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真田十勇士

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巻ノ百三十三 堀埋めその十二

「果敢に戦いそしてじゃ」
「果敢に生きられますか」
「そうしてみようか、では今はな」
「はい、講和となりましたし」
 次の戦があることは充分考えているが確かに講和はなった、とりあえずは政の話となるというのである。
「今は休みましょうぞ」
「そうじゃな、そして残った兵達をな」
「まとめそうして」
「次の戦のことを考えようぞ」
 こう話してだ、幸村達はとりあえずは講和がなったことを見届けた。すると家康は大坂城が完全に裸城となったことを駿府で聞いてこう言った。
「さて、後はじゃ」
「はい、大坂の浪人衆ですな」
「これでかなり出るな」
「もう大坂城はあてになりませんからな」
 崇伝が言ってきた、戦には出ていないが話を聞いてもう知っているのだ。
「それでは豊臣方で戦おうとも」
「うって出るしかない」
「そうなれば数がある幕府が有利」
「わしは野戦こそ得意じゃしな」
 家康は笑って言った、彼の外での戦上手は信長の盟友だった頃から有名でありそれが目立ってかえって城攻めが不得手とさえ言われていたのだ。
「だからな」
「ここはですな」
「浪人達もそれを知っておってな」
「今やです」
 服部が家康に言ってきた。
「大坂からは浪人達が日に日にです」
「逃げ出しておるな」
「おそらく最後は六万を切るかと」
「十万から相当に減るのう」
「そこまで減るかと」
「ならばじゃ、残り五万程もじゃ」
 それだけの浪人衆をというのだ。
「幕府も何とか出るのを助けるとな」
「そう伝えてですな」
「出させるのじゃ、これで兵はなくなりじゃ」
「豊臣家はですな」
「大坂城も裸城となった、だからな」
「出るしかなくなりますな」
「城も人もなくてはじゃ」
 それこそというのだ。
「どうしようもなかろう」
「はい、確かに」
「そうさせてな」
 残るであろう五万程の浪人衆も出せさてというのだ。
「大坂から出てもらう」
「そうしてもらいますか」
「右大臣殿は暫し蟄居してもらい」
「そうしてですか」
「後に許してな」
 そのうえでというのだ。
「上総か下総、若しくはこの二国でじゃ」
「国持大名として」
「よしとするか、大和一国も考えておるが」
「大和は百万石ですぞ」
 柳生が言ってきた。
「六十万石から四十万石もの加増となり」
「戦を起こした家にそれはな」
「よくありませぬ、ですから」
「精々か」
「上総か下総の二国かと」
「その国持大名でじゃな」
「よいかと」
 大坂を出た秀頼の立場はというのだ。
「官位はそのまま、やがて上がるでしょうが」
「まあそれはおいおいじゃな」
「後は千様との間にお子が産まれれば」
「わしの曾孫となる」
 家康は笑って言った。
「ならばな」
「ご一門としてですな」
「松平姓を与えてな」
「完全に取り込みますか」
「もう既に子息がおるが」
 秀頼の子国松のことである。 
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