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真田十勇士

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巻ノ百三十三 堀埋めその十一

「しかし右大臣様を護るお気持ちは本物じゃ」
「だからですな」
「このことは必ず認めて頂ける」
「では後藤殿もですか」
「その為に戦い生きるか」
「武士としてそうされるのですか」
「そうじゃ、そうしようか」
 こう幸村に言うのだった。
「わしも。貴殿と共に」
「そうして頂けますか」
「何があっても生きてな」 
 そうしてというのだ。
「そうしようか」
「後藤殿が共に戦い右大臣様をお護りして頂けるなら」
 幸村は後藤の言葉、心のそれを聞いて切実な声で応えた。
「それがしも有り難い、千人力です」
「そう言って頂けますか」
「後藤殿は天下の豪傑、一騎当千の方なので」
 だからこそというのだ。
「それがしとしてもです」
「有り難いと言って頂けるか」
「はい、とても」 
 後藤に微笑んで応えた幸村だった。
「有り難いです、確かに大坂城は完全な裸城になりましたが」
「それでもじゃな」
「負けは確実とそれがしも思いますが」
 戦になればだ、もう幸村もそう見ていた。むしろ知恵者である彼にはよくわかることであった。
「まだ何とかしてみます」
「戦になれば」
「右大臣様をお護りしましょうぞ」
「我等の力でじゃな」
「人は城、人は堀、人は石垣ともいいます」
 信玄の言葉も出した幸村だった。
「負けることは避けられずとも」
「右大臣様だけはか」
「何とかなるやも知れませぬ」
「それではな」
「力を合わせそのうえで」
「右大臣様をお護りするか」
「そうしましょうぞ」
「こうなってしまって逃げる者がどんどん出て来た」
 大坂城が完全に裸城になりもう戦っても負けると見てだ、大坂方にいた浪人達も豊臣家を見捨てたというか茶々をあまりにも愚かだ、この様な大将の下で戦っても死ぬだけだと思い去っていっているのである。
「それも当然じゃしな」
「裸城を見れば」
「それも仕方ない、しかしな」
「それでもですな」
「わしは最後まで大坂で戦うと決めたしな」
「今の主である右大臣様をですな」
「お護りすることも決めた」
 今の幸村との話でだ。
「ならばな」
「去らずにですな」
「戦う、最後までな」
「そうしてですな」
「生きることも考えだした」
 幸村との今の話でそうなってきたというのだ。
「真田殿と共にとな」
「では」
「うむ、わしも真田殿と志を同じにするか」
「そうして頂けますか」
「これまで死に場所を求めておった」
「戦の場で、ですな」
「見事散ろうとな、武士らしく」
 武士は戦場で生き戦場で死ぬもの、この考えからだったのだ。
「そう考えておった、しかしな」
「そのお考えが変わり」
「貴殿と共に戦い」
「最後の最後まで、ですか」
「生きてみるか、武士として」
「それでは」
「次戦になればその時はな」 
 大坂は間違いなく敗れる、しかしというのだ。 
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