は忍者の住む里らしい。
忍者というと……やっぱり『シンフォニア』や『ファンタジア』のあの人かなぁ…。
多分、ハロルドはその忍者に興味津々なんだろう。
先程から絡まれてるクラトス師匠の顔がやけに疲れてる表情をしてる。
ただミブナの里で気掛かりなのは……ウリズン帝国がミブナの里の星晶《ホスチア》を狙っているらしい。
その事もあってこういう人知らない奥地の方を通らないといけないらしいけど……やっぱり心配だな。
―――――――――――
「――あら…?」
四層目に入り大分奥まで来た辺りで、不意にハロルドが止まり何かを拾い上げ見ていた。
「何を読んでいる?それは何だ?」
「そこに落ちてた紙ー。新興宗教の勧誘チラシよ。こんな人のいない所まで布教だなんて、ご苦労な事よね~」
そう言って手にした紙を見せるハロルド。これは……確か船で拾った『暁の従者』の…?
「暁の従者…。ディセンダーの出現を待つ集団か」
「世界の危機が訪れた時に現れるディセンダー、ね~。まあ、危機の感じ方って人それぞれだろうけど、今が危機の最たる時なワケかしら?」
「どう…だろうね。世界の住人って……わざわざ人だけって訳じゃ無いけどね」
そう言っていると、隣を歩くメリアが少し俯く。やっぱりまだ分かってはないけど…一応ディセンダー…なんだし、不安なのかな?
そんなメリアの頭をそっと撫でていると―――
「わー!!待てっ!こらーーーっ!!」
多分、女性の声だろうか、そんな声が辺りに響いた。
「なぁに、今の声?」
「あの声は…!何か、異様な気配が流れてくる。先を急ぐぞ!」
そう言って走り出すクラトス師匠と後を追い走る僕達。
異様な気配って……一体……?
―――――――――――
「――先程の気配はコイツか」
声のした奥地につくと、そこには大きな台座に乗った石像の魔物『ストーンシーサー』が此方を睨み付けていた。
「……戦う…の……?」
「恐らく、門番のつもりだろう。こいつを倒さねば、ミブナの里へは行けそうにないだろうからな」
「やっぱり~!これが忍びの技術なのね♪面白そうだから、相手しちゃうわよ!」
「面白そうって……まぁ、取り敢えず…要注意しながら倒さないとねっ!!」
―――僕達が武器を構えたと同時に、ストーンシーサーは此方に接近し、戦闘は始まった。
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